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noteで知り合った大学生と自宅で創作合宿した話

noteで知り合った人と、自宅で創作合宿をしたら、どうなると思いますか?
よく知らない者同士、年代も作風も異なる三人が千葉で過ごした二泊三日。
創作合宿が終わって一週間、私に生まれた小さな変化とは?
綴っていきます。

築50年の我が家で住み開きをしたい

創作合宿の舞台となったのは、私の自宅。

千葉県の九十九里浜まで車で15分ほどの住宅地にあり、散歩にでかけると田園風景が広がっている。

自宅は、私が生まれ育った家で、年齢は築50年ほど。私が生まれる数年前に店舗付き住宅として建てられた。そのため、夫との二人暮らし(猫四匹もいるが)には広く、部屋が余っている。

特に事務所として使われていた1階の2部屋と2階にある4部屋は使用していない。

いつしか、住みながら、家と庭を地域に開放して、小さな図書館のようなカフェのような遊び場にできたらいいなと思っていた。

私の仕事部屋兼アトリエをミーティングルームに。本棚には図書館から借りてきた桃太郎の絵本などがずらり。
通称「インナーテラス」は、元々設計事務所として使われていた場所。数年前にリフォームし、ボロボロだった木の床を取り除いて、土間スペースに。

noteで知り合った大学生と桃太郎創作合宿をすることに

そんな時、noteで知り合った大学生、横山黎さんとオンラインで話す機会があり、「ぼくの創作合宿をやらせてもらえませんか?」と申し出を受け、思わず快諾してしまった。

横山さんは、大学生作家を名乗り、本を出版したり、本を届けるイベントを行っている。2年前に彼がnoteで行った小説「桃太郎」の共同創作を手伝ったことがきっかけで親しくなった。知り合った時は、20歳だった彼も今年大学を卒業する。

卒業論文は「桃太郎」。今チャレンジしているのは、新しい桃太郎の絵本を制作し、子どもたちに届けること。

「悪い鬼を征伐する桃太郎ではなく、鬼と桃太郎が友達になるような多様性や共生をテーマにした新しい桃太郎をつくりたい」という思いで、動き始めたところだった。さらに、その絵本は、共同創作でアイデアを募り、皆で作り上げていくのだという。共同創作の方法のひとつが、創作合宿だった。

多様性・共生をテーマにした絵本「桃太郎」をつくる

彼の今回の創作合宿の目的は、三つ。
・絵本桃太郎の物語を考えること
・創作合宿の可能性を探ること
・何となく大谷さんちを見てみたい!

彼の地元茨城から電車に揺られること、3時間半ほど・・の予定が、風速40㎞もの暴風で電車が遅れに遅れ到着したのはなんと7時間後の夜7時。先に到着していた彼の親友でnoter奴衣くるみさんと、九十九里の地元料理なめろうをつまみながら、絵本のテーマである「多様性」「共生」について、語り合った。

横山さんが壁に書いた合宿の主旨
「多様性って何だろう?」「共生って一言で言うけどさ」それぞれが考えをコピー用紙にどんどん書いていく。

相手の意見ではなく、なぜそう思ったかに注目する

年代、作風も違う三人

翌日朝から創作合宿が本格的にはじまった。

進め方は、次のとおり。

①「起承結」を横山さんが考え、②三人それぞれが「転」を考える。③それを取り入れて横山さん案をブラッシュアップし、④絵本の14シーンを大まかに横山さんが決める。⑤それに沿って3人それぞれが14シーンの物語を自由に創作する。⑥ディスカッションしたあと、⑦私と奴衣さん案から横山さん判断で良い所を取り入れ1つの物語を完成させる。

とはいえ、一筋縄ではいかない。

私は、ふたりと親子ほどの年齢の差があるし、ふたりは中学の頃からの親友で、私は今までオンラインで交流していた程度の知り合い。しかも、この三人、普段書くものは、ジャンルも作風も全然違う。

ストーリー展開にしても表現にしても食い違う所は多々ある。

煮詰まったら海に出かけた。九十九里浜は海までのふところが深い
砂には、昨日の風の跡「風紋」が残っていた

正直、途中で少し投げ出しそうになった

結局、横山さん案になるのだし・・・一生懸命やる意味あるのかな・・・。

私がいちばん引っかかっていたのは、メッセージを「そのまま書く(登場人物に言わせる)」部分だった。私は、「そのまま書くのなら、物語の必要はない」「構造として感じさせる方が良いのでは」と考えていた。

でも、⑥のディスカッションの時、ふと、「何で横山さんはこうしたいの?」とたずねた。彼は自分は基本的に、伝えたいことをシンプルに書くことが好みだと前置きした上で、「今回の絵本は、誰にでもわかりやすくメッセージが伝わるものにしたい」「絵本だけで完結しなくていいと思っている。共同創作を通じて考えてほしい」と語った。

彼の結論だけ見ていた時は、「私とは違う」と思っていたことが、パン!と切り変わった。絵本「桃太郎」の共作者ではなく、「桃太郎創作合宿」の参加者としてなら、ひとつの方向を向くことができると思った。ここから気持ちが楽になり、壁打ち相手をつとめることを楽しんでいた。

誰かが、誰もが、納得する結論を出す必要はない

最終日の夜遅くまで、私と奴衣さんの原稿を参考に自らの物語の推敲を重ねた横山さん。出来上がった物語には、私と奴衣さんが確かに含まれていた。

完成した物語すべてに納得しているわけではない。

むしろ、だれか一人が納得したり、大満足だったら、きっとほかの誰かは違うと感じるだろう。

↓八千代案
横山さん作成の起承結の「転」を書いた時

https://note.com/preview/neb9abb68d2b0?prev_access_key=8b00e5453633264a9ee5a2b1cd1e3cb2

↓横山さんプロットに沿って書いた14シーン
https://note.com/preview/nb19864f24179?prev_access_key=0fba8140e13cb92d913146fd727507fe

↓完成した物語


場を共有し、同じ釜の飯を食う

合宿が終わるにつれて、自分が大学生のころのことを思い出していた。

私は探検部に所属していて、フィールドワークのため、沖縄や高知、秋田など地域に数週間滞在したことがある。テントで自炊して寝食を共にしていると、不思議と気が合わないと思っていた部員が「気にならなくなる」ことが不思議だった。「気にならない」といっても「どうでもいい」わけではなかった。お互いの意見が変わったわけでもない。語り合ったわけでもない。それなのに、合宿が終了し、解散する頃には、別れがたいような、あたたかいつながりを感じていた。

今回の合宿で、私は最初、「皆」で「一緒」に、ひとつの物語を作るんだと思っていた。でも、終わってみて、「場」にいるだけでよかったんだと気づいた。酔いつぶれててもいいし、海を歩いてもいいし、車で眠ってたっていい。

「どうでもいい」ことは、「どう居てもいい」ことだったのかもしれないと感じたのだ。

完成した物語の奥付には、こう書かかれている。

作者
横山黎
仲間
奴衣くるみ
大谷八千代

私は絵本「桃太郎」の作者にはならなかった。
でも、三人の誰が欠けてもこの物語にはならなかった。
それこそが、桃太郎創作合宿の成果だったのだと思う。

互いに一部を含み、含まれて生きる

場を共有し、場に含まれること。

それは、お互いが少しずつスペースをあけて相手の居場所をつくることかもしれない。

最終日の朝、九十九里の日の出を見に行った。

夜明け前の浜辺を歩くふたりの背中にスマホのカメラを向ける。
私の年齢になったころ、彼らは、どんな「桃太郎」を紡ぐのだろうか。

***

合宿が終わって一週間が経つ。
相手の発言だけでなく「どうしてそう思ったか」に意識を向ける新しい自分がいる。

「成長」とは、人と関わって自分に良い変化が起こることを言うそうだ。

長々と書いてしまったが、最終日、奴衣さんが言ってくれた「ここに来て良かった」という言葉が最高にうれしかった!

私の役目はここまで。

これからたくさんの参加者を経て、絵本「桃太郎」は変化していくのだろう。

絵本「桃太郎」創作の旅の終わりに、皆で、また夜明けを見れたらいいですね。







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