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1on1ミーティングの道具箱 - 第19回 プロのメンターが1on1のヒントとコツを紹介するシリーズ 道具:フィードバック

有効なフィードバックを与えることは簡単ではありません。内容がポジティブであれネガティブであれ、言いかたやタイミング次第で反発を招いたり逆効果になったり、目標達成につながらなかったり。1on1ミーティングにおいて部下の成長を促し、パフォーマンス向上を支援するフィードバックのヒントとコツをご紹介します。


継続的に結果を出していくには、粘り強さが必要です。
この記事を読む「3分ルーティン」を
ご一緒に続けながら現場で実践していきましょう。



「1on1ミーティングの道具箱 」シリーズ 第19回



現在地





はじめに



私たちは人生経験から身についた
よくない習慣に戻ってしまうこともしばしば。
それは自然なことであり、私を含む誰でもあること。

「1on1ミーティングの道具箱」シリーズで大切なことはこの3つです。



・失敗してもまた挑戦
・自分のペースで継続
・小さな進歩も楽しみ



全編でご紹介する道具(方法、スキル)をジム通いをするかのごとく
一つひとつ職場で実践しながら鍛えていきましょう



対話のスキルは筋肉のように日々動かす必要がある



ラポール・心理的安全性を形成する



3つの聴く態度/姿勢
自分らしく落ち着きと余裕を持てる
話を聞いて相手を否定したり、すぐにアドバイスせずに受け止める
話し手のものの捉え方・考え方・感じ方にそって理解しようとする



「1on1ミーティングのタイムライン」の全体図



参考例



部下/メンバーの成長と自律のため、「気づき」を「果実」とし
”気づかせて引き出す” 考え方、方法、スキルを主要素として構成



第4章 一人ひとりに合わせる



フィードバック

                                                                                             ❕ ポイント/注意点



フィードバックとは



フィードバックの語源は軍事用語



フィードバックの語源は軍事用語といわれています。遠くの的をめがけて
大砲を打つ。しかし昔は高性能のレーダーなどないので、なかなか
当たらない。そこで、的のそばにフィードバッカ―という人がいて、
フィードバックしてくれるわけです。

例えば大幅にオーバーした。すると「10メートルオーバーです」のように
返ってきます。評価、指摘とはニュアンスが違いますね。それではと少し
確度を変えて2発目を放つと「7メートルショートです」3度目の正直で放つと「当たりました」 これが本来のフィードバックです。
ジャッジの入らない、ニュートラルなものです。

「実践!  1on1ミーティング」本田賢広氏著 日経文庫 2021



フィードバックといえば、勤務評定の時期に行う「評価結果を評価された
本人に伝えること」、指摘することなどの意味で多く使われます

一方、

1on1ミーティングにおけるコーチングの一環としてのフィードバック
審判的、診断的な解釈や評価を入れずに
本人がよく見えていない/気づいていないことを上からではなく横から
「こう見えます/聞こえます」「こう感じます」と伝えること

「大砲の的」の説明を読むと、なるほど!と感じますよね

それにより
鏡に映った自分を見るように相手は自分の状態に気づく機会になります。
その課題に向き合い自分への理解を深めるのに役立ちます
                 (第12回反射」をご参照ください)
   

この違いをしっかりクリアにしてから詳しく見ていきましょう



種類



どのフィードバックも相手への敬意と思いやりを示すことが不可欠



❕ 感謝のフィードバック

”エッ⁈” と思われた方が多いのでは?
多くのストレスを抱えて、感謝の気持ちを表す余裕などないと
思っているかもしれませんね。
よりよい職場づくりは「ありがとう♥」から始まります

ポジティブ心理学の文献によれば、感謝を表すことは
相手の利益になるような行動へのモチベーションを強化する
良好な対人関係を促進する
自制心を高める
支えられている実感を高める

感謝の想いを伝えると、相手は自分の価値が認められたと感じ
進んで助けてくれるようになります


感謝することが自分自身の
ウェルビーイング(健康で幸福な状態)が改善
ストレスが低減
レジリエンス(立ち直る力)が養われる
忍耐力が高まる

マネジャー自らロールモデルとなり実践しましょう
えぐい表現ですが、「ありがとう」のひと言は
コストがゼロの、まさに ”プライスレス” 



ポジティブとネガティブフィードバックの
メリット/デメリット



ポジティブフィードバックとネガティブフィードバックそれぞれの果たす
機能を理解することが大切





メリット/デメリットのマトリクスが示す違いを踏まえれば、
苦手なネガティブフィードバックを避けることより、
ネガティブフィードバックを与えるにはどうすべきかを考えてみましょう

フィードバックの与え方に関する米国の研究報告によると
誰を相手にネガティブフィードバックを行うのが適切かを
明確にしています

初心者と熟練者は異なる種類の情報を求めており動機づけされる情報も
異なります

ある程度の知識とスキルを身につけた人たちは、ネガティブな部分があれば
それを知ろうと情報を求める。ネガティブフィードバックを恐れていないのです

ネガティブなフィードバックはよきアドバイス(解決策へのヒント)と一緒に適切な方法タイミングで提供し、気配り/傾聴をすれば
モチベーションを大きく高めるからです



❕❕ ポジティブとネガティブフィードバックのバランスをとる



構成要素



ポジティブとネガティブの両面へのフィードバック具体的に思いやりを込めて与えるアプローチ



フィードバックを与えるあなた/上司が
まずその対象となる行動が起こった時間と場所を指摘し
見聞きした言動がどのようなものであったかを具体的に表現し
それが自身の思考や感じ方、行動にどんな影響を与えたかを伝える


特にネガティブフィードバックの場合
フィードバックを与える人が相手にとって信頼できる人でなければ
受け容れられません


相手への敬意と思いやりを示すには

許可をとる

「フィードバックしてもいいかな」では相手は身構えてしまうので
「わたしが感じたことを話してもいいかな」


・内容は "I" (アイ/わたしが主語)メッセージ

「わたしは~感じた」「わたしには~見える」と
審判的、診断的な解釈や評価を入れずあなたの主観を伝える。
決めつけられた感じがしないので、相手の言い分も挟める余地があります


確認をとる

あなたの主観を伝えるわけですから、必ずしも正しいとは限りません。
「わたしには~見える」「わたしには~聞こえる」と感覚を伝えるので
相手本人に「あなたはどう思いますか?」と判断を確認


*解決策 

アドバイス
を求められた場合は、まず「問いかけのフィードバック
あくまで「ヒント」として提供
漠然としがちなフィードバックに比べアドバイスは具体的、
実行可能な情報が多く、評価よりもこれからできる行動に焦点を当てる



上記のポイントを踏まえて
相手の強みを伸ばす話法の 具体例 ⇓ をみてみましょうか



改変:「フィードバックの誤謬」M. バッキンガム氏著 Diamond Harvard Business Review Oct. 2019



タイミング



ネガティブフィードバックの場合特にタイミングがカギ



フィードバックは内容もさることながら、タイミングが重要



良いタイミング:最も効果を上げるとき

・優れた仕事、プロジェクトの成功、適確な行動などの称賛に値するとき
・相手が助言によってスキルの向上を促せる見込みが高いとき
・相手がフィードバックを予期している場合
・相手の行動が看過できないほど同僚/チーム/組織に
 悪影響を及ぼしているとき


悪いタイミング:状況を悪化させるとき

・発生した問題について、あなたがすべての情報を把握していないとき
・唯一与えられるフィードバックが相手が簡単に改善、対処できない事がら
 についての場合
・相手が厄介な問題にぶつかった直後で、かなり感情的になっていたり
 傷つきやすい状態にあると思われるとき

・あなたに十分な時間的または精神的な余裕がなく、冷静かつ丁寧な
 フィードバックができそうにないとき
・フィードバックの理由が相手の行動を改善するためというより
 あなたの嗜好、好き嫌いに基づいている場合
・相手の向上を後押しできる解決策/助言をまだ十分に練れていないとき


❕ 部下のすべての言動に対してインプットや反応をすべきというわけ
 ではありません。改善できる行動に絞って適切なタイミングで提供すれば
 ポジティブで持続的な効果を及ぼせることが多い。



結果を導くには



新しい挑戦や課題の改善などの目標に対して
主体性を育成のため「任せる」を誤解し「放任」になっていないでしょうか


フィードバックするポイントは

部下の意見や考えを訊く
・目標達成(結果が出る)までのプロセスを明確化させる
・要所において進捗を確認する

第18回目標 GROWモデル」をご参照ください)


      

部下の成長と自律には時間がかかります
辛抱づよく「待つ」こともマネジャーの「勘どころ

長期戦になるので要所、要所での結果承認がとても有効です



ステップ・バイ・ステップで、結果承認を欠かさずに
最終目標へ近づけていく強化法「シェーピング法」を活用しましょう





今いる段階での結果をしっかりと承認することが、その人の自己肯定感
高めて、次の段階にチャレンジする動機づけになります

            (第15回承認・勇気づけ」をご参照ください)



いかがでしたか?



次回、9/25 第20回からいよいよ最終章

第5章 スキルを日々実践する 「リフレクション/内省」
リフレクションとは何か、考え方は必要か、どう役立つのか
をご説明します。



「1on1ミーティングの道具箱」シリーズを通して

複雑な状況をうまく処理したり、
コミュニケーション(会話/対話)を円滑に進めたりするために
一本やりではない、成熟したコミュニケーションができる「道具」を
身につけた「フレキシブルなマネジャー」を目指しましょう。



ポイント



フィードバックは適切な方法とタイミングと気配り/傾聴
+習熟度に合わせて+両方のバランスをとる



メッセージ


 

スティーブ・ジョブズ氏も頼ったシリコンバレーの偉大なメンター  ビル・キャンベル
                                                                                                                  (1940年 - 2016年)



すべきことを指図するな



with all of my thanks and friendship



お知らせ

         


9/18 (日)「1on1ミーティングの道具箱」シリーズ 公開 お休み



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