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このまま今の会社にいていいのか?


・・・と一度でも思った人は一度この本を手に取ったほうが良い。

今回は北野 唯我さん @KEN_ChiefEの著書『このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む転職の思考法』を読んで、たいへん勉強になったので、感想をまとめておく。

本書は20代後半で初めての転職に悩む若者を主人公としたストーリー仕立てになっており、自分の状況に近いこともあって共感しっぱなしで一気に読み終えた。

読む人の立場によってさまざまに刺さるところが随所にちりばめらえており、ぜひ多くの人に手を取ってもらいたい。

 サラリーマンも企業と同様に立地が大切(成長産業に身を置く)という話や自分にしかできない仕事などない(あなたがいなくても会社はまわっていく)、自分にラベルをつけるべき(自分の「売り」を強化していく)といった話などどれもとても興味深かった。

なかでも世の中にはTo do型の人間とBeing型の人間がいるという指摘が今の私には鋭く刺さった。 


・to do( コト) に重きをおく人間…… 何 をするのか、で 物事 を考える。明確な夢や目標を 持っ ている
・being(状態) に重きをおく人間…… どんな人でありたいか、 どんな状態でありたいかを重視する


北野さんがすごいのは、世の中の99%の人は「being型」の人間であり、それで何も問題がないと言い切っているところだ。 

明確な夢や目標を持てる「To do型」の人間はごくわずかなのにもかかわらず、世の中にはそうした人たちの成功哲学にあふれている。結果的に「心からやりたいこと」を探してさまよう人を大量生産してしまっている。

そう、29歳にもなって自分探しを続けるとnoteに公言して憚らない私のような人間を。

 では、私を含むbeing型の人はどうすれば満足して仕事が出来るのだろうか。

北野さんが提示する考えは大きく次の2つだ。北野さんが提示する考えは大きく次の2つ。

 1つはマーケットバリューを高めること。

そして、もう1つ大切なのが、自分への信頼。
自分を信頼するためには、仕事でつく小さなうそを最小化することが必要だという。 

「信頼とは、『 自分に嘘 をつかないこと』だ。 そして、being 型の人間にとって、自分への信頼を保つのは難しい。嘘をつかざるをえないとき、『やりたいことのためには手段を選ばない』 という言い訳 ができるto do 型の人間と違っ て、being 型は精神的に逃げ場がないからな。 いくら強くなっても、仕事で嘘をついている限り自分を好きにはなれない」

まるで自分のことを言い当てられたようで、 鼓動が早くなる。

・・・読んでいた私も「まるで自分のことを言い当てられたようで、 鼓動が早くな」った。

 あらためて自分の胸に手を当て、どんなときに「いまの仕事を辞めようか」という考えがちらつくかと思い浮かべると、大きく2つの方向性があると気づいた。

1つは、将来のキャリアを考えるとこのままの仕事で良いのか、という不安。

これは先に述べたマーケットバリューを高めるという解決策に対応する。(どのように高めていくのか、という点についてここでは記載しないが、気になる方は本書を購入して読んでほしい。)

もう1つは、目の前に仕事にやりがいを感じない時。単調な事務作業や資料作り、誰にでも出来る仕事をやらされていると思ったとき。

こうした状況に対して北野さんが示す考えは、「仕事の楽しさは緊張感と緩和のバランスがきめる」ということ。ゲームを例えにしてこう述べている。


「なぜなら、 弱い敵だけでは人間は、飽きを感じる。 一方で、強い敵ばかりでは、人間は疲弊してしまう。 そしてこの『緊張と緩和のバランス』こそが、すべてのおもしろさを決定づける。仕事も同じだ」

 だから、仕事をしていて良い緊張がない状態がしばらく続いているようであれば、いまより難しい業務に挑戦してみる。

それでも状況が改善しないのであれば環境を変える(=転職)を考えるべきだと進めている。 

ここまで読んでみて、これってまさにポジティブ心理学でいうフロー理論の実践編だなと思った。

以前に記事にも書いたことがあるが(シアワセは作れるのか?)、ポジティブ心理学においては、幸せな状態を”Well-being”と呼び、以下の要素で構成されるとしている。

ウェルビーイング(Well-being) 理論まとめ
P: ポジティブ感情 (Positive Emotion) =主観的な幸福感や人生の満足度
E: エンゲージメント (Engagement)
R: 関係性 (Relationship)
M: 意味・意義(Meaning)
A: 達成 (Achievement)
マーティン・セリグマン 『ポジティブ心理学の挑戦 "幸福から持続的幸福”へ』

北野さんが上で述べていることは、2つ目のEngagementにあたる。没頭とも訳され、いわゆるフロー体験(何かに夢中になり、没頭している状態)のことを指している。スポーツの世界では「ゾーン」とも呼ばれる。

一言でいえばフロー体験を得る(=何かに没頭する)ためには、本人に取って難しすぎず簡単すぎない物事に取り組む必要がある。

この点に関しては、仲山進也さんの著書『組織にいながら、自由に働く。』にわかりやすい図があるので引用させていただく。

このようにポジティブ心理学の枠組みで考えてみると、北野さんの言う「to do型」の人間というのは、Meaning(意味・意義)を非常に重視するタイプの人間といえるかもしれない。

しかし、多くの人(=being型)には、崇高な意味・意義(Meaning)だけではやっていけない。

この当たりの話は以前に「3人のレンガ職人」について書いたことに通じるけれど、多くの「being型」の人にとってもたしかに「意味」は大切だけれど、それ以外の要素(心地よさ、人とのつながりや達成感、自己の成長など)もなければ日々の仕事はやっていられない。

会社で働くという行為そのものは、ポジティブ心理学でいう幸福(Well-being)な状態を生み出すための5要素(=PERMA)をすべての満たす可能性を持っているが、現実にはすべてが満たされているというのはごく稀で、多くの人はどれかが欠けている。

だから、being型の人はいまの自分の働き方には何の要素が不足しているか、という視点で、いちど自分の働き方を振り返ってみるとよいかもしれない。

そのうえで、北野さんが言うように、自分が納得する商品を売ったり、いまの自分には少し難しいと思える仕事にチャレンジしていくことが日々の満足度を高める結果につながるのだと思う。

転職という行為は、Well-beingな状態に至る為に、足りない要素を補うための手段ともいえる。


北野さんがいう「自分にラベルをつけていく」というのも同じく、自分をより良いポジションに置き、よい経験や機会をつかむための手段だ。

(ちなみにこれは最近発刊されたふろむださん@fromdusktildawnが『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』で提示している「錯覚資産」というアイデアにも通づるものがあると感じた。)

だから、その手段は転職せずにいまの職場でも見つかるかもしれない。まずは自分が何を求めているかを知るのが先決だ。

これががこの本の最大のメッセージといえるだろう。

今回の北野さんの本を読んで、自分のキャリアを考え方に学びを得られた上に、ポジティブ心理学についてもより具体的に理解することもできて、一度で二度おいしい読書となった。
 
最後に私自身の話を少しすると、昨年は私の勤める会社の経営が大きく傾いたこともあり、同期や尊敬する先輩が何人も会社を去っていった。そんな中で私も「このままで良いのか」と思い、転職活動をしていた時期があった。 

実際に内定をもらい退職をする寸前までいったが、その頃に自分が希望していたプロジェクトにアサインされたこともあり、最終的には現職に留まることにした。

(いま振り返るとこれは北野さんの言う「転職後期に生まれる今お会社に残っても良いかもという迷い」そのものだったのかもしれないが)

はたして残るという判断が良かったのかという迷いが無いというとウソになるが、辞めるか・辞めないかという葛藤を経て、わたしは「残るという選択をしたからには、今の職場で最大限、自分の成長につながる経験をしよう」という考えに変わった。

その結果、いまは自己の成長に資すると思える業務に絞って仕事が出来ている。なので、現時点では悪くない判断だったとも思う。

とはいえ、今回この本を読んで改めて「自らのマーケットバリューを高めるにはどうすればよいか?」という視点を得ることができたので、これからも転職はオプションの一つとして常に頭に入れておきたい。

なお、先ほど引用した『組織にいながら、自由に働く。』や『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』にも共通した問題意識や考え方が示されており、この本に今日を持たれた方は併せて読むとより一層の理解が深まるのではないかと思う。

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