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誰もが思い当たる愛にまつわる物語「回樹」

<SF(79歩目)>
ちょっと心を突く時間が得られる短篇集で、「愛(love)」を考える。

回樹
斜線堂 有紀 (著)
早川書房

「79歩目」は、「誰も思いつけないアイデアと、誰でも思いあたる感情の全6篇」と書かれているが、SF設定は強引なのですが、「感情」についてとても突いてくる作品でした。

斜線堂有紀さんの世界観。とてもいいと思います。

何というか、SFをベースとした人間の色々な感情が描かれている。それがどれもが心に思い当たるところあり。
なのに、こんな作品を描くことはとても難しい。

斜線堂有紀さんの世界って読みやすい文体、流行を押さえたテーマ選び(百合)の中に、誰もが思い当たるとこにスポットが当たっている。
こんなところが素晴らしいと感じました。

「回樹」「回祭」
同じ世界観の中の作品、設定を「百合」テイストに仕上げている。
この「設定」が「いいね!」です。
愛する人を失ったとき、私たちはどの様な行動を起こすのか。
「死」と「愛(love)」を再考させられる素晴らしい作品です。

「骨刻」
骨の表面に言葉を刻む技術。技術はなんとなく実現できる。でもその持つ意味は?

ここの視点が素晴らしい。力を持つ言葉は人に何をもたらすか。美容等は理解できていたけど、同じく美容の持つ意味まで考えさせられた。
こんな視点が読みやすい文体で訴えてくる。
経験の無い読後感でした。

「奈辺」
奴隷制度下、白人と黒人の人権問題に宇宙人が入ってくる。
「いいか。お腹の子は酒場全体で育てよう。ここはしばし、その子の為の王国となるんだ。で、俺は子育ての王となる」「……お前が王なら、実父の俺はどうなるんだ。俺の子なのに、俺はお前の部下か?」
クスリと笑いながら、「差別」の本質を考えさせられる。

「設定」は考えれば「ある」のですが、これを作品に昇華させるところがスゴイ。

そして、誰もの人生の中で思い当たる「感情」を突いていく。
この短篇集はなかなかです。

なんか、斜線堂有紀さんの作品って、これからも都度読み込むことになると思う。切り出し方がとてもいいです。

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