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【社内報の作り方】アウトソーシング③

 さて、各社の案が出そろいました。ここからどう選べばよいのでしょう。今回は、採用案の選定基準をご紹介します。

抑えるべき3つのポイント

 選定基準は、大きく分けると3つです。
①予算
②クオリティ
③体制
 まずはこの3つについて、それぞれ見ていきます。

本当に予算内か?オプションを見極める

 例えば1号当たりの見積提示が200万円だったとします。この時確認したいのが、提案書の内容のすべてがこの通りかということです。競合プレゼンテーションの場合、クライアントからの提示予算内で提案を作ると、どうしても制約があり、他社との競争に勝ち抜けないのではないかと頭をもたげるケースがあります。この時、オプション提案として、予算外の提案を企画書に盛り込むことが多いです。これ自体は悪いことではなく、企画書内にも別料金であることが謳われています。しかし、プレゼンを受けた側としては、その内容に魅力を感じがちですし(予算外なので当然魅力的)、うっかり追加料金であることを忘れがちです。また企画書に書かれていない魅力的な口頭提案も、見積内か、見積外か、見極める必要があります。あとでもめることも少なくないので、ここは発注を決めるまでにしっかり話し合い、確認するようにしましょう。
 また妙に予算が安いものは、何かあると思って間違いないです。それはたいていの場合、人手のかけ方が違うと思ってよいでしょう。つまり、この場合の予算は、ほぼ人件費です。安い=人の時間を費やさない、つまりは片手間で制作する可能性が高いということです。発注側のスタッフが少なく、手厚く対応してほしいという思いがあるなら、この点も要チェックポイントです。

クオリティは、説得力で見る

 社内報のコンペで見るべきクオリティは2点、企画力と、デザイン力です。企画力は、発想の面白さも大切ですが、理にかなっているかどうかが最も重要です。あなたが上司に上申し、なぜこの提案が良いのかを語るうえで、理屈にかなっている企画であれば、上司を説得しやすいですし、クリエイターが良く考えた証左でもあります。会社の経営方針を理解しているか、筋が通っているかなど、感性だけに頼らず、ここはロジカルに判断しましょう。注意点は、企画実現性です。いくら良い企画でも、実現性がない企画を立てるクリエイターは、今後もずっと実現性のないアイデアを出しがちで、実現性を加味すると急に普通以下になるという性質があります。実現性の担保も重要ですので、ここもロジカルに検証しましょう。
 一方デザインですが、これは感性で決めてよい部分です。ただし社内報におけるチェックのポイントは、いくつかあります。まずは導線です。読む順番通りに見出し、本文、キャプションが配置されているかどうか。案外、ポスターやチラシが主戦場のデザイナーはエディトリアルデザインが分かっていなかったりします。もう1点は、読みやすさです。文字の大きさ、字間、行間の見やすさ。このあたりは提案後にリクエストを出して修正できますが、そもそもそこに配慮しているデザイナーのほうが、今後もスムーズです。

長期プロジェクトは、誰が担当するかが大事

 社内報のアウトソーシング先は、知識の蓄積の観点から、あまり頻繁に切り替えないのが一般的です。それだけに長期のお付き合いになるので、担当するクリエイターがどういう人で、どんな体制で、どんな実績があるのかをしっかり確認しましょう。前述のとおり、予算が安い会社は、ここを削っているケースがほとんどです。人数は多いけれど、携わる時間はそれぞれちょっととか。勘違いしがちなのは、プレゼンテーションで話した人が担当してくれるとは限らないこと。話が上手な人、上司、責任者がプレゼンテーターになりがちで、実務メンバーでないことの方が多いくらいです。スケジュール、進行管理、指示命令系統、このあたりのことが企画書に記載がない場合、必ず質問して解決しましょう。

コンペの弊害

 ここまでコンペの話をしてきましたが、提案する制作会社は他社との競争の中で、背伸びしたり、自分を大きく見えたりしがちです。ここに惑わされて業者選定を失敗するケースは少なくありません。コンペの弊害です。今回の記事にある選定基準は、いわば虚像の見極めポイントです。慌てて発注せず、よく検討してから選ぶようにしましょう。

今回の一冊

SWITCH Vol.35 No.7 MET EXHIBITS STORIES Rei Kawakubo / Comme des Garcons 川久保玲の意志 メトロポリタン祝祭

 敬愛する川久保玲さんのクリエーションが満載のメットガラを特集した号はマスターピース。コムデギャルソンがいかに誠実に服を作ってきたかが分かります。「ジーンズ1本が何百円なんてありえない。どこかの工程で誰かが泣いているかもしれないのに、安い服を着ていていいのか。いい物には人の手も時間も努力も必要だからどうしても高くなる。いい物は高いという価値観も残って欲しい」。いつも心の中にある言葉で、励みになります。

社内報の作り方|創刊編 各記事はこちら

VOL.01 発行目的を決めよう
VOL.02 コンセプトって、どう決めるの?
VOL.03 媒体を考える
VOL.04 ルールを決める編集方針
VOL.05 デザインを決めよう
VOL.06 経営計画盛り込めていますか?
VOL.07 ページネーションを決めよう
VOL.08 コーナー企画は数が命?
VOL.09 協力者はいますか?
VOL.10 アウトソーシング①
VOL.11 アウトソーシング②
VOL.12 アウトソーシング③
最終回 誰が決めるの問題

Connecting the Booksは、これまで培ってきたクリエイティブディレクター、コピーライター、編集者としてのノウハウを公開するとともに、そのバックグラウンドである「本」のレビューを同時に行うという新たな試みです。