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蓮の花―ある物書きの自由文集―

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2017/04~2017/09にかけて書き綴った詩のような。散文のような。 ライターとしてではない。一個人、”私”として書こう。 誰の目も気にしない。私は私の思ったままを、感じ…
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#幸せ

蓮の花

蓮の花

目立つところに咲くことがそんなに立派なのか。

多くの視線が集まるところで花開かせることが最上なのか。

暖かな陽の光も届かない場所で生まれ、そこで育つしか道がないことは不幸なのか。

幸せなんて、漠然とした概念の一つだろう。

自分よりも上の世界ばかりを見ていたら首が痛くなる。

自分よりも下の世界ばかりを探していても首が痛くなる。

だったら、どうしたい?

マスメディアが誇張する一部の幸せを

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幽霊になった僕。幽霊が見えるあなた。

幽霊になった僕。幽霊が見えるあなた。

否定されることも多かった。見下されることも多かった。

僕の心も、生きた道程も、何も知らない。そんな人たちから。

馬鹿にされることも珍しくない。掌を返されることも珍しくない。

僕が何をしたというの。ただ目立たないよう、馴染めるようにしていただけなのに。

嫌われ、嘲笑われ、罵られ。

最初は理解してもらおうともした。

それでも終わらないから、今度は存在を消すようにした。

でも、足らない。変

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人間なんて〇〇だから―Side S―

人間なんて〇〇だから―Side S―

人間なんて、所詮は別々の生き物で。

同じような境遇、同じような経験、同じような立場

共通項を持っていたって、同じ人間にはならない。

誰もが違う考え方を持っていて、

誰もが違うことに魅かれ、

誰もが違うことに怒りや悲しみを覚えて。

駅で電車を持つサラリーマン。

仲間と笑い合いながら登校する学生達。

重そうな買い物袋を下げて歩く主婦。

神社で静かに手を合わせる老人。

誰もが違う人間

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金木犀

金木犀

金木犀は昼の庭の香り。

幼い私を一番愛してくれた人と並んで過ごした庭の香り。

いつだって、あの人は私を愛してくれた。

子どもには、その愛の大きさを理解できなかった。

それでも、あの人の隣が心地よかった。

どんな悲しさに襲われても、悪夢から目覚めて泣いていても、

あの人は私の頭を大きな掌で撫でてくれた。

皺だらけの手の平。目を細めるあの人の優しい笑顔。

そんなあの人が大好きだった。

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