古賀及子(こがちかこ)
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唯一無二の「そんなまさか」
仕事をいただいて遠くへ行くのは大好きだし、聞いたことのある地名の実際をそこに立って感じるのには興奮するけれど、常々家を優先してしまってあんまりあちこち行かない。
経験が少ないから、ホテルを選ぶのがとにかく下手で、もう今年からビジネスホテルのチェーンをひとつここと決めることにした。
大きなチェーンだから大きな都市にはいくつもグループのホテルがある。そこからいちばん安いところを探して迷わず予約する
押すと実現するボタン
起きた息子がやってきて、「信用創造って知ってる?」という。なにそれ。
「銀行の用語らしいんだけど」
「えっ、知らない。信用創造、ほぼ天地創造じゃん」
公民の授業で習ったそうで、でもうまく理解しきれないという。
ちょうど弁当ができあがったところだったから、スマホで検索して解説文を読んではみるのだけど、理解よりも信用創造ということばの強さにとらわれた。
お金周りのことばはたまに急にミラクルな感
もしかしたら、私もコーヒーをもらえるかもしれない
「暖房を切り忘れた、
夢を見た」
と、息子が起きてきた。
「暖房を切り忘れた」と聞いて、切り忘れて寝てしまったのか!? と、「夢を見た」が聞こえるまでのあいだの瞬間に絶望する。
人間は瞬間にも絶望できるのだ。
休みの日。朝寝を楽しむ娘をおいて息子とパンを食べる。
最近使っていたジャムもピーナツクリームもどちらも切れかけで、「えっ、昨日までまだあったのに、一気に無くなったね」とでかめの声
じゃがりこを買う人だけが私にとってかわいい、なんだこの感情は
むくと起き、朝の体を弁当作りモードで動かす。
冷凍ご飯をレンジにかけ、卵を溶いて砂糖と塩を入れ、食パンにシュガートースト用のクリームを塗るなど。
やるべきことが複数あって順番は問わないから、思いついたところから1秒も隙間なく動き、やれるところからやる。テキパキを創出するのがおもしろい。
平行して洗濯機も回した。うちでは洗濯に前日の風呂のお湯を使っている。くみ上げるべくホースを湯船に落そうとし
古賀及子の本、日記エッセイ『おくれ毛で風を切れ』、エッセイ『気づいたこと気づかないままのこと』2冊同時刊行のおしらせ
2024年2月上旬、日記エッセイ『おくれ毛で風を切れ』と、エッセイ『気づいたこと気づかないままのこと』がなんと同時に出ます!
日記エッセイ『おくれ毛で風を切れ』(素粒社)
母・息子・娘、3人暮らしの、愉快で多感な日々。
生活は、もっと観察できる。
2023年2月刊行の『ちょっと踊ったりすぐにかけだす』に収録しきれなかった過去の日記と刊行以降の日記を、書き下ろしもふくめて収録しています。
ブ
地金は売らずにまた会おう
希望の朝はこうもやすやすとくる。
メープル風味のシュガートーストクリームを買ったのだ。
昨晩寝床に入りながらふと(明日が楽しみだなあ、朝にシュガートーストが食べられるぞ)と思い、瞬時にちょろい! と恥じた。
シュガートーストクリームは、まいばすけっとで買ったトップバリュのやつだ。安いし、あとパッケージのデザインが愛すべき適当さで、見た目にはおいしいとは信じられない。そんな程度でも、前の晩から
なんだかいつも、これ以上着るものがないし脱ぐものもない気持ちだ
布団から出した温まった足の裏が床にふれてもう冷たい。
ちかごろの朝は、空気と一緒に床も冷えて待っている。もはや寝ぼけたままでもわかっているから、床にはつま先だけ接地させて、そのままつま先立ちで歩いてスリッパを探す。
私のスリッパは所定の位置、たとえばベッドの脇とか、分かりやすい場所にはけっしてなくって、いつも適当などこかにある。風呂場の脱衣所とか、玄関とか、居間のすみとか。ちょっとでも寒くない
本物のIKEAにふれて
はだしで歩くと板張りの床がべたべたする。
大雨の日、雨は液体としてだけでなくもやとして充満してそこいらじゅうを濡らす。
「べたべたするなあ~」と、息子が素直にそのまま声に出して、私も「べたべたすんだよねえ」と返した。除湿器のスイッチを入れた。
パンを焼いて、遅起きの娘をおいて先にふたりで朝ごはんを開始した。息子は最近家具屋に関心があるらしく、できるだけ怖くないまちのIKEAに行きたいんだそう
現実のしわを取る:『ちょっと踊ったりすぐにかけだす』書下ろし構成前の生の日記
書籍『ちょっと踊ったりすぐにかけだす』に収録した書下ろしの日記は、日々の日記から、いくつかのトピックをぬいて1日のできごととして再構成して書き上げました。
この日記は再構成前の「生の日記」で、2023/05/21の文学フリマ東京36でペーパーとして販売したものです。ペーパーと同価格で販売します。
身に覚えなく早い時間に目があく。眠気はからだにまだ巻きついて身が起きてはこず、横になって軽く右へ左
無意識から目覚めるような同意:『ちょっと踊ったりすぐにかけだす』書下ろし構成前の生の日記
書籍『ちょっと踊ったりすぐにかけだす』に収録した書下ろしの日記は、日々の日記から、いくつかのトピックをぬいて1日のできごととして再構成して書き上げました。
この日記は再構成前の「生の日記」で、2023/05/21の文学フリマ東京36でペーパーとして販売したものです。ペーパーと同価格で販売します。
瓶ではなく紙カップのジャムのシリーズにいちごジャム、ママレード、ブルーベリージャムにならんでピーナ