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Guitar1011

Savage Gardenの2ndアルバム"Affirmation"に実は歌っていない曲が2つ残っていた。それはシングルカットされていて当時から知っているけど選択しなかったもの。
というわけで(?)今回の課題曲は"Hold me"。これはもう一つの"I knew I loved you"ほどには流れていなかったから、メロディーを覚えている程度で歌詞は残っていなかったんだけど、タイトルからのロマンスの香りで避けていた。

気温が落ちたせいかギターが低い。歌とずれていて気持ち悪いね、ごめんなさい。生音だとあんまり気にならなかったんだけど、録音だと目立つ。やっぱりその場だと音に広がりがあるし耳による補正も入るから、目立ちにくくなるのかな。機械には忖度が無い。

「抱きしめる」って色々なレベル?があるけど、"hold"はわりと強くて重い感じ。がっしり、しっかり、というか。"hug"だったら西洋圏では初対面でもすることのあるわりとカジュアルめなものだけど、"hold"は見知らぬ人にしたらまずヤバい人となるだろう。ある程度、というか基本的には親密な関係性において
成立するものだと私は認識している。だから、タイトルからは恋愛の歌だと思っていた。そしてそれは半分は当たりで半分はハズレだった。

やっぱりダレンだから。恋愛においても相手を希求する=根源的に欠乏している自分を受け止めてくれる存在の渇望だというのが鮮明に出ていた。薔薇色のウキウキのロマンスはなかった。

まず、PVが暗い。とにかく画面が暗い。雨、夜間のシーンも多いし日中のシーンですら日光も照明も抑えられていて薄暗い。そして映し出される人々の表情が暗い。一つの例外を除いて、登場人物に笑顔は無く、沈んだ顔、表情の出ない顔、険しい顔、泣き顔に溢れている。涙でがっつりマスカラが落ち黒い涙を流す女の子もいるし、あのPV、どこで撮影したんだろう?風景や民族構成がオーストラリアではない気がするんだけど、ポリコレが叫ばれるようになる今ならまだわかるけど、その20年も前に、とにかく様々なマイノリティー(アフロアメリカン、アジア人、オタク、サブカル系、レズビアン、孤独を抱える人間など)を映し出している。
これってコーカソイド側からの&ポップミュージックの世界としてはわりと異例で(特に昔は)、私は初海外がアメリカだったんだけど、向こうで即思ったのが、「差別禁止とか自由の国とか言うけど、街中では見事に人種民族ごとに人が歩いているじゃん」ということだったし、ポップってロックとかブルースとかとは違って、基本的には明るく楽しく幸せな側面を焦点化するものだから、社会性のあるもの政治的なものからは遠くなる傾向がある、それなのに、というところがダレンの視点。

彼は暗い街の風景の中で、マイノリティーの登場人物達の側に自分を入れて映し出させている。そして、映像の中ではその様々なマイノリティー達が深く抱擁を交わし合っている。勿論、ダレン本人も含めて。
当時これを見ていたらわりときつかったのではないだろうか。わりとしっかり"hold"しているので。上半身は(見える部分は)服無しだし。
ビジュアル的にも恵まれアイドル的な人気もあったはずのダレンにあそこまで露骨なシーンを撮らせるというのは、普通のポップの世界ではない。やっぱりこの曲は"Affirmation"の一翼であり、それでも半分は恋愛として読めるところもあるから、ぎりぎり一般と「ダレンの世界」を繋ぐ存在としてシングルカットされたものだったのではないだろうか。

さて、先述の「一つの例外」、それは子ども(とそのお母さん)。曲の中盤で、女の子が無邪気にダレンの脇かけていって追い抜き、少し離れたところでその子の全身をお母さんが笑顔で受け止める(抱きしめる)というシーンがある。子どもも笑顔。
ダレンはゆっくり歩いていってその母子の脇を通り過ぎるんだけど、追い抜いたところでわざわざ振り返り、二人の様子を確認した後、照れ隠しのように頭を掻き口元に手を当てている。ここは印象的で、やっぱりダレンはこういう「自分を丸ごと無条件に抱き止め受け入れてくれるような深い愛情」を強く求めていて、それは自身の特に幼少期に、母親からのそれが欠損していたからだからこそなんだと思った。本当に、曲中で笑顔はこの二人だけなんだよ。悲しい。

あと、印象的だったのが、この曲の映像中ではダレンはかなりカジュアルな服装をしていること(ジーンズにストリート系?みたいなトップス、色も水色)。それまではスーツとかジャケットとかで色も黒っぽいものが多かった。加えて髪の毛もほんのりメッシュが入っていてばきばきの黒髪ではない。
そういえば、どこにもダニエルが映っていないというのも珍しい、というか初?というか唯一??かも???

きちんと調べていないのであくまで憶測に過ぎないんだけれども、なんかもしかしたらこの映像はSavage Gardenが解散するって決まった後に、ダレンへのねぎらいも踏まえて彼のリクエストを汲んで撮ったものなのでは、と思えた。そう思えば、あのしっかりとした本人の抱擁シーンも理解できる。活動の継続を前提にアイドル的な人気を維持していたいなら多分ああは映さない、と、私は思う。

ダレンはこの時期、本当に"hold"してくれる人、そして"Affirmation"が必要だったんだ。。

野鳥版日本語↓
ーーーーー
ねえ
僕達何とか問題の解決糸口を見つけ出せないかな
多分僕らには必要ないんだよ
真正面から向き合ってさ
戦火の兵士は防衛地と
秘密の隠れ家を設けるものだけど

僕は今夜君に僕をしっかり受け止めてほしいのかもしれない
僕は今夜君に大丈夫だよって言ってほしいのかもしれない
僕は今夜君に先に動いてほしいのかもしれない
だって今夜、君の相手になるのは難しいって僕は気付いてしまったから

僕を受け止めて欲しい
大丈夫だよって言ってほしい

ねえ
怒りの言葉より僕はこの沈黙が嫌なんだ
頭の中がどんどん騒がしくなってくる
もう叫び出したいくらいになる
でも苦々しさがこれらの感情すら抑えていって
息をすることも困難になっていくんだ
答えてくれない?幸せって
金のダイヤリングよりも価値のあるものだったんじゃないの?
僕は喜んで何だってするよ
この心の中の嵐を沈めるためにだったら
僕はこれまで祈りを捧げるようなことはしてこなかった
けれども最近は膝を折っているんだ
それも奇跡を望んでなんかではなく
ただ信じる理由のために

僕は今夜君に僕をしっかり受け止めてほしいのかもしれない
僕は今夜君に大丈夫だよって言ってほしいのかもしれない
僕は今夜君に先に動いてほしいのかもしれない
だって今夜、君の相手になるのは難しいって僕は気付いてしまったから

覚えているかな、そう遠くもない昔
僕らはかつて夜を
互いの時を大切に過ごしていた
今僕らはそんな風に生きるのではなくただ所在して
人生を駆け抜けているだけ
それってとても孤独だよ
だから僕は君に僕をしっかり抱きしめ受け止めてほしいんだ

ねえ
僕達何とか問題の解決糸口を見つけ出せないかな
多分僕らには必要ないんだよ
真正面から向き合ってさ
戦火の兵士は防衛地と
秘密の隠れ家を設けるものだけど

僕は今夜君に僕をしっかり受け止めてほしいのかもしれない
僕は今夜君に大丈夫だよって言ってほしいのかもしれない
僕は今夜君に先に動いてほしいのかもしれない
だって今夜、君の相手になるのは難しいって僕は気付いてしまったから
ーーーーー

"build defense"とか"secret hiding places"っていうのは、"Two beds and a coffee machine"の"silent fortress"に近い、危険から自分を守るためのスペース。

"It's getting so loud"とか"I wanna scream"とか"storm in my heart"っていうのはこの時期の激しく揺れる&荒れるダレンの精神状況そのもの。"Crash and burn"では"walls are closing in on you"で耳を塞ぎたくなるもの、"Gunning down romance"では皮膚の下に潜む"monster"とされていたもの。
ダレンはこれらを止めるためになら何だってすると言い、ただ信じるために祈ると言っている(それまでそうではなかったのに)。つまり、それだけ彼はこの時追い詰められていて、これらに煩わされていた。息もできず、奇跡なんかほど遠く、何も信じることすらできない状況。

お相手との関係が良かった際の振り返りで取り上げられているのが"night time"(日中ではなく)であるのも("Affirmation"で"sun set"、"the lover after me"で"lights go out"に着目する)彼らしい。

アレンジはポップ寄りだし一見ラブソングっぽんだけど恋愛だけではない、根源的な自己、存在の根本的な受け止めを必死に切望、渇望している、結構重い曲、ダレンが溢れる曲だった。



熊本のいきなり団子。紫芋あんのを買った。

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