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記憶の井戸に潜る

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退職

退職

12年勤めた会社を辞めた。
昨日、最終出社日でお世話になった人に会いに行き、遠方にいる人にはメールでご挨拶。メールの宛先が500名を超えたときに関わった方の多さに驚く。(それでも後から抜け漏れがあったことに気付いて悔やまれる)

会社に退職を告げてからのこの2ヶ月、ずっとふわふわした感覚の中で生きていたように思う。記憶がないというよりも情報処理が追いついていない。

おかげで出社をもうしなくなると

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スベリ倒した

スベリ倒した

会社を年内で辞めることを部署のメンバーに告げる日。

課長に伝えてから2週間。課長からは他のメンバーにはまだ黙っとくようにとのお達しがあり、一応黙っていた。

そして迎えた今日。臨時会議で呼び出されて一言ご挨拶をすることに。

「実は…年内で辞めます」

ノーリアクション。

もうちょい待ってみよう。びっくりして声も出ないのではないだろうか。待ちますよ。そりゃ。

ノーリアクション。

この空気に

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本当に34歳だった

本当に34歳だった

10代の頃、僕は34歳で死ぬと思い込んでいた。
それは20代の頃、もっとリアルに感じていった。
そして30代になった。
もう数年しかない。そう思いながら4年が経過して、今年34歳になった。

34歳ってこんなものか。誰もが思うであろう「もっと大人になっているかと思った」という手垢のついたような言葉が、気を抜くと漏れてきそうだった。毎年恒例の健康診断では、大きな影響がある結果はなく、寿命はもうちょっ

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旧友

旧友

「明日謝るんやからその時まで言い合おう」とLINE画面に表示され、開始のゴングが鳴り響いた。そんなことを言い出したのは約1年ぶりに会った小学生の頃からの旧友。
まるでリセットボタンがあるかのように、勝手な設定を持ち出されたのだが、そんなことに合意しちゃいない。一方的に暴力的な言葉が乱れ飛んでくる。僕は打たれ強くない。心休ますために寝て覚めた今日も、まだ瘡蓋になっていないどころか血が流れている箇所も

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割れてしまったお皿はもとどおりにならない

割れてしまったお皿はもとどおりにならない

札幌に住んでいたことがある。たったの2年間だった。
振り返ってみればあまりに短かったけれども僕の人生では最も濃密だった時期。

当時の僕は27〜28歳。なんというか現役という表現が適切な年頃だと思う。

札幌のいいところは人との距離が近いところで、仕事都合で友達ゼロで引っ越した僕も、夏になる頃には職場以外での友達が7人くらいできた。「とりあえず飲みに行こう」と一緒にお酒さえ飲めば分かり合えるという

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