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日記

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2024年1月の記事一覧

吹き込まれる、幻

吹き込まれる、幻

 裾野からふんわりピンク色に溶け出していく空の、茜の極まるところの、その先から生まれる風を吸い込んだ。足の先はとっくに靴の形にまるくかためられていて、タイツと靴のさわりが悪い。人が通り過ぎる。色硝子を透かして見たような音色がイヤホンから流れ込む。それはゆったりとした静寂で、そのなかに限りなく薄い破裂が混ざっている。

 共犯が、愛より上だと思っていたころ、小さなソーサーカップをいくつも集めるような

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息のつづく限りのおやすみなさいを

息のつづく限りのおやすみなさいを

 感じる速度ってなんだろう。
 水餃子の、つやんとひかるひだを見つめながらそう、思った。感じる速度が高まって、涙があふれるときの、あの解像度はなんなのだろう。まるっこい水餃子はスープの海で寝そべっている。つぶらな瞳が輪っかになってわたしを惑う。窓をきっかりしまっていて、午後の音が満ちている。近くにおいた冷水から雫が薄くのびている。わたしの頬に、わたしの手から、わたしの作った味が入っていく。おそるお

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牛のしっぽには星がある

牛のしっぽには星がある

 年が明けました。
 一年を、暮れるとか明けるとかで表現するたびに、ひとひもひとよも変わらないのかもなと思ったりします。

 時間の感覚ってほんとうにさまざまで、自分のなかでもさまざまで、それなのに一番はっきりしているものみたく扱われていて、その落差にたまにうっとりしてしまう。それは生きているに近いから。

 まばたきの回数で空とべたならわたし今星空にいる、とか

みたいな短歌を詠んだことがあるけ

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