図1

「宅配ボックスと事業社と消費者」から

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3点に注目したい。
 1.物流崩壊は消費者にとっては、(感覚的には)「だから何?」程度
 2.自宅で「受け取る」手間と、宅配ボックスの実利、を明確にすべき
 3.消費者にとって、宅配ボックスは魔法の箱である。
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A 宅配業者の方と話していると、宅配BOXを設置している家庭は確かに増えているが、それでも圧倒的に高負荷な「再配達」という呪縛からは逃れられていないという。


B 再配達は物流プラットフォームに対する過負荷領域である。宅配ボックスは、個人(家庭向け)のものから、駅にロッカーのように設置されているものまで非常に幅が広い。宅配ボックスについては、特に戸建て向けの普及率が1%程度だとされている*1。これは実感にも合致する。


A 宅配ボックスは、ECが更に伸びるこれからの時代にとって必要なインフラの一種ともいえる。広義には、車のトランクへの配送といったものも、宅配ボックスカテゴリに含めてよいだろう。ここで重要なのは、「物流網がパンクするかどうかなんて、消費者には(感覚的には)関係ない」ということである。


B 現実問題、物流網がパンクした場合、交渉力の強い企業ほど時間等の指定が守られた配送サービスを受けることになる。一般消費者は基本的には後回しだろう。しかし、消費者からみれば、ECで頼んだ物品が多少遅く配送されようが大したことはない(と感じる)。


A 重要なことは、家庭向け宅配ボックスについては、多くのケースにおいて、物流業者とそれを取り巻く企業群(ECプレイヤー、小売業者など)に対しての重要事項であるが、それを消費者の支出で賄おうとしていることにある。消費者視点というものが欠如した好例である。これでは普及しない。


B 消費者から見たときに、実は宅配ボックスというのは非常に重要である。しかし、その意義をもって消費者に訴えているケースが非常に少ないのが現実であろう。


A 夕方近くに近所のスーパーにいくと、主婦(夫)はもとより、社会人や学生まで多くの人でごった返している。予備校で食べる夕飯を買う人もいる。夕飯の食材を買う人もいれば、夕食そのものを買う人もいる。夕食といったケースを考えると、昼過ぎに当日夜のレシピを決めるといったケースも多い。ここに対するECの対応は(可能であるが)まだまだ一般化はしない。


B ECというのは、消費者が「店先に行く」という行動をスキップする仕組みである。同時に、消費者と小売業者の交渉力のベクトルを変化させる役割を持つ。ECの方がリアル店より安いというのは、後者のいいケースである。問題は前者にある。「店先に行く」のをスキップする代わりに、自宅で「受け取る」必要がある。


A 「受け取る」といった時に、「いつでも好きな時に」と表現する方が多々おられるが、それは違う。ピンポイントの時間指定など非現実であり、結局、1時間とか数時間の「幅」を消費者が準備する必要がある。受け取ることが出来なければ、再配達依頼となり、指定時間幅には基本的に自宅にいて対応可能な状態にしておくことがマナーであろう。


B この「受け取る時間の幅」というものは、重い。話が飛ぶが、リニアが開通すれば時間距離が縮まると主張して、リニアの「駅to駅」の所要時間を証拠に持ってくる方が非常に多いが、あれはナンセンスである。駅についてから地上に出るまでの時間や、乗り換えに係る時間を無視している。ここが実は重い。


A 物流と宅配ボックスに戻るが、消費者にしてみれば、「受け取るための準備(時間)」は非効率であり、この手間があると、リアルとの差が縮まってしまう。理想形は「1月23日。16時までに」といった指定であり、16時を過ぎた段階で消費者が宅配ボックスをあけると、必ず所望物品が入っている状態だろう。


B この現象の見方をかえると、宅配ボックスというは、欲しいものが常に入っている魔法の箱、といった感じになる。この観点に立てば、ECの発注の仕方も変わる。最短時間制限は存在するとして、基本的には「何月何日の何時まで」といった指定にしておく。デッドラインを確実に守るのが物流の仕事になる。


A 場合によっては、「1月23日の配達で、16時まで」とか、「1月20日~1月23日の16時までに」といった詳細な指定になるだろうが、これは設計事項であり、消費者のジャーニーを検討しながら定めればよいだろう。


B 物流網がパンクするから宅配ボックスを整備しましょう、補助金を出します。では弱い。消費者に対するダイレクトなメリットを示すべきであり、それはここまで論じてきた魔法ボックスとしての効果である。この利便性を、流れるように自然な宅配ボックスのある生活というイメージ映像などで、消費者が感じて理解できるようにする必用がある。


A 宅配ボックスのメーカの立場に立てば、魔法の箱により変容する消費者の行動を考える必要がある。どのような行動様式が美しくなめらかなのか。それを実現するために、宅配ボックスの機能と、多くのECや物流業者とのアライアンスや連携を実現していく必要がある。

 


*1 日本経済新聞 2018/9/26 17:35 
  https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35777420W8A920C1TJ3000/

/2018.01.13 JK

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