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複雑な課題を捉えるのにシステム思考のループ図が役立つ件

※この記事はAmazonアソシエイトリンクを途中含んでいます。

企画で解決する問題が本当に本質を捉えているんだろうか。
この企画を進めることで他に影響は出ないのか。


企画職をやっている中でふとこのような疑問が生じることがあります。

例えば、売上目標が高いままに残業削減の数字だけを押し進めて表面上残業が減ったように見えても、
仕事は減っていないので裏で持ち帰りの仕事をする人が増えていたり、
その結果会社に対しての不満が溜まり、その結果、離職率が上がってしまう。
残業削減の数字だけ達成しても、他が悪化してしまい全体として悪くなるのであれば企画としていいものとは言えない気がします。

とはいえ、全体像や相互の関係性を捉えるのは難しい。

そんな悩みに対して、思考の整理に便利なのがシステム思考とそのツールであるループ図です。

今回は”システム思考”とループ図の書き方についての記事を書いてみようと思います。

ターゲット
全体像を捉えて課題を見つけたいと考えている方
システム思考とループ図の書き方を学びたい方

この記事でわかること
システム思考とループ図の書き方

想定読者

専用ブログの方も見やすいので気になる方はこちら

システム思考とは

システム思考は対象を一つの”システム”として捉えて、色んな視点からアプローチして解決の糸口を見つける考え方です。

システムの中にある”要素同士の関係性を図などで可視化する”ことで
要素同士のつながりを見ながら全体の構造を把握できるため、根本的な原因を発見しやすくなります。

ビジネスではピーター・センゲ氏の著書の『The Fifth Discipline』、和訳書籍だと『学習する組織――システム思考で未来を創造する』で記載されており、日本でも有名になりました。
学習する組織の書籍自体も面白いので興味がある方は是非読んでみてください!

ループ図とは

ループ図はシステム思考をする際に使われるツールの1つで、以下のイラストのようにシステム内の要素とその要素間の関係を可視化します。

ループ図

これは”なぜ友人とケンカが発生するのか”をループ図で可視化してみたものです。
”友人と過ごす時間”の部分を起点に考えると、以下の構造があることがわかります。

[左のループ]
友人と過ごす時間が増える → (お互いの理解が進み)友人との関係性が良くなる → (関係性が良くなると)より友人と過ごす時間が増える
[右のループ]
友人との関係性が近くなる → お互いの直してほしい部分も見つかってくる → 友人への不満が積み上がってくる → 友人との関係性にマイナスに働く

右のループで不満が積もっているのですが、ここに何かのきっかけでケンカの元が発生するとケンカになりやすくなることが予測できてきます。

ただ、ケンカのつながる友人の不満に対しては、相手への期待値があるのだとすると、相手も完璧ではないから期待値を下げれば不満の積もるペースも遅くなるので、構造を理解した上で”過度に相手に期待をかけない”が1つの解決策になることもわかります。

ループ図の説明

こういったように、何かが発生する構造をループ図として可視化することで、全体感を捉えやすくなり、
どこを調整すれば解決につながっていくのかを見つけやすくなります。

ループ図の書き方

それではこのループ図の書き方を見ていきたいと思います!

STEP1 テーマを設定する

ループ図を作成する際にはまずテーマを決めましょう。
正直これは今悩んでいることや携わっている企画のテーマでもなんでも良いと思います。
今回は”残業時間の削減の推進”を例に作成していこうと思います。

STEP2 要素を書き出す

テーマが決まったら、そのテーマに関連する要素を書き出してください。
スタートは思いつく範囲でも良いかなと思います。ループ図を書き出すと、そういえばあれも関係するなと
思い出すこともままあるので、その時はその際に要素を追加してみてください。
今回作成にはオンラインホワイトボードツールであるmiroを使用します。

残業時間削減の要素

ポイント1:要素同士は乱雑に置くと矢印が書きづらくなるため、できるだけ関連しそうな要素同士は固めて配置すると後の作業が楽になります!

ポイント2:要素は”名詞”で書いてください。
粒度もできれば合わせたほうがいいですが、初めのうちはバラバラでも大丈夫です。

STEP3 要素同士の関係を矢印でつなぐ

要素の洗い出しと配置ができたら、今度は要素の作用する流れを矢印でつなぎましょう。
矢印でつなぐ際に足りていない要素を足したり、配置を変えても大丈夫です。(今回足りな方要素は明るいオレンジで色を変えました。)

要素を矢印で繋ぐ

STEP4 要素同士の関係性を”+”や”–”で表現する

矢印が書けたら、次に矢印でつないだ要素同士の関係性を”+”や”ー”で表現します。どの場合に+でどの場合にーなのかですが、

片方の要素が増えればもう片方の要素も増える関係性(正の相関)であれば”+”(片方が減ればもう片方も減る場合も+)

片方の要素が増えればもう片方の要素は減る関係性(負の相関)であれば”ー”(片方が減ればもう片方が増える場合もー)

となります。イメージ図でいくとこんな感じです。

+ーの相関関係の説明

先ほどのmiroで貼った要素同士の矢印で+ーをつけると以下の写真のようになります。

関係性を追加

[解説]
ー左上
・残業時間の削減の推進を強める → 残業時間の平均値は減少すると考えられるので負の相関(ー)
・残業時間の平均値は減少する → 残業に支払われる賃金も減るので正の相関(+)
・残業に支払われる賃金も減る、つまり人件費が減る → コストは浮くので経営への印象は良くなる可能性があるので負の相関(ー)

ー左下
・残業時間の平均値は減少する → 外部からの働き方の見え方は良くなるので負の相関(ー)
・外部からの働き方の見え方が良くなる → 候補者が応募してくれる確率が上がるので正の相関(+)
・応募確率が上がる → 採用ノルマは達成しやすくなるので正の相関(達成しやすくなるを良と考えている)(+)
・採用ノルマが達成しやすくなる → 採用コストが下がるので負の相関(ー)

ー右上
・残業時間の削減の推進を強める → サービス残業の量が増える可能性があるので正の相関(+)
・サービス残業の量が増える → 従業員の不満が増えるので正の相関(+)
・従業員の不満が増える → 離職可能性が上がる(離職率が増える)ので正の相関(+)
・離職率が増える → 残った社員の負担が増えるので正の相関(+)
・社員の負担が増える → サービス残業の量が増えるので正の相関(+)

ー右下
・離職率が増える → 採用コストが増えるので正の相関(+)

あれ!? 採用コスト打ち消しあっている!?

ループ図の解説

+α 相対的な時間の”遅れ”があれば表現する

ここまででループ図の作成はほぼできています。
残りは時間的な概念である”遅れ”をループ図に足します。

ループ図にはものによっては複数のループができてくることが多いです。
ただ、各ループが同じスピードで回ってくれることはなく、大概のケースがどれかのループが他のループよりも時間的に遅れてきます。

そしてこれが短期的には効果があるが、だんだんとうまくいかなくなってくる事象を表してくれます。

例えば、今回テーマにした残業時間の削減の推進ですが、初めのうちは強く押し進めることで残業の平均値を下げることができるケースも多いので改善したように見えます。
しかし、根本的な業務改善などを実施して業務量を調整しない場合、推進だけを進めていくと従業員の負担が増えていき、だんだんと不満が積もって遅れて離職ラッシュなどが発生してくる可能性があります。

このようにある面だけのループを見ると短期的にはうまくいくのですが、他のループが時間差で回ることでうまくいかなくなってくるケースがあります。

この時、各ループのスピードが同じでないことを図で表すことで後からどんな影響が発生するのかを捉えることができます。

表現の仕方は簡単で以下のイラストのように相対的に時間の流れが遅いループの矢印に” // ” を挟みます。

遅れを表現する

今回作成したループ図だと離職の部分や応募の部分が残業削減数値として現れるよりも時間的に遅れる可能性があるので以下のように表現できます。

遅れを追加

ループ図のメリット

ここまでループ図を書いてみましたが、こういったループ図を描くことで全体を俯瞰して捉えることができるかと思います。
そして全体像を捉えることで以下のメリットが生まれてきます。

  • どの部分を改善しないといけないかが捉えやすくなる

  • 施策を進める上で配慮していかなければならないことが見えてくる

例えば、今回テーマとした残業時間の削減ですが、残業時間の数字だけの削減をみるとうまくいくように見えてしまいます。
しかし、他の要素との関係性を俯瞰してみると離職を増やすリスクやそれにより採用コストが増える可能性も見えてきます。

また、サービス残業をうまないために業務量の調整を行う必要性も見えてきました。

こういったように全体としてどうなるのかを把握する、どこを改善しないといけないかを把握する上でループ図は強い味方になってくれます。

正直、複雑性が増してきている社会で企画職やマーケティング職が使わない手はないなという感じです。

自己強化ループとバランス型ループ

ここからは発展的な内容になります!

ループ図を書いていく中で、
”このループが回るとどんどん良くなるな”といった感覚や
”結局回り回って調整されそうだ”といった感覚を覚えた方もいるかもしれません。

ループ図のループには2つの種類があります。
それが”自己強化ループ”と”バランス型ループ”です。

自己強化ループは以下のようなループでループが回れば回るほど状況が良くなって(あるいは悪くなって)いきます。
俗に正のスパイラルが起きているといった場合はこのループがあるかもしれません。

自己強化ループ

もう一方のバランス型ループは以下のようなループで、ループ内でフィードバックが生じ、要素同士で増えすぎない(あるいは減りすぎない)ように調整機能が働いています。
(イラストだと服を着ると体温が上がるが、ちょうどいい温度との差が縮まり、暑くなるときている服を脱ぐといった事象に対して書いてみてます。)

バランス型ループ

この自己強化ループかバランス型ループかを見分けるためには”ーの数”をみます。

”ーの数”が偶数であれば自己強化ループに可能性が高く、
”ーの数”が奇数であればバランス型ループの可能性が高くなります。

ちなみに自己強化ループである場合はループ内に”R”をかき、バランス型ループの場合はループの中に”B”と描くケースがあります。

成長の限界と問題のすり替わり

最後にループ図を描いていくとよく出会う2つの構造を見ていこうと思います。(学習する組織の書籍内でも紹介されています)

成長の限界

1つ名は成長の限界と呼ばれる構造です。
構造としては、初めは自己強化ループにより成功の好循環を生み出しているが、遅れてバランス型のループが発生し、自己強化ループが抑制されるような構造をとっています。

成長の限界の構造

イラストでいくと以下の現象が生じます。

[自己強化ループ]
企業が成長すると社内での昇進の機会が増え、従業員のやる気が高まる。
従業員が頑張ってくれ、売り上げが上がると、投資もできるのでより企業は成長できる。

[バランス型ループ]
企業が成長すると市場のシェアを占めていく。
ただし、市場規模の制約や他の企業のシェアもあるので段々と市場が飽和し、企業の成長スピードが弱くなっていく。

自己強化ループの説明

こういった、自己強化とバランス型のループがあることで、いつまでも成長することができず、段々と成長のスピードが弱まっていくといった現象が生じます。
(初めは勢いがあったベンチャーが大手企業化することで当初の成長スピードではなくなるといったのもこのような原理があるのだと思います)

問題のすりかえ

2つ目が問題のすりかえです。
これは解決のためにとった行動の副作用が根本的な解決を先延ばしてしまう場合に見られる構造です。

問題のすりかえの構造

イラストでいくと以下の現象が生じます。

[2つのバランス型ループにおいて]
経営課題があり、コンサルタントへの依頼をどんどんしていくと確かに経営の課題は減る可能性がある。
一方、経営課題があればあるほど、経営陣がそれを対処すれば経営陣の能力は成長する(ただし、こちらは経験値の差によりコンサルよりも遅いと考えてみる)。

[コンサルへの依頼からのびる自己強化ループ]
会社として経営能力が育つことは重要なので本来は経営陣が自分達で解決し、能力を開発していくことが
中長期的に会社の経営を安定させていくのに重要なことと捉えられる。
しかし、短期的にはコンサルに依頼することが解決にあたっては早いことが多いのでコンサルへの依頼が増える。
しかし、コンサルに依頼すればするほど、自分達の能力は開発されないので、また問題が生じればコンサルに依頼する可能性が高まるため、根本的な経営の能力が育たなくなってくる
(そしてこのループを抜け出しづらくなる)

問題のすりかえの説明

あくまでも想定として例を書いていますが、このようにある対処法をとると根本的な課題解決を阻害してしまい、対処療法の方に行ってしまう構造が問題のすりかえと呼ばれています。

成長の限界と合わせてループ図を描いてみることでこれらの構造が見えるため、全体の構造を踏まえた上でどこを対処するのかを見つけることが重要になってきますね。

まとめ

今回は、システム思考とそのツールであるループ図に関してまとめました。
複雑な要素が絡み合った課題を解決する必要が迫られている現代において、ループ図は欠かせないものとなっていくような気がしています。

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