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スポーツと熱中症

※当記事は自分用のメモ的役割を意図して,気になった論文を簡単にまとめたものです

今回はメディカル的な側面が大きめ

煩雑なので先にまとめから読むこと推奨

0.熱中症対策の大前提

熱中症に対して,少なくとも一般人においては熱中症に対する意識は高くないという意識調査がある*1

それとは逆に,毎年一定数熱中症による死亡者が出ている程度には熱中症の危険度は高い(厚生労働省)

熱中症は高温環境でのみ生じると考えられがちだが,実際は湿度も大きな要因となっており,「気がついたら熱中症」ということも少なくない

また,アスリートにおいてはたとえば高強度の運動によって発汗量も増大するため,適切な対策を施さなければ重篤化するリスクも高くなる

熱中症(特に労作性のもの)を防ぐために大事なポイントは,運動直前運動中だけでなく運動プロトコルを開始する前の事前準備も大事になる

そして,そのような対策が十分に施されれば,熱中症は確実に未然に防ぐことができるし,万が一熱中症が起こっても重篤化を確実に予防できる


1.熱中症とは何か

そもそも熱中症の定義に関しては,もはや議論するまでもない程度には様々な機関・団体によってある程度確立した定義ができているためそちらを引用する

熱中症は・・・
体温を平熱に保つために汗をかき、体内の水分や塩分(ナトリウムなど)の減少や血液の流れが滞るなどして、体温が上昇して重要な臓器が高温にさらされたりすることにより発症する障害の総称です。高温環境下に長期間いたとき、あるいはいた後の体調不良はすべて熱中症の可能性があります
死に至る可能性のある病態です。
予防法を知って、それを実践することで、完全に防ぐことができます
・応急処置を知っていれば、重症化を回避し後遺症を軽減できます。

―「熱中症環境保健マニュアル2018」(環境省)より

熱中症とは、暑さによって生じる障害の総称で、熱失神、熱けいれん、熱疲労、熱射病などの病型があります。運動をすると大量の熱が発生します。一方で、皮膚血管の拡張と発汗によって体表面から熱を放散し、体温のバランスを保とうとしますが、暑いと熱放散の効率は悪くなります。このような状況で生理機能の調節や体温調節が破綻して熱中症は起こります。
―「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」(日本スポーツ協会)より

…などなど,要するに

暑熱環境における体調不良では常に熱中症を疑う
―「熱中症診療ガイドライン2015」(日本救急医学会)

というスタンスが重要であるといえる

熱中症の重症度は,症状によって主に3段階に分類される

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図は日本救急医学会編「熱中症診療ガイドライン2015」より引用した

あまり良い表現ではないが,どれだけ手をこまねいたとしても意識障害が見られたら躊躇することなく救急車を要請するべき
(これは熱中症に限った話でもなく一般的なBLSの考え方のひとつでもあるが)

救急車呼ぶのを躊躇して大事に至るよりは救急車を要請したものの実際はたいしたことなかった,という方がよっぽど良い
(これは救急車をタクシー代わりに使えというわけではなく,「何かおかしい」と思ったら迷うことなく要請するべき,ということ)

⇒スポーツ現場におけるトレーナーや,その他夏季イベントの運営側の人間は常に最悪の状態を防ぐことを念頭に置いて行動するのがある種の行動原理と言えるかもしれない

2.熱中症のリスクファクター

大きく分けて二つに分けられる

【環境要因(外的要因)】
大きな要因として考えられるものであり,近年ではWBGT(Wet Bulb Globe Temperature,湿球黒球温度)と呼ばれる指標が労作生熱中症のリスク評価に用いられる

WBGTは気温に加えて湿度輻射熱も考慮される(屋外のWBGT(℃)=0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度)
→むしろ湿度が重要な要素となる
気温は高くないけど湿度が高い,という日は特に注意する(これは労作する人の主観的な問題もある(=炎天下でないと「熱中症になるかも」という感覚が薄れがちになる))

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上図は熱中症予防情報サイト(環境省,https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt.php)より引用

WBGTが28℃を超えたあたりから,熱中症のリスクは急激に高くなる

また,スポーツ活動とWBGTの関係に関しては以下のような指標が示されている

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図は「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」(第5版 日本スポーツ協会 2019)より引用

とりあえずこのガイドラインを遵守することを目標として,特に次に挙げるような熱中症のリスクファクターを有する人は特に特別な配慮をすべき


【個人的要因(一部は内的要因)】
この中で特にわかりやすいのが,体重(過体重・肥満)年齢(<15歳・>65歳)被服条件疾病の有無(特に心臓周辺の病態)などが挙げられる

特に体重に関しては,肥満の人は皮下脂肪の関係で熱放散が生じにくく,深部体温が上昇しやすいために熱中症になりやすい

被服条件も同様の理由から熱中症のリスクになる

これ以外にも様々な要因があるが,これ以外についてはGauerら(2019)のレビューを参照されたい*2

3.スポーツにおける熱中症対策①~水分補給~

スポーツ活動によって生じる熱中症は労作性熱中症に分類される

スポーツに限らないレベルの対策としては,暑熱環境への順応・適切な水分補給・汗を放散しやすい服装などが挙げられる
(これに関する具体的なアプローチは今回の趣旨から外れるため省略)


スポーツ現場においても同様の方法が行われるべきであるが,ここで重要になるのは「適切な水分補給」とは具体的にどのような方法なのかという点

一般的に,体重(kg)の2%の水分(L)が失われたあたりから運動パフォーマンスが低下すると言われている*3・4,

一度に吸収できる水分量は限られているため,こまめに摂取することが重要(ISSNによれば,10~15分ごとにおよそ360~480ml(12~16液量オンス)摂取することが望ましいとされる*5)

競技にもよるが,一般的に喉の渇きを自覚したら水を飲むという戦略では水分不足に陥るリスクが高い可能性があるので注意を要する*6
(逆にこの戦略で十分になるのは,低強度・短時間(~90分)の運動の場合に限られるとされる)

さらに,暑熱下などで発汗量が多い場合,水単体での摂取のみでは体液バランスが崩れるリスクがあるため,ナトリウムを含んだスポーツドリンクを補給することが望ましい

日本スポーツ協会は,塩分(ナトリウム)を0.1~0.2%含んだ飲料が効果的としている(つまり,日本の食品における栄養成分表示100mlあたり0.1~0.2gと書かれているものならばよい)

その他,糖質も補給できると効果的だが,およそほとんどのスポーツドリンクには十分な量の糖質が含まれているのでこの辺はあまり気にしなくても問題ないかもしれない

暑熱下での運動ではあまり無いが,運動前に比べて運動後に体重が増える場合は水分の摂り過ぎなので逆に注意を要する
(競技にもよるが,過剰摂取を気をつけすぎて水分不足に陥ることがないように,トレーナーとしては伝え方に気をつける必要があるかもしれない)


【運動前・運動後の水分補給】
また,運動前にも事前に水分を摂取しておくことで,身体の水分状態を最適化することができるとされる(いわゆるウォーターローディングと呼ばれる戦略)

ISSNのレビューでは,練習前夜に500ml起床してから500ml運動開始20~30分前にさらに400~600ml補給することで運動前の水分補給を最適化することができるとしている*5

また,Racinaisら(2015)によるレビューでは,体重1kgあたり6mlを,2~3時間ごとに摂取することが望ましいとしている*7
(こちらの方が定量的であり,スパン的にもわかりやすいため使いやすいかもしれない)

さらに,暑熱下での運動では炭水化物の代謝を増加させることが示されていることから*8,運動中~運動後は糖質も摂取することが望ましい

運動後の水分補給は,たとえばISSNは運動中に失った体重約1.5kg(1ポンド)につき約750ml(3カップ)摂取すべきとしている*5

さらにRacinaisら(2015)は,糖質の摂取という観点から,タンパク質も同時摂取することもまた有益であるとしている*7
(糖質+タンパク質による筋グリコーゲン再合成速度の増加に関しては拙記事「アスリートのための食事②~五大栄養素・炭水化物~」を参照されたい)

ただ,これに関しては暑熱下でなくても運動後は糖質摂取が推奨されることから特別暑熱下で意識することではないかもしれない

乱雑になったが,ここまでをまとめると以下のようになる

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さらに,選手の意識啓発として,毎回の練習前後に体重を計測することを習慣づけさせ2%以上体重が減っている場合は水分補給が足りないということは教育しておくべきかもしれない


4.スポーツにおける熱中症対策②~暑熱馴化~

アスリートの熱中症対策として重要なもうひとつの要素が暑熱馴化
(=暑さに慣れること)

暑熱馴化によって発汗機能が変化し,ナトリウムの体外への流出量が減るなどの効果があると一般的に考えられている

暑熱環境への順応状況は,労作性熱中症における内的リスクファクターであるとされており*9,特に熱中症のリスクが高い選手(BMIが高い,基礎疾患を有しているなど)・競技(防具などを着けることによって熱放散が妨げられるものなど)においては重要になると考えられる

暑熱馴化による効果について,メタ分析によって以下のようなものが示されている

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NATA(全米アスレティックトレーナーズ協会)による熱中症に関するポジションステートメントでは,暑熱馴化は予防という観点での推奨度B(中程度)としており*9,ある程度必要性は担保されているといえる


暑熱馴化の具体的なプロトコルに関しては,たとえばNCAA(全米大学体育協会)は以下のようなプロトコルを示している
(下図は*9より引用)

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これを基にして7~14日間暑熱馴化を行うことをNATAは推奨している
(個人的には防具の段階は一段階ずつずらしても(つまりDay1-2は防具一切無し,Day3-4はヘルメットのみ,…)よいのではないかと思われる)

Pryorら(2013)は,暑熱馴化の実践的ガイドラインを以下のように示している*12

・全ての暑熱馴化プログラムは,選手が熱中症を避けられるような範囲の気温下(≦39℃)で行われるべきであり,深部体温の測定と水分補給状態の確認を行う必要がある

・室温を上昇させた室内で,深部体温をベースラインから1~2℃以上上昇させるのに十分な強度(50%VO2max)で1~2時間運動を行う

・シャトルランやアジリティドリル,短距離スプリントなど競技特有のドリルを暑熱馴化と組み合わせることは,競技パフォーマンスの向上という点からも有益である
このような高強度の活動(75%VO2max)を暑熱下で30~45分10~14日間で4セッション行えば十分暑熱馴化の効果は得られる

・アメリカンフットボールやラクロス,ホッケーのゴールキーパーなど,防具を必要とするスポーツでは,暑熱下での練習初期5日間は防具の着用を避けるべきであり,その後の練習で少しずつ防具を増やしていく必要がある

・上に該当するアスリート,暑熱に順応していないあるいは有酸素性能力の低いアスリートは,このような状況では初期5日間では練習回数は1日1回を限度とし,その後1日2回の練習を行う場合は1回/日と交互に行うべきである

Tylerら(2016)は,強度と時間・実施日の連続による効果に関して,高強度短時間(たとえば75%VO2maxで30~35分)と低強度長時間(たとえば50%VO2maxで60分)では同様の効果が得られると示しており,さらに10回(日)連続で暑熱馴化を行うのと27日間の間に10回(日)暑熱馴化を行うのとでは同様の効果が得られるとも示している(時間に余裕があるのであれば3日間隔が望ましい)

実施プロトコルに関してまとめると,

低強度を1時間でも,中~高強度を30分でも暑熱馴化としては同様の効果が得られる
・実施にあたっては3日間隔で10~14日行うことが望ましいが,時間に制約がある場合は10日連続で行っても同様の効果が得られる
・防具に関しては特に注意して進める(最初5日間はつけないことが望ましい)
暑熱馴化のプログラム中は,必ず水分補給を行うように意識づけさせ,暑熱馴化中に熱中症になることがないように注意する

※強度を設定するとき,VO2maxを用いて行うのは現場では難しいことも多いためMETsを用いてもよいかもしれない
たとえばVO2maxが42mL/kg/分の選手が50%VO2maxで暑熱馴化を行う場合,1MET=3.5mL/kg/分なので目標METsは42×0.5/3.5=6METsになる
あとは『改訂版 身体活動のメッツ(METs)表』(国立健康・栄養研究所)などを参照して該当するアクティビティを行えばよい
VO2maxはCooper testを行えば推定値が求められるので便利
ただし持久性運動が不慣れな選手に暑熱下で行わせると熱中症のリスクファクターとなるのでやるタイミングは十分注意する必要がある
(12分間で何m走れたかを測定する,その値(m)をdとしてVO2max=0.022d-10.39になる)


5.スポーツ現場における熱中症の初期対応について

「熱中症は事前の予防で十分に防げる」とされるが,そうはいってもやはり熱中症は起こるときには起こる
⇒起きたときにどうするか,という点の知識も重要

当たり前だが,意識障害が見られる場合は重度(熱射病,Ⅲ度)なので即救急要請する

また,水分補給が出来ない場合も救急要請(脱水状態が持続するのは避けたい,経口摂取ができなければ病院などの医療機関で点滴による治療を受ける必要がある)
が,救急車を要請した後,到着するまでにすべきこともあるのでそれは後に補足的に解説

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『スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック』(日本スポーツ協会)より引用

この図の一番左のフローチャートにおいて,現場での対応者(ATかもしれないしチームドクターかもしれないし,高校などであれば部活動の顧問かもしれない)が行うべき事は①体温を可能な限り急速に下げること,②適切な水分補給を行わせること,の2つであると考えられる


【①体温を下げるためのアプローチ】
そもそも熱中症とは,体温調節のメカニズムが破綻することによって深部体温が上昇→血管の拡張による脳への血流低下によって生じる様々な問題であり,熱中症を起こした場合,初期対応としてのみでなく予後不良を起こさないためにも適切に深部体温を下げる必要がある


日本救急医学会によれば,熱中症が生じた場合,深部体温は38℃になるまで下げるべきとしており,この体温まで低下させるのに要する時間が長ければ長いほど予後に後遺症などの不良を残す可能性が高くなるとしている*13

さらに,深部体温の冷却に関して,Gauerら(2019)のレビューでは熱射病や重度熱中症の場合は30分以内に38.3℃まで下げるべきと示している
⇒たとえば深部体温が40.0℃(熱射病時の目安体温と考えられたい)であった場合,目安として1分あたり約0.05℃の速度で下げなければいけなくなる
(あくまでこれは最低ラインであって,予後不良のリスクを下げるためには可能な限り早く下げる必要があり,30分にこだわる必要はない)

冷却処置は数多くありそうだが,この冷却速度の論理を踏まえたときに適切といえる処置は果たして何か?

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Casaら(2005)のデータを基に,表を私に作成した*14

冷水への浸漬(いわゆるCold-water immersion)は圧倒的に効果的なのは十分理解できるので問題ないが,ここではアイスパックという形で大血管を冷やす方法は圧倒的に不適切であることが分かる


ここまでは理論上の話として知っておきたい事であるが,現実問題としてどの方法なら運用可能なのかということは事前に理解しておく必要がある

たとえば,理屈上は熱中症になった選手に対しては冷水浸漬の処置を行うのが望ましいが,現実的にそれを行うとなると医療従事者がその場にいることが望ましかったり,さらに深部体温の計測という目的で直腸温の測定が行える人・機材が必要であったりとする*15
(実際,冷水浸漬の処置は医療従事者がその場にいない場合は推奨されない)

医療従事者がその場にいない場合の処置として可能かつ効果的な深部体温冷却法として考えられるのは水を全身にかける四肢の冷水浸漬風当てなどの方法を組み合わせて利用することであると考えられる

また,直腸温を測定出来ない場合であれば,選手が寒さを訴えるまでは冷却を続ける認識でよいとされる*16

このほか,最近少しずつ話題になりつつある(?)アイススラリー(後述)も,深部体温を下げるという目的では有効


【②水分補給のアプローチ】
万が一熱中症が起きてしまった場合にも,水分に加えて電解質の補給が大事になる

水分が摂取出来るようであれば,とりあえず症状が回復するまでは水分と電解質の補給を継続するのがわかりやすい

また,普段の練習であればスポーツドリンクのみでも(ベストでは無いにしろ)良いが,熱中症の際にはより電解質濃度の高い経口補水液(日本において一番なじみ深いのはOS-1?)を500~1000ml摂取することが望ましいとされる

意識があって経口での水分補給が出来る状態であればこれでよいが,意識がない・意識はあるが嘔吐により経口補給が出来ない場合は,救急車を要請して深部体温の冷却に専念する(=無理に飲ませることは絶対にしない)

補.対熱中症アイテムとしてのアイススラリー

アイススラリーとは,半氷半液体の流動状態の物質であり,スポーツドリンクなどを基にして作られる(詳細はこちらを参照されたい⇒https://pocarisweat.jp/products/iceslurry/ )

アイススラリーの効果として,深部体温を下げる効果とパフォーマンスを上げる効果が主に期待されている

【①深部体温の冷却効果について】
近年は,このアイススラリーの摂取によって深部体温を冷却することができるとされる研究結果が増えており*17・18,たとえばNgら(2018)の研究ではアイススラリーを暑熱下での運動試験実施前に摂取した群は,試験開始30分後にも飲料摂取群より有意に直腸温が低かったことが示されている*19

さらに,その摂取タイミングに関しては,Naitoら(2018)によればウォームアップ終了後に摂取することで直腸温が最も下がった(低下率ではなく絶対値で)としている*20

これらを踏まえると,アイススラリーの摂取は深部体温の冷却に十分な効果があると考えられ,その摂取タイミングの理想はウォームアップ後といえる
(もちろん,ウォームアップ前に摂取しても効果はあるとしているので,そのあたりに関しては練習や試合のスケジュールと相談して決めるのが望ましい)


②暑熱環境での運動パフォーマンスへの効果について
上に関連して,以前から事前に深部体温を下げるアプローチをすることによって暑熱環境での運動パフォーマンスが向上する可能性は示唆されていたが*21・22・23,近年ではアイススラリーを摂取することによって暑熱下での運動パフォーマンスが改善するのかということも多く研究されている

これに関しては結果が混同しており,たとえばSiegelら(2011)によって暑熱環境で疲労困憊になるまでAT(Anaerobic threshold,無酸素性作業閾値)で運動させた後の肘屈筋MVCは,対照群と比較してアイススラリーを摂取群で有意に高くなったことが示されていたり*24,Stevensら(2013)によってアイススラリーの運動前摂取によってトライアスロンのランニングパフォーマンスが向上したことが示されていたりする一方で*25,運動パフォーマンスを向上させることはないとする研究もある*26・27


⇒やや煩雑になってしまったきらいがあるので簡単にまとめると,

アイススラリーは深部体温を下げるのには十分有効な方法である
・しかしアイススラリーがパフォーマンスを向上させるというエルゴジェニックな効果をもたらすのかどうかは微妙(摂取量にもよるかもしれない)であるが,その費用を考えたときに余裕があるなら試してみる価値はあるかもしれない

特に運動前冷却(pre-cooling)の効果に関しては,Alhadadら(2019)がメタ分析を出しているのでそちらも参照されたい(アイススラリーについても言及されている)*28


7.まとめ

熱中症は事前の予防で十分に防ぐことが出来るもの
(選手に教育するときにもここは強調したいところかもしれない)

・リスクファクターには環境要因だけではなく,体組成や被服条件などが関係する
これらを考えたときに,たとえばチームスポーツにおいて特にリスクファクターが多い選手には特別な教育を施したりするのも効果的といえる

・暑熱下での水分補給に用いる飲料は,塩分が0.1~0.2%含まれていることを最低条件として,その他糖質なども含まれているとより効果的な水分補給が行える
(より簡単に言えば,水のみだけではダメでスポーツドリンクもしっかり飲みましょう,ということ
⇒発汗しているのにもかかわらず水しか摂らない状況が続くと低ナトリウム血症に陥る危険性がある)

・選手は体重1kgあたり6mlを,2~3時間ごとに摂取するという方法を摂り日常的に体内の水分量を十分な状態にしておくことが望ましい

日常的に練習前後で体重測定を行わせ,自分の水分摂取量に対する意識付けを行わせるとよい(2%以上減っていたら飲まなすぎ,など)

・運動後に体重減少が見られる場合,減少した体重1.5kgあたり750mlを1時間以内に摂るなど,急速に摂取することが望ましい

・暑熱馴化は,発汗機能の改善や暑熱下での運動パフォーマンスの改善という点で効果的である

・暑熱馴化は5~6月(本格的に暑くなる前)の間に10~14回1回につき低強度で60分または中~高強度で30分程度3日に1回ペースで行うのが最も望ましい
ただし時間に制約がある場合,10日連続で行っても同様の効果は得られる

・たとえば遠征などで普段の活動場所よりも暑い環境に向かう場合,そこでの試合や練習の5日前には現地入りし,その環境に馴化させるべきである

暑熱馴化中に熱中症になることがないように,実施日の気温や水分補給については十分注意する

・競技で防具を用いている場合,暑熱馴化のプロトコルの進行に合わせて少しずつ着用していく(いきなりフルスタイルでは行わない)

・熱中症の対応として大事なのは,まず救急車を要請すべきかそうでないかを判断すること
意識障害が見られていたり,意識障害はないが経口で水分補給が出来ない場合は迷わず救急要請する
要請後は救急隊が到達するまでの間も可能な方法で深部体温をできる限り下げるようなアプローチをしなければならない

・救急要請する程度ではない軽度~中程度の熱中症であっても,なるべく早く深部体温を下げる方策をとる

・冷却の方法として理想的な方策は2℃程度の冷水に首まで浸漬させることだが,これは医療従事者の監督下でのみ行われるべき
医療従事者がその場にいない場合は,水道水を全身にかけ続ける・風を当てる・四肢を冷水に浸漬させるなどの方法を組み合わせて最大限の効率で冷却を行わなければならない

・熱中症時の水分補給としてはOS-1などの経口補水液が望ましい

アイススラリーは深部体温を下げる目的としては非常に有効なため,資金的なハードルがクリアされるのであれば積極的に利用するべき


付.アメリカンフットボールと熱中症

せっかくなので自分がトレーナーとして従事している競技に関してはもう少し掘り下げていきたい


アメリカンフットボールと熱中症というと,Korey Stringerの話題は外せないだろう

コーリー・ストリンガー(Korey Stringer 1974年5月8日-2001年8月1日)はオハイオ州ウォレン出身のアメリカンフットボール選手。NFLのミネソタ・バイキングスに在籍中、トレーニングキャンプ中の2001年8月1日に熱中症で倒れ亡くなった。
―Wikipediaより(http://ja.wikipedia.org/w/index.php?curid=1970644)

この事件をして,アメリカンフットボールにおける熱中症の危険性をこれでもかと強調せしめられ,現在コネティカット大学にあるスポーツ医学に関する組織であるKorey Stringer Instituteは彼の名前からつけられたものである


日本においても,熱中症によるアメリカンフットボール選手の死亡事故は多くある

たとえば…

17歳、男性。35℃の炎天下に、アメリカンフットボールの練習後に、練習態度不良の理由で、プロテクター、ヘルメットなど完全装備の上、駆け足を命じられた。一緒に走った仲間達は次々と落伍していったが、この生徒はキャプテンであり責任感を感じたのか一人で走り続け、グラウンドを数周後に崩れるように倒れた。近医に救急搬送されたが、昏睡状態で、全身は強直性にけいれんしていた。体温は42℃以上で測定不能。2時間の全身冷却にもかかわらず、体温はなお40℃であり、全身状態の改善がないため当科へ転送入院。来院時、強直性けいれんを伴う深昏睡、ショック状態(血圧70/0mmHg、脈拍数140/分、四肢末梢冷)であった。血清浸透圧の上昇、ヘモグロビンの異常高値(18.7g/dl)から極度の脱水が示唆された。全身の氷水中での冷却、大量の輸液を行った。筋強直は筋弛緩剤の投与によって自発呼吸が停止しても、下半身では消失しなかった。血圧は30Lの大量の輸液・輸血と昇圧剤の投与によってようやく維持されたが、利尿剤を併用しないと尿量は全く得られなかった。20時間後から急速な肺機能の低下をきたすとともに、烈しい下血、吐血、肺出血をきたし、26時間で死亡した。
―「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」(日本スポーツ協会)より

この症例は正直,背景などを鑑みても絶句するようなものだが,より最近にも起きてしまった事故もある
「本学アメリカンフットボール部員の死亡について」(北海学園大学,2017)
「アメフト部の高3が熱中症死 京都で練習試合中」(日本経済新聞の記事より,2013)

そもそもの話,アメリカンフットボールという競技は理論的にはかなり熱中症の危険性が高い競技であると考えられる

わかりやすいものでは,体格と被服条件が挙げられる

①体格
27kg/m^2を超えるBMIは熱中症のリスクファクターの1つとなり得ることがACSMのレビューで示されており*29,アメリカンフットボール選手の多くはBMIとしてこの値を超えることが多いと考えられるためである

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ちなみに,BMI値27が体重換算したときに何kgになるかといえば上の通りで,100kgが多くいる環境においては熱中症のリスクとしてBMIが大きな要因であることは言うまでも無いだろう

これをサポートする根拠のひとつとして,ラインポジションの選手は他ポジションの選手に比べて有意に体温の上昇が高いことを示したDerenら(2012)の研究や*30,ラインポジションの選手は他ポジションの選手に比べて気流の産生がしづらく,熱放散が生じにくいことを示したDerenら(2014)の研究がある*31

ラインポジションの選手は一般的に他ポジションよりも大きな体重が求められること,またポジションの動きの特性という観点からこのような変化が生じると考えられる


②被服条件
(バイアスかもしれないが)一瞥しただけで,アメリカンフットボールの防具は熱がこもりそうだというイメージは十分につくといえる

実際,暑熱下での運動試験において,フルスタイル群はハーフスタイル群・対照群に比べて直腸温の上昇率が有意に大きく,さらに運動試験の持続可能時間も有意ではないものの短かったことをArmstrongら(2010)は示している*32

これと同様の結果をJohnsonら(2010)も示しており,さらに彼らはハーフスタイル群とフルスタイル群では直腸温の上昇に有意な差があったにもかかわらず,選手自身の知覚に差は無かったことも示している*33


これらの結果を踏まえると,アメリカンフットボールの防具は熱中症のリスクという観点から見ればかなり危ない装備であり,その装備に関しては暑熱下での活動においては特に注意を要する必要があるとされる

ただし,アメリカンフットボールの防具は頭部外傷をはじめとした重篤な外傷を防ぐためには必要不可欠なアイテムであり,(なかなかいないとは思うが)暑いからといって適当に身につけているともれなく軽度の熱中症になるよりも重篤な事故を起こしてしまう可能性がある
暑熱下ではなるべく防具を外して練習することが望ましいが,どうしても装備しなければならない場合,休息は普段よりも長めに入れる・さらに休息時間は防具を全て外すなどの考慮が必要であるといえる


また,暑熱下での運動による疲労に伴う集中力の低下や筋の疲労が,頭部外傷を生じるリスクにつながるとJAFA(日本アメリカンフットボール協会)は提言しており,脳震盪をはじめとした頭頸部外傷を防ぐという観点からも,熱中症予防を適切に行うことは重要であるといえる
(夏季の練習におけるJAFAの提言に関しては,やや古い記事ではあるがこちらを参照されたい)


【他ページへのリンク】

〈ストレングス系〉
◇スクワットについて
 ・スタンス
 ・バック/フロント,マシン/フリー
 ・深さ
 ・バーポジション

〈コンディショニング・スポーツメディカル系〉
リカバリー総論
リカバリーの方法①
◇熱中症(本ページ)
アメリカンフットボールと脳震盪

〈スポーツ栄養系〉
◇五大栄養素について
 ・カロリー収支とバランス
 ・炭水化物
 ・タンパク質
 ・脂質,ケトジェニックダイエット,栄養戦略
 ・ビタミン,ミネラル

◇エルゴジェニックエイド
 ・カフェイン

〈単発の論文レビュー〉
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【引用・参考】

〈参考になりそうなガイドライン〉
・「熱中症環境保健マニュアル2018」(環境省)

・「熱中症診療ガイドライン2015」(日本救急医学会)

・「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」(日本スポーツ協会,https://www.japan-sports.or.jp/medicine/heatstroke/tabid523.html よりダウンロードできる)

・「暑さ指数(WBGT)の実況と予測」(環境省,https://www.wbgt.env.go.jp/)


*注
1.「熱中症に関する意識・実態調査2019」(株式会社タニタによる実施,https://www.tanita.co.jp/press/detail/2019/0625/)

2.Gauer, R., & Meyers, B. K. (2019). Heat-Related Illnesses. American family physician, 99(8), 482–489.

3.American College of Sports Medicine, Sawka, M. N., Burke, L. M., Eichner, E. R., Maughan, R. J., Montain, S. J., & Stachenfeld, N. S. (2007). American College of Sports Medicine position stand. Exercise and fluid replacement. Medicine and science in sports and exercise, 39(2), 377–390. https://doi.org/10.1249/mss.0b013e31802ca597

4.Cheuvront, S. N., & Kenefick, R. W. (2014). Dehydration: physiology, assessment, and performance effects. Comprehensive Physiology, 4(1), 257–285. https://doi.org/10.1002/cphy.c130017

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