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【社内報の作り方】アウトソーシング②

 社内報の協力会社の決め方の第2弾。前回は、発注前の与件整理について紹介しましたが、今回はその与件を基にしたコンペ開催方法について紹介します。社内報以外にも当てはまる、具体的なノウハウですので、特に制作物の発注担当者は必見です。

コンペまでの流れ

 まずはざっくりと流れを説明します。

【コンペ開催までの流れ】
 ①スケジューリング(創刊希望日から以下を逆算)
 ②与件の整理→オリエンシートの作成
 ③参加企業へのオリエンのご案内
 ④オリエンの実施
  (1か月程度)
 ⑤コンペ開催(各社からのプレゼンテーション)
  (1~2週間程度)
 ⑥選定・決定
 ⑦決定通知・発注
 ⑧初回打ち合わせ(企画内容のフィードバック)
 ⑨実制作(創刊まで、3~6か月程度)
 ※4月1日創刊であれば、10月中には発注先を決めておきたいです。

オリエンシートを作成する

 参加企業を探す作業と同時並行で行うのが、オリエンシートの作成です。オリエンシートとは、コンペ参加企業にどういったお願いをするのか、与件を整理したものと考えればよいでしょう。このオリエンシートは2つの構成要素から成り立っています。

 1つ目は、業務委託範囲の提示です。編集からなのか、デザインだけなのか。ここで明示するようにしましょう。またオリエン日、コンペ開催日(プレゼン日)、納期などスケジュール感も伝えましょう。予算は明記しなくても良いですが、上限がある場合は、記載したほうがクリエイターは作りやすいです。そうしないと、1000万円の提案と、100万円の提案が混在し、結局何を基準に選べばよいか、分からなくなります。

 2つ目は、クリエイティブの方向性の提示です。ここで難しいのは、細かなことを規定しすぎないということです。クリエイターは、ある程度自由に考えることで力を発揮します。「最低Q数は何級で、書体はこれとこれで、1ページ当たりの文章量は何文字で、キーカラーはこれで…」などと制作に少し詳しい方はこういったことを決めたがりがちですが、絶対にやめましょう。考えてもらう作業も、アウトソーシングすべきです。

キーワードで想像力を膨らませる

 とはいっても、ご自由に提案どうぞ!では、期待している案が出てこない可能性もあります。前述のとおり、細かく規定したほうが、出てくる案のクオリティがコントロールできるのでそうするのでしょうが、絶対に想像の域を超えることはありません。そこでお勧めなのが「キーワード」の設定です。「とにかく明るく!」「元気よく」「知的」「トップランナーとしてのプライドを感じさせる」「フレンドリー」といったイメージワードでよいです。クリエイターはこうしたキーワードから想像を膨らませ、提案の構築ができますし、それができない会社とは、お付き合いしなくてよいでしょう。

参加企業への声がけ

 オリエン内容が固まれば、広告宣伝部、総務部、または出入りの印刷会社に声をかけ、コンペに参加してくれそうな制作会社を紹介してもらいます。各部署にお願いするにあたっても、前述のオリエンシートの存在が便利で話が通りやすいです。後ほど述べますが、3社から多くて5社くらいが理想です。

オリエンテーションの実施

 オリエンテーションとは、コンペ開催前の説明会です。参加企業に集まってもらって、一気に行うのが「合同オリエン」と、1社ずつ面談する「個別オリエン」とがあります。時間の節約の観点からすると、合同オリエンが望ましく、公平感も担保できます。個別オリエンは、思いが伝わりやすいですが、時間がかかり、各社に微妙に違うことを伝えがちです。どの会社も初取引なら、合同オリエンが良いでしょう。実施にあたっては、オリエンシートを事前に送付し、日時指定したうえで、参加する企業は必ず来てくださいと伝えればよいです。当日はオリエンシートの説明と補足、質疑応答を1時間程度で行うのが一般的です。

コンペの開催

 オリエンからコンペ開催は、社内報の場合1か月程度あったほうが良いです。最近は1、2週間で実施する企業もありますが、売れっ子クリエイターは、さすがに2週間先くらいまでは予定が埋まっており、急に言われてもなかなか手を空けられません。とはいっても不必要に長いと、その間に諜報戦があったり、政治が働いたりします。やはり1か月くらいが目安でしょう。但し、オリエン前に、コンペ開催日を予告しておけば、オリエン後2週間でも準備は可能です。
 コンペは1社 1時間の持ち時間で、会議室は質疑応答と休憩を考え、余裕をもって2時間予約しておきましょう。3社であれば、1日かければできますが、5社以上になると、2日以上、話を聞くだけでかかります。それを先行する労力はすさまじく、こうしたことを考えると3社から5社がベストです。※先般31社競合を経験しましたが、じっくり検討している様子はありませんでした…。

 なお、コンペの費用を参加各社に支払うかどうかについて、支払わないケースが圧倒的に多い気がします。行政のプロポーザル方式での入札では、絶対に支払いはありません。支払う場合は、取引先との関係性をどう見るかだけだと思います。これは確信を持って言えますが、フィーを支払ったからと言って、良い案が生まれるわけではありません。

 さて、ではどの会社の案を採用すべきか。これについては次回改めて紹介します。

今回の一冊

小田桐昭、岡康道著
CM

 電通のレジェンド2人の対談集。中でも忘れられないのが、博報堂との競合プレゼン時のエピソードです。小田桐さんはプレゼン提案時にクライアントへ「うちのスタッフは忙しいので、提案した全部を発注しないでください」と提案の場で、仕事を断るという暴挙に。結果、全アイテムを受注することになるという伝説に触れた2人のやりとりは、今でもプレゼンのたびに思い出します。
 仕事は忙しい人に頼め。まさにそういうことなのでしょうが、そんな根性は、さすがにありません。昭和のクリエイターの凄さでしょうか。若手クリエイター諸君は、くれぐれもマネしないように。

社内報の作り方|創刊編 各記事はこちら

VOL.01 発行目的を決めよう
VOL.02 コンセプトって、どう決めるの?
VOL.03 媒体を考える
VOL.04 ルールを決める編集方針
VOL.05 デザインを決めよう
VOL.06 経営計画盛り込めていますか?
VOL.07 ページネーションを決めよう
VOL.08 コーナー企画は数が命?
VOL.09 協力者はいますか?
VOL.10 アウトソーシング①
VOL.11 アウトソーシング②
VOL.12 アウトソーシング③
最終回 誰が決めるの問題

Connecting the Booksは、これまで培ってきたクリエイティブディレクター、コピーライター、編集者としてのノウハウを公開するとともに、そのバックグラウンドである「本」のレビューを同時に行うという新たな試みです。