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透徹した科学「日本SFの臨界点 石黒達昌 冬至草/雪女」

<SF(4歩目)>
東京大学医学部から、「愛(love)」が大切なことを繊細な文章で。

日本SFの臨界点 石黒達昌 冬至草/雪女
石黒 達昌 (著), 伴名 練 (編集)
早川書房

「4歩目」は科学論文・民俗学論文テイストで、「愛(love)」を描いた稀有な短篇集です。
著者の石黒達昌さんは、SF者の中でもメジャーな方ではありません。しかし、先入観なく読むと素晴らしい才能に打たれます。私はガツーンと打ちのめされて、全作品を読みました。

石黒さんの作品には、科学的な試行検証の要諦を押さえながら、「愛(love)」まで到達させるには、どうすればいいのか?の解が沢山散りばめられていて、様々な感動を味わうことができます。

どの作品も秀逸ですが、特に感銘を受けた作品を紹介します。

「雪女」
「雪女」については、私が知る中でも「米国」「カナダ」「欧州」「ロシア」等々でも色々な描かれ方をされている割と普通なテーマです。

しかし、石黒達昌さんは透き通る文体で、我々日本独自の世界を描いています。「アナと雪の女王(Frozen)」とは別次元の透き通る「愛(love)」の作品です。

「希望ホヤ」
娘たちとも読みました。「ホヤ」は東北の三陸海岸名産で有名ですが、この「ホヤ」なる動物にかかわる作品です。

この作品が産みだされる際に、作者はどれだけ「がん」にかかわる医療の現場に立たれていたのか?が理解できるのと同時に、子を持つ親の気持ちを作品中にどう描いていくのか?

この試行検証がなされていて、読後に「愛(love)」をあたたかく感じられる作品になっています。英訳して、世界に発信したい作品です。

「冬至草」
山岳部的に、北海道の大地を経験すると感じる「気づき」が沢山散りばめられています。

この作品は、私の外国人ビジネスパートナーも「日本的」な美しさのある作品と絶賛しています。そして普遍の「愛(love)」が満ちています。この作品の美しさは、国籍を問いません。

石黒達昌さんは、現在も医師としてご活躍中。その意味で、二足わらじを履いたまま、究極の「愛(love)」って描くことが可能だと気づかされました。SFの可能性を感じさせます。
ちょっとマイナーですが、読後は不思議な「愛(love)」がたくさん注入されていること請けあいです。

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