ひらのかつひさ

消閑の具 CES, CSCS, NSCA-CPT. 興味:American footb…

ひらのかつひさ

消閑の具 CES, CSCS, NSCA-CPT. 興味:American football, athletic training, motor control & motor learning. *いかなる内容も、実際の適用により利益を得られることを確約するものではありません

最近の記事

アメフトのヘルメットにかぶせる「アレ」の話

今回は↓の文献について。 アメフトでは最近、ヘルメットの上にかぶせるようなパッド(例えばGuardian Capなど)が普及しています。 NFLにおいては、2022年にプレシーズン初期にOL,DL,TE,LBについてGuardian Cap(GC)の装着を義務づけると発表し、さらに2023年にはシーズン全体を通じてコンタクトが生じる練習での装用を義務づけ、さらにその対象ポジションにRBとFBを加えています。 こんなに推奨されるんだから、GCの装用が脳振盪の発症リスクを有

    • フィットネスのプログラムをどうデザインするか(備忘録)

      最近自分の中で迷走してきたので、ちょっと整理。 自分が見てる競技(ラグビーとアメリカンフットボール)についての話しかしてないので、それ以外の競技に当てはまるかは知らないです。 まず何から考えるかトレーニングのモダリティについて 少なくともラグビーやアメフトではインターバルトレーニングがメインで良いか。長々走るのはあんまりしないし…… たまーにするけど、するにしてもオフシーズン初期の強度が上げづらい時くらい。 インターバルトレーニングの考え方については、HIIT Scie

      • 2023年の勉強の振り返りと今後の目標とか

        ほんとは年末に書きたかったんですが、体調崩しました。 なので年明けたこのタイミングですが昨年の振り返りをば。 以下の内容は僕の去年の勉強に関する振り返りなので役立つ内容は無いと思います。 2023年の自分の勉強量についてざっくり2023年のちょうど1月3日くらいからTickTickを使い始めたんですよね。タスクの管理とポモドーロタイマーとなかなか優秀なのでプレミアム登録しています。 どのタスクにどれくらい時間をかけたかというのもそうですし、何よりもトータルでタスクに取り組

        • アメフト選手のスピードパフォーマンスと最大筋力の関係

          最近アメフトのストレングストレーニングに関する面白い論文を見つけまして。 要は「カレッジのアメフト選手について、直線スプリントのパフォーマンスの高い/低いを分ける筋力やパワーの閾値はどの程度か?」という話。 これは拡大解釈してしまえば、スピードパフォーマンスを最大化する上では最低限どの程度の最大筋力が必要になるの?という話にもつながってくるか。 今回はこの文献とこの周囲の話について。 アメフト選手における筋力とフィールドパフォーマンスの関係普遍的な理解と同様に(後述)、

        アメフトのヘルメットにかぶせる「アレ」の話

          プロテインとかアミノ酸とか筋肥大とか

          タイトルに入っているワードが本文のキーワードです BCAAは未だブームはあるけれど、近年は特に筋肥大のためのサプリメントとしては否定的な見解も多くなってきましたね(Wolfe, 2017; Kerksick et al., 2018)。 その代わりに(?)、必須アミノ酸を全て含んだアミノ酸遊離物であるいわゆる「EAA」が脚光を浴び、ちょうど少し前にEAAに関する推奨事項も出されています。 ということで、今日はEAAとその周辺に関する話。 自分が栄養の専門家ではないので決し

          プロテインとかアミノ酸とか筋肥大とか

          感度、特異度、尤度比……とかの話

          昔自分のメモでまとめたものの焼き直し。 トレーナー向けです トレーナーとしての検査の意義スポーツ現場で怪我が起きたとき、トレーナーはいわゆる「HOPS」に基づいて評価を進めるが、この意義は大きく2つある(Prentice, 2017)。 障害を適切に鑑別すること 適切な治療やアプローチを選択すること 最も重要なことは、医師へのreferが必要かどうか、あるいは緊急性が高いたため救急搬送を有する病態であるかどうかを判断することにある。 いわゆる「スペシャルテスト」は検

          感度、特異度、尤度比……とかの話

          筋肉痛をなんとかしたい

          自分の筋肉痛がやばい時にやばいままに書いたものです ここからはちゃんとDOMSと書きます。DOMS = delayed-onset muscle soreness(遅発性筋痛) 筋肉痛の時、身体の中で何が起こっているのか?細かい話が多いかも DOMSの生理的機序として、古典的には ①乳酸の蓄積 ②筋スパズム ③筋の微細損傷microtrauma ④結合組織のダメージ ⑤炎症 ⑥電解質や酵素の流出 などが指摘されている(Lewis et al., 2012)。 乳酸につい

          筋肉痛をなんとかしたい

          足関節内反捻挫 アスリハメモ

          意外とこういう「メジャー」な傷害のリハビリってついついルーチン的にやってしまいそうになるんですよね。むしろマイナーな傷害の方が自分が無知であることに自覚的になれるので、エビデンスを洗いざらい調べて、しっかり評価して……と丁寧にできるような気がする。 ちょうど最近トレーニング指導させていただく機会があり、その過程で一度エビデンスを確認したのでそれのまとめ。 備忘録なので特に役立つことは多分ナイデス それは本当に捻挫か?初期評価について基本はHOPSで疑いを立てる。受傷パター

          足関節内反捻挫 アスリハメモ

          「ラインマンのニーブレース」に意味はある?: アメフトにおけるprophylacticなニーブレースの傷害予防効果の話

          最近、アメフトのオフェンシブライン(OL)の選手におけるprophylacticな(=予防的に装用する)ニーブレースの装用と主要な膝部外傷の関連性についての研究を見つけた。 NFLの2014〜2020シーズンを対象としたこの研究では、 ・年々ブレースの装用率は低下している ・ブレースを装用している群(n=154)では7シーズンを通じた膝部外傷件数が2件であった一方、ブレースを装用していない群(n=1407)では69件であった(受傷率としては0.013 vs. 0.049,

          「ラインマンのニーブレース」に意味はある?: アメフトにおけるprophylacticなニーブレースの傷害予防効果の話

          アスリートの消費カロリー量をどう推定するか

          最近見つけたこの論文↓について。 食事にアプローチしたい場合には「自分がどの程度エネルギーを消費するのか」という要素は重要になる。 というのも、それがわからないと「どれだけ食事を摂れば良いか」がわからないからであって、逆に言えばそれが分かればエネルギーバランスの観点から大まかな指針を立てることができる。 例えば体重を増やしたいのであれば推定消費カロリー量よりエネルギーを取る必要があるし、逆に減量したいのであればそれより低くする必要がある(その上でPFCバランスなどが考えら

          アスリートの消費カロリー量をどう推定するか

          筋肥大のためのトレーニングにおける変数の考慮事項

          ※これは最近のレビューやガイドラインを参照したものです ※細かい生理的な背景などについては省いています ※特記事項の無い限り以下の文献に基づいています Bernárdez-Vázquez R, Raya-González J, Castillo D, Beato M. Resistance Training Variables for Optimization of Muscle Hypertrophy: An Umbrella Review. Front Sports A

          筋肥大のためのトレーニングにおける変数の考慮事項

          ヒップスラストはいいぞ

          ヒップスラストは股関節伸展を主とするエクササイズであり、股関節伸展筋群を集中的に強化するという点では非常に適しているエクササイズである。 股関節伸展は身体を前方推進させる力を引き起こすのに重要なファクターであるため、ヒップスラストはスクワットやデッドリフトのような「コア」(主要な)エクササイズに挙げられることは少ないものの、場合によって重要度は非常に高くなると考える。 また、2022年に発表されたハムストリング肉離れ後のリハビリテーションに関する推奨事項でも、股関節伸展筋

          ヒップスラストはいいぞ

          セカンドインパクト症候群について考える

          脳振盪に関する話です。 ちなみに脳振盪concussionは脳「震」盪ではなく脳「振」盪とする方が良いとか言われますね。脳が振られるのであって震えるわけではないから、みたいなそういうイメージ。 今回のフォーカス脳振盪のマネジメントに関する現状の考慮事項 脳振盪からの競技復帰が非常に慎重に進められるのには、脳振盪受傷後7日〜10日程度は再発に対する感受性が高まるということが一つに挙げられる(Guskiewicz et al., 2003)。 反復的な脳振盪の受傷は中〜長期的

          セカンドインパクト症候群について考える

          技術指導におけるエコロジカルダイナミクス

          どっかで話すことになる内容のアイデアとそのメモ書き兼まとめ。 内容の統一性はあんまり無いです。エッセイみたいな感じで読んだ方が良いかも。シランケド イントロ「庭師」としての指導者 ※邦訳版あり これはアメリカの軍人であるStanley Mcrystalのリーダーシップ論に関する言葉だが、しばしばスポーツ指導者に対する警句としても用いられる。 これと同様の指摘をトレーニング指導者であるFrans Boschもしている点はとても興味深い。 Boschによるこの指摘は、競

          技術指導におけるエコロジカルダイナミクス

          「ホームアドバンテージ」は存在するか?

          します(記事終了) そこまで本気で調べていないので調べ漏れは多分(というか間違いなく)あります ホームアドバンテージとは何か試合の実施場所を本拠地とするチーム(ホームチーム)では、そうでないチーム(アウェイチーム)に比べて種々の面で有利になる事象をホームアドバンテージhome advantageと呼ぶ。 これは厳密に科学的背景が明らかになっているわけではないものの、確かに存在するようである。 例えばある記事ではJリーグにおけるホーム/アウェイの勝率が調べられているが、ここ

          「ホームアドバンテージ」は存在するか?

          クロスエデュケーションについて:片側を鍛えると逆側も強くなるのはどうして?

          クロスエデュケーションとは何か一側での筋力トレーニングや技能的な練習の効果が逆側に転移することをクロスエデュケーションcross-education(contralateral effectとも)と呼ぶ。 例えば、右上肢でのバイセプスカールによって右肘屈筋群の筋力強化を図るトレーニングを行った際に、何もしていないはずの左肘屈筋群の筋力もある程度増強するといった事象が該当する。 今回は主に筋力トレーニングという視点からの説明になる。 クロスエデュケーションによる筋力増強効果

          クロスエデュケーションについて:片側を鍛えると逆側も強くなるのはどうして?