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【社内報の作り方】デザインを決めよう

 社内報担当者が一番頭を悩ますのがデザインです。何が正解なのか、良し悪しとは何か。こだわっているのか、迷っているだけなのか…。ここでは紙媒体を前提にノンデザイナーが抑えるべき創刊時のポイントを紹介します。

読みやすくが大前提

 社内報のデザインは、エディトリアルデザインという領域に分類されます。雑誌や新聞、書籍がこれです。文章の読みやすさを第一に考えており、パンフレットや広告のように、変化に富んだものではありません。
 まず最初に決めるべきは、開きです。国語の教科書のように右手側にページをめくっていくものが右開き、算数の教科書のように左手側にページを開くものを左開きと呼びます。雑誌は日本語の基本である縦書きを大切にしているため右開きが多く、カタログやパンフレットは金額、カタカナ、アルファベットが多いたも左開きが多いです。社内報の場合、どちらが良いでしょう。次のような制約があれば左開きです。

・英文併記が必要
・多言語展開が必要
・社名がアルファベット

 逆にそうでなければ、どちらでも良いですが、個人的には右開きをオススメします。なぜなら、サンプルが多いから。日本の雑誌のほとんどが右開きで、デザインアイデアに困ることがありません。

フォーマットを決める

 次に決めるのがフォーマットです。これはデザイナーからの提案を求めるしかありませんが、この際チェックすべきは本文書体、その大きさ、一段あたりの文字数、1ページあたりの最大文字量です。

書体を決める
 まず書体。明朝体かゴシック体かは、正直好き嫌いです。ここは直感で決めて良いでしょう。しかしユニバーサルフォントの提案を受けたら断りましょう。ユニバーサルフォントは、スペックなどには有効ですが、長文には向いていません。読みにくさが出ますのでやめましょう。

老眼でも読める大きさ
 次に大きさ。これは50代以上の社員に意見を求めましょう。老眼になると、小さい文字は苦痛でしかありません。かつて新聞は15段で組まれていましたが、今は11段です。つまりそれだけ文字を大きくしたということです。文字の大きさは読みやすさに直結するので必ず検証しましょう。

一息で読める長さ
 一段あたりの文字数ですが、14文字以上25文字以内が基準です。これは人間が一息で読む文字数から来ています。人は黙読でも声帯が動きます。喉を痛めた入院患者は読者を禁止されるそうですが、それはこうした理由からです。

周りの余白が大事
 最後は文字量です。a4なら1600くらいが基準です。ここから極端に離れたものは使いにくいでしょう。出来上がったフォーマットを見て、文字が多いと感じたら、余白の取り方を検討しましょう。上下左右の余白がなく、誌面いっぱいに本文があると、たとえ同じ文字数でも多く見えます。逆に余白があれば少なく見えます。フォーマットの時点でこのあたりはしっかり検証しましょう。

表紙のコンセプトを決める

 もう一つ大事なのが表紙です。簡単に写真かイラストか混在か。一枚絵か組写真か。手法としてはこの中から選びます。ちなみにイラストは好き嫌いが分かれるので、写真を選ぶ会社が多いです。また、テーマですが、表紙だけで独立した企画にするか、中の記事、例えば特集連動にするか、ほぼこの2択です。

アートディレクターを決める

 エディトリアルフォーマットと表紙が上記の考え方で検証できれば、後は応用です。このとき大切なのはセンス。しかし社内報担当者の皆さんは、デザイナーではありません。そこで大切になるのがアートディレクターの存在です。アートディレクターとはデザインの責任者です。制作会社にリクエストし、必ず立ててもらいましょう。そして、デザイン面はこのアートディレクターと話すようにしましょう。

 デザインは、大抵アウトソーシングです。感覚的な話も多く、そのため悩みも多いでしょう。今回は立ち上げ時のポイントを紹介しました。また別の機会に、デザインのアウトソーシングの仕方、チェックの仕方を紹介します。

今回の一冊

佐藤卓著
クジラは潮を吹いていた

 私の敬愛するグラフィックデザイナーの一人佐藤卓さんの、仕事とその哲学が詰め込まれた一冊。その圧倒的な仕事量、生活密着度からはまさに国民的デザイナーと呼ぶにふさわしいでしょう。印象的なのはゼナのデザインに関するエピソード。まんまとしてやられたと悔しくもあり、またこういうことを考えるのかと感服しました。明治おいしい牛乳も然り。本のタイトルの意味も読めば納得、デザインが好きになれる一冊です。

社内報の作り方|創刊編 各記事はこちら

VOL.01 発行目的を決めよう
VOL.02 コンセプトって、どう決めるの?
VOL.03 媒体を考える
VOL.04 ルールを決める編集方針
VOL.05 デザインを決めよう
VOL.06 経営計画盛り込めていますか?
VOL.07 ページネーションを決めよう
VOL.08 コーナー企画は数が命?
VOL.09 協力者はいますか?
VOL.10 アウトソーシング①
VOL.11 アウトソーシング②
VOL.12 アウトソーシング③
最終回 誰が決めるの問題

Connecting the Booksは、これまで培ってきたクリエイティブディレクター、コピーライター、編集者としてのノウハウを公開するとともに、そのバックグラウンドである「本」のレビューを同時に行うという新たな試みです。