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素晴らしい才能から、近未来を覗いてみる「円 劉慈欣短篇集」

<SF(3歩目)>
「科学」と「技術」先進国の中華人民共和国から未来の「技術」と「愛(love)」の彼方を眺める。

円 劉慈欣短篇集
劉 慈欣 (著), 大森 望 (翻訳), 泊 功 (翻訳), 齊藤 正高 (翻訳)
早川書房

「3歩目」は中華人民共和国のSF界の巨匠である劉慈欣さんの現代中国を舞台にした短篇集です。

著者の劉慈欣さんは、SF者(=SFオタク)の世界では「三体」ブーム(著書の「三体」は驚異的なベストセラー)を起こしていて、とてつもない筆力で物理学理論を超越した作品を読ませる名手です。

つまり、現代日本のSFオタクの心を鷲掴みしている中国人作家です。

仕事や旅行で、現代中国を訪問すると理解できることとして、圧倒的な科学先進国になっていること。(日本は残念ながら、大きく取り残された国になっている。この現実はしっかり見ないといけない)

それにもかかわらず(逆に急激に発展した先進国だからか)、都市と農村の巨大な格差あり(格差の無い社会を目指す、「共産主義国家」にもかかわらず、究極の格差です)。このきしむ世界を切り出している作品群です。どの作品も圧倒的な筆力に押しまくられます。

特に感銘を受けた短篇作品を3つ紹介します。

「地火」
炭鉱(旧エネルギーの石炭)を舞台にした作品で、科学の進化の中での「実験による試行検証」で起こりがちな「あるある」が沢山散りばめられた作品になっています。
読後に「愛(love)」を痛切に感じる作品です。

「郷村教師」
都市部では一気に見えなくなった、「貧困問題」に焦点を当てた作品です。
究極の貧困問題にSFはどう対峙するのか?これの一つの回答だと思いました。
先生の「愛(love)」が伝わりますね。この「貧困問題」が文学というリアリズムで描かれると「文学」で紹介していく閻連科さん(大注目中)の「作品」になると思いました。

「円円のシャボン玉」
この作品は、日本の人気SF作家の小川一水さんの作品に似た感じあります。あるいは野尻抱介さんに似ている。あまりガチガチのSF度を濃くしなくても、水準を超える「愛(love)」が描ける作家だと感じました。

正直なところ、中華人民共和国のSFについてはケン・リュウさん(米国在住の中国人作家)が紹介してくれるまで知りませんでした。中華人民共和国の発展を肌で知るも、個人的にはノーガードでした。(笑)
この短篇集のどの作品も、読後は「愛(love)」が注入されていること請け合いです。

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