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#27 ミステリーについての愛を語る

 当記事では、ミステリー小説作品に的を絞り、その楽しみ方と愛についてつらつらと書いております。中盤ではわたしの個人的に好きな作品の数々をご紹介しています。ああ何かミステリー読みたいな、と思っている方ぜひ参考にしていただけると嬉しいです。(4,286字)

 思えばわたしが小学生のころ、世間はホラーブームと並んでミステリーブームが巻き起こっていました。奇しくも少年マガジンでは金田一少年の事件簿、少年サンデーでは名探偵コナンが産声を上げ、二大ミステリー漫画が世の中の衆目をかっさらっていったのです。

 当時家族も漫画を読むことに夢中だったらしく、家にはどちらの本もご丁寧に1巻から並べられていて、わたしたち兄妹はむさぼるように読みました。最近金田一少年の事件簿はまたリバイバルでドラマ化されたようですが、今も昔もわたしは堂本剛さんとともさかりえさん、故人の古尾谷雅人さんの初代バージョンが忘れられないのです。

 どちらかというと、金田一少年の事件簿はホラー性も帯びていた気がします。だいたい毎回どろどろとした過去や経験をもった犯人が出てきて、胸が圧迫されたような痛みを伴いながらも、不思議と高揚している自分がいました。それはあくまで、フィクションの世界だと割り切っていたからかもしれません。日常から切り離し難い刺激物でした。

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 その後もなんだかんだ、ミステリー作品を漁っていた気がします。小学生のころ印象深かったのは、二大巨頭漫画以外だとはやみねかおるさんの夢水清志郎の事件簿シリーズ。容疑者が登場して様々な紆余曲折があって、それじゃあ犯人は誰なんだ!と考える時間が好きでした。だいたい7割くらいは間違ってたな。

 取りも直さず、文藝春秋が10年ほど前に出版した東西ミステリーベスト100を購入し、今まさにわたし個人的にミステリーブームが勝手に再燃しつつあります。これを読めば、貴方もミステリーマニアの仲間入りかもしれません。これから少しずつ、紹介されている本を読んでいくつもりです。

 さて長々と書いてしまいましたが、以下よりわたし自身が考えるミステリーの楽しみ方とおすすめの本をご紹介します。

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ミステリーの楽しみ方

ポイント①:3つの視点で紐解く

 ミステリーを紐解いていったときに大別すると3つの視点があるといわれています。それぞれどのような系統の作品なのかを頭に入れておくと、その先の展開もより楽しめることでしょう。

・フーダニット (Who had done it)  
 … 犯人は誰か?
・ハウダニット (How done it)    
 … どのように犯行を行ったか?
・ホワイダニット(Why done it)  
 … なぜ犯行に至ったか?

ポイント②:視覚化して整理する

 ミステリーに秘められた謎を解きたいなと思った時には、時間があれば人物表を整理して、互いの関係性を視覚化するようにしています。またミステリーは物語が進むにつれて複雑になっていくので、時系列的にどんなことが起こったかも残しておくと、ページを捲る手が止まらなくなること請け負いです。

『ロング・グッドバイ』レイモンド・チャンドラーより

ポイント③:人生の節目で読み直す

 良質なミステリー作品というのは、だいたい一度読むだけだと勿体無いなぁと思っています。人生の節目節目で読み直すことにより、かつての記憶を呼び覚ますと共に、随所に細かく散りばめられた推理のかけらを見つめ直すきっかけとなります。

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おすすめのミステリー作品

 次に、以降はわたしが読んだ数ある作品の中でも、忘れられない作品の数々をご紹介してまいります。見直してみると、割と日本小説の方が多いですね。10作品くらいに収めようとしたのですが、書いているうちに「あ、これも印象深いな!」と色々浮かんできて最終的に12作品のご紹介となりました。

■ロング・グッドバイ:レイモンド・チャンドラー

 ハードボイルド小説の金字塔とも称される作品。私立探偵マーロウがある時出会ったのは、大富豪の娘を妻にもつテリー。彼の妻が、ある時殺される事件が起き、テリーは同時期に姿をくらまします。犯人は一体誰か、なぜ殺されたのか?名台詞も随所に散りばめられていて、何度も読み直したくなる作品です。

※マーロウと聞くと、思い浮かべるのはプリンです。


■モルグ街の殺人:エドガー・アラン・ポー

 ある日、モルグ街に住むレスパネー夫人とカミーユ嬢の母娘が、何者かに惨殺された事件が起こります。部屋はめちゃめちゃに荒らされ、血まみれのカミソリと金貨の入った袋が床に落ちています。この奇妙な事件を、オーギュスト・デュパンは新聞広告一つで解決してしまう、という話。ちなみに江戸川乱歩の名前は、本著者から名付けられています。

※またいつか、単体でポーに対する魅力を紹介したいですね。


■恐怖の谷:アーサー・コナン・ドイル

 ある日、ホームズのもとに届いた暗号の手紙。同じタイミングでサセックス州の小村にある古い館の主人が、散弾銃で顔を撃たれるという事件が起こります。それはまさに、暗号で予告されたもの通りでした。二重三重の仕掛けがあり、宿敵モリアティ教授の影も見え隠れします。個人的には、シャーロック・ホームズシリーズで最も好きな作品です。

※数ある登場人物の中で好きなのは、アイリーン・アドラーです。


■ぼくのメジャースプーン:辻村深月

 小学生の「ぼく」が通う学校で飼っていたウサギが、市川雄太という大学生によって命を奪われる事件が起こります。その現場を目撃した「ぼく」の同級生である「ふみちゃん」はその出来事により、心を閉ざしてしましまいます。「ぼく」罰を与えるために自ら持つ「条件提示能力」を使って、復習を試みます。正しさについて考えさせられる作品です。

※ちなみに辻村深月さんの作品は、『スロウハイツの神様』が一番好き。


■十角館の殺人:綾辻行人

 登場人物はいずれも、ミステリー界を代表するような作家たちのニックネームが充てがわれて、アガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』ばりに次第にひとりずつ消えていく。この後似たようなトリックが用いられることになりますが、当時からするとものすごいインパクトだったことが窺い知れる作品です。


■アヒルと鴨のコインロッカー:伊坂幸太郎

 隣人の奇妙な計画に巻き込まれた青年椎名が、やがてその真意を知るまでの顛末をミステリアスかつトリッキーに綴られた作品です。椎名がボブ・ディランの『風に吹かれたら』を口ずさんでいた時、隣人の河崎という男に声をかけられ、本屋襲撃を手伝うことになります。本作品はどちらかというと、ホワイダニットに焦点を当てられています。


■容疑者Xの献身:東野圭吾

 一時期ものすごい勢いで東野圭吾さんの作品を読んでいました。本作品は、ガリレオシリーズの3作目です。確か割と序盤でフーダニットについては想像がついた覚えがありますが、ハウダニットとホワイダニットがものすごく作り込まれていて、なるほどそう来たか!と驚愕の思いで読んだことを思い出します。


■バーにかかってきた電話:東直己

 『探偵はBarにいる』シリーズの2作目。当時映画がものすごく話題になり気にはなっていたものの、映像で最初に見るのが嫌で小説から手に取りました。が、1作目は正直わたし的にものすごく読みづらくて、執念で読み切った覚えがあります。とりあえず2作目も読んでみるか……と思って手に取ったのですが、猛烈なスピードで読み終わってました。映画化されたのも2作品目みたいですね。映画もいつか観たい。


■64:横山秀夫

 昭和64年に起きた少女誘拐殺人事件、通称「ロクヨン」は時効まであと1年に迫っていました。かつて捜査にあたった三上は、現在は広報官として日々骨を折っています。そんなある日、ロクヨンを想起させる誘拐事件が発生します。全てを読み終えた時、果たして本当の「悪」って一体何なのか、ということを考えさせられました。


■ソロモンの偽証:宮部みゆき

 最初読み終わった時に、あまりの内容の濃さに頭がくらくらしました。ひとりの少年の死を発端として、子供たちの間で犯人探しが始まります。それぞれの思惑が複雑に絡み合い、疑心暗鬼の空気が広がります。三宅の出した”告発状”はどこまでが虚偽なのか。悲しみは数珠のように連鎖し、そこにマスコミの力も加わります。果たして真実はどこにあるのか。人の人生についても考えさせられる作品です。


■ノーマンズランド:誉田哲也

 姫川玲子シリーズ8作目です。ある日、東京葛飾区のマンションで女子大生が殺害されます。容疑者として浮上した男は、すでに別件で逮捕されていました。情報は不自然なほどに遮断され、捜査は行き詰まる中で姫川は真実を追い求め奔走します。北朝鮮の拉致問題にスポットが当てられていて、複雑な話の構成に思わず唸った作品でした。


■虎狼の血:柚月裕子

 『虎狼の血』シリーズの1作目です。昭和63年、広島。所轄署の捜査二課に配属された新人の日岡は、ヤクザとの癒着を噂される刑事・大上のもとで、暴力団系列の金融会社社員失踪事件を追います。話の展開が進むに連れて、事件はより複雑な動きを帯びていきます。終盤にかけては、手に汗握る展開。二転三転する展開に、思わず息をすることを忘れてしまう作品です。

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ミステリーへの愛とは

 一言で言うと、人生における一匙のスパイスですね。

 割とミステリー作品ってシリーズ化されていることが多いので、やはり1作品目から読むとより世界観が深くなります。改めてこうして自分が読んできた作品の数々を俯瞰して見てみると、犯人当てだけではなくて一人ひとりの登場人物たちの中にある物語がけっこう好きなんだなということにハッと気がつくのです。

 ミステリーとは、人生の中に起こらないであろう刺激物。謎が深まれば深まるほどその人のことを知りたいと思う心情に似ています。この人はどんな行動をするのだろうかと想像しながら読み進めるのが好きで、それはきっと日常における人との関わりにも活かすことができるのではないでしょうか。

 人生を楽に生きるコツ、そんなものがミステリー小説の中にはぎゅっと詰まっています。ぜひ休日には、ミステリー小説と紅茶を片手に優雅な朝を過ごすことをお勧めします。


故にわたしは真摯に愛を語る

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