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日本の国家安全保障90年代

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2022年3月の記事一覧

日本の国家安全保障90年代 10

日本の国家安全保障90年代 10

各師団の戦車部隊は61式戦車が主流であったが、1974年度に制式化された74式戦車が第7師団から優先的に配備されていった。

1960年代から採用が始まった第2世代戦車の最後発で、最後発の強みを生かし信頼性の確立されたイギリス・ヴィッカーズL7 105mmライフル砲を装備し、40mmAP弾対応の装甲と、レーザー測距儀(距離測定装置)、アクティヴ赤外線暗視装置・赤外線投光器などセンサー類も最新のもの

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日本の国家安全保障90年代 9

普通科部隊および後方支援部隊などの移動手段も確立されていった。

普通科、歩兵の文字にふさわしく歩くことが主であった普通科部隊が自動車化されていった。

三菱自動車工業73式小型トラック、

トヨタ自動車73式中型トラック、

いすゞ自動車73式大型トラック、

三菱自動車工業74式特大型トラック

と急速に普通科部隊の移動手段が高速化していった。

しかし、アメリカ、ヨーロッパなどの西側諸国の歩

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日本の国家安全保障90年代 1

1987年、就職情報誌「リクルート」、転職情報誌「とらばーゆ」などを発行する出版社リクルート社の関連不動産子会社リクルート・コスモス社未上場株式譲渡をめぐる政治疑獄は政治資金問題に発展し、政治資金問題だけにとどまらず大政治問題となった。

多額の政治資金を必要とする選挙制度、中選挙区制(1選挙区から多数の被選挙人を選ぶ)に問題があるという議論になり、新たなる選挙制度を模索する事態に至った。

自由

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日本の国家安全保障90年代 2

こうして非自民連立政権は誕生した。

内閣総理大臣は「政治改革」の顔で、細川ガラシャの子孫、近衛文麿の孫という「政界のプリンス」として世論、マス・メディアにおいて人気の高かった細川護煕氏となった。側近の官房長官には新党さきがけ党首の武村正義氏が就任した。

 細川政権は政治改革、特に選挙制度改革を目的に結集した連立政権であった。

 連立政権与党第一党の社会党(議席数70)と野党第一党・自民党(議

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日本の国家安全保障90年代 3

 また、細川首相は1976年(昭和51年)に策定された防衛計画の大綱を新たなものに改訂しようと画策した。

 そのために設置されたのが細川首相の私的機関である防衛問題懇談会である。

 防衛問題懇談会は防衛には素人のアサヒビール会長の樋口廣太郎氏を座長に、政治評論をする秩父セメント会長の諸井文氏を座長代理に任命し、

 委員はリベラル派の青山学院大学教授の渡辺昭夫氏、反軍・軍縮・平和、融和妥協外交

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日本の国家安全保障90年代 4

審議は1994年2月28日に第一回会合を開き、1994年8月12日に報告書を完成させた。

報告書は、

多角的な安全保障協力をメインに、日米安全保障協力関係の機能充実、信頼性の高い効率的な防衛力の維持と運用など、ありきたりな提言している。

その具体的な内容は

自衛隊コンパクト化という情勢判断を見誤った提言、

ごくありふれて当然である機動力向上、海上交通輸送路の防衛、テロ、弾道ミサイル防衛、

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日本の国家安全保障90年代 5

1976年 旧・防衛計画の大綱の成立の背景

 1976年(昭和51年)に制定された防衛計画の大綱は

「わが国が保有すべき防衛力としては、安定化のための努力が続けられている国際情勢及びわが国周辺の国際政治構造並びに国内諸情勢が、当分の間、大きく変化しないという前提に立てば、防衛上必要な各種の機能を備え、後方支援体制を含めてその組織及び配備において均衡の取れた態勢を保有することを主眼とし、これをも

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日本の国家安全保障90年代 6

特に三木武夫首相は、田中角栄政権のロッキード事件など各種疑獄事件によってイメージの悪化した自民党において、

「クリーン三木」

をスローガンに総理・総裁となった人物であった。

そのため、「クリーン」なイメージの政策を打ち出す必要があり、「クリーン」なイメージではないと考えられた防衛関係の政策には無関心、消極的で、「クリーン」に相応しい、軍縮イメージを打ち出そうとしていた。

それが防衛予算のG

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日本の国家安全保障90年代 7

1976年 旧・防衛計画の大綱における防衛力 陸上自衛隊

陸上防衛力として、陸上自衛隊の編成定数は18万人とされた。

基幹部隊としては、平時地域配備する部隊に13個師団と2個混成団が置かれることとなった。これは普通科(歩兵)を基幹とする地域防衛部隊である。

甲師団は約9000人を定員に、普通科連隊を4個連隊配備し、特科連隊(砲兵)、後方支援連隊(兵站)、戦車大隊、施設大隊(工兵)、通信大隊、

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日本の国家安全保障90年代 8

装備は、普通科部隊にはアメリカ軍供与のM1カービン、M1ガーランド・ライフル、M3グリース・ガン短機関銃、M1919軽機関銃、M1918ブローニング・オートマティック・ライフル(BAR、自動火器)などが数多く残っていたが、1960年代に入り、徐々に近代化が始まった。

豊和工業64式7,62mm×51口径小銃、住友重機械工業62式7,62mm×51口径機関銃の配備が非常にゆっくりと進んだ。

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