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シアワセは作れるのか?

「好きなことを大切にしよう」、「好きなことを仕事にしよう」といったフレーズを耳にするたびに、自分の「好きなこと」ってなんだろうか、と考えてしまう。

いま画面の向こうでW杯に出ているサッカー選手たちは、まさに好きなことを追求し夢を叶えた人たちだ。スポーツ選手や作家、ミュージシャン、アーティストといった、ある一つの道を究めた人たちをみると、憧れを覚えると同時に自分にはそこまで何かに打ち込む情熱や動機を持ちあわせていないことに悲しくなる。

ただ、そんな自分の人生を振り返ってみて、それなりに楽しく充実した生活を送れている、という実感もある。

「好きなこと」はいくつかあるが、どれもそこまで深く追求できていない。でも、それなりの満足感は得られている。この状況はどういうことだろうか、と考える。

一つの答えとして、「好きなこと」だけを追い求めなくても、満足や充実感を得ることは可能ということだ。

ポジティブ心理学という、心理学の一分野においては「幸福=Well Being=よく生きる」とはどういう状態を以下のように定義している。

ウェルビーイング(Well-being) 理論まとめ
P: ポジティブ感情 (Positive Emotion) =主観的な幸福感や人生の満足度
E: エンゲージメント (Engagement)
R: 関係性 (Relationship)
M: 意味・意義(Meaning)
A: 達成 (Achievement)
マーティン・セリグマン 『ポジティブ心理学の挑戦 "幸福から持続的幸福”へ』

アメリカ心理学会の元会長でポジティブ心理学の創始者でもある著者のセリグマンは、この5つの要素が高いほど人は良く生きる(=Well-Beingな状態)ことができる、という。

ここでまず面白いのが、ポジティブ感情(=主観的な幸福感や満足度)を理論の目的ではなく、構成要素の一つしている点だ。少しわかりづらいが、具体的なケースを考えると納得がいく。

例えば、仕事で本人は「やりたくない」と言いながらも、チームリーダーを任せられている人を想像してみてほしい。確かにその人の主観的な満足度(P)は低いかもしれないが、その他要素であるチームメンバーとの関係性(R)や仕事意味・意義(M)、達成感(A) などは得やすい立場にいるので、総じてその人の幸福度は高い、と言うことはあり得るのではないだろうか。

2つ目のEngagementとはいわゆるフロー体験(何かに夢中になり、没頭している状態)のことを指している。スポーツの世界では「ゾーン」とも呼ばれる。

例えば、一般的には「好きなもの」には挙げられることの少ないであろう雑用(書類の整理や掃除等)であっても、それに没頭することが出来る人はいる。そのときに彼/彼女はフロー体験を得ているといえる。

もちろん「好きなこと・もの」というのは、一般的にこれらの5つの要素を得やすい対象である可能性が高いだろう。でも、ここで覚えておきたいのは、別に本人が好きと思ってなくとも、充実感や満足度は得ることはできる、という点だ。

仮に目の前の仕事が個人的にはあまり好きに思えなくても(=Pが低い)、その他の要素(他者とのかかわりや何かに没頭する、意味や意義を見出す、何かを達成する)で幸福感を得ることはできるのだ。

「好きなこと・もの」が見つからないと幸福にはなれない、と悩んでいる私のような人は、まずは目の前にある仕事や自分の役割において、この5つの要素に目を向けてみるとよいのではないだろうか。

案外自分が幸福感を得られやすい状況に身を置いていたと気づき、結果的(主観的な満足度(P)も高まる、ということがあるはずだ。

反対に主観的な幸福感(P)ばかりに目を向けて、その他の要素が低い環境に身を置いていると、長期的には幸福感が下がってしまうということも考えられる。

こうして文章を書くことは、書いている最中には没頭できるし(E)、書き上げると達成感もある(A)、noteというプラットフォームにおいてその他のユーザーの方たちとの関係性(R)築くことが出来るし、この記事で幸福という言葉をとらえなおすことで、より充実した生活を送る一つの指針となれば、この記事を書いた意義もあった(M)といえる。なんてすばらしいことだろうか(P)。

そうなのだ、きっとシアワセは作れる。

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