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#SF
-VS EATER-
パリ、夜の裏路地。カレーライスと八宝菜が手足をバタつかせ、捕食者に悲痛な抵抗を示していた。
「アァ、ウマイ、こんなご馳走にありつける日がまた来るなんて……」
「存分に味わえ、これは本来ヒトに許された当然の権利だからな」
「頭が無くなる!助けて!」
哀れな被食者にがぶりつくのは薄汚い男女二名、その後ろで黒服男が一人見守る。哀れな被食者の頭部は今に平らげられようとしていた。
「肉断ち
探偵玩具デュエロイド
「なぁ、そこ退いてくれねぇかな」
塀の上。でっぷりと太った白猫を見上げて、オレは立ち往生していた。
猫は大きな瞳でじっとオレを睨んでから、大きな欠伸を一つ。
こいつらは基本的に、オレのような小さな玩具の言う事になど興味が無い。
「確か鉄斎……だったか? 頼む、近道なんだ」
名前を呼んでやると、鉄斎は少し驚いたようで目を見開くが、動きはしない。
無理に飛び越える事も出来るが、今は避け
自分探しの旅なんて・・・Cyber Journey
気づくと俺は、そこに在った。
眼下に無数の立体:家:密集:街:人間が住まう所
上を向けば空間:空:青
1kmほど先には盛り上がった緑の地形:山だ。
そしてその傍らに、山と同じほどの大きさの何かが立っている。
意識する間もなく俺の目はそいつをズームし、知識が頭に流れ込む:レッサーパンダ:尋常でない巨大さ
その情報と同時に何種類もの感情もインストールされる《選択》愛情:保護:萌え
近くで声がす
夕顔は咲く、凍夜〈しや〉の涯にて
黄昏の星。
巨大な太陽は地平線上で不動、紅い光で地を照らす。上空を雲が高速で通過する。冬が近い。平均公転半径僅か900万kmのこの星の一年は極短いのだ。紫葉の梢を透かして私はその景色を眺めていたが巨大な荷物を背負い直すと、見送る僅かな人々へと手を挙げて応え、歩き出す。
凍夜境界線の先へと。
凍夜は永久に続く嵐と氷の世界だ。人は到底生存不可能。故に私の様な物が用いられる。人を模しながら、人
真実は二つ、嘘は一つ
俺は警官の言葉が信じられなかった。
「真美子が存在しない?」
「事実です。来亜誠さん、あなたは電脳をハックされ、偽の記憶を植え付けられました」
「そんな馬鹿な。現に彼女と撮った写真がスマホに……」
真美子の写真はなかった。一枚も。
着信履歴やメッセージログなど、彼女を示すものは一切ない。
「真美子なる女性はあらゆる記録に存在しません」
警官は残酷な真実を告げる。
真美子との思い出
真夏のひゅるひゅると、ぐちゃぐちゃ人類
侵略者がやってきたのは8月の暑い盛り、それも盆休みのただ中だった。
オレがはっきり覚えているのは、そいつらがひゅるひゅると降りてきた時にクーラーの調子が悪くてたまらなかったことだ。時折温風が出てくるクーラーを睨んではあの電気屋ディスカウント商品とか言って不良品売りつけやがって殺す! とか思ってたのだが、テレビにひゅるひゅるが映っているのを見てそういうことを忘れて窓を開けた。案の定うちの空にも浮
超銀河超特急殺人事件
超銀河超特急とは、宇宙に存在する約2兆個の銀河すべてを周回する、超光速宇宙輸送船列の通称である。全長14 km、幅2 kmの直方体型宇宙船2千隻を直列に繋ぎ、宇宙空間を爆走する姿から、こう呼ばれている。
アンドロメダ銀河を目指す途中、超銀河超特急の船列がなにもない巨暗黒空間に差し掛かったとき、事件は起こった。
名探偵ジクヮー3千3百3世は、5億本の細い触腕を蠢かせながら目覚めた。触腕に備わ
遺忘のナヴィガトリア
高度100km、カルマンライン。天獄と地国のあわい。希薄な大気故に昼でも空は黒い。天獄から来る異形の天使達を迎撃する最前線。
僕は広漠な空を滑る様に舞う。天使の死骸製のスーツは秒速8kmの弾道飛行能力を人に与える。
目標を視認。
II型天使が三体、編隊を組んで哨戒中だった。合計で300ある眼が此方を捕捉するより先に戦闘妖精を展開し、攻撃態勢に入る。
だが8kmまで接近した瞬間、II型天使