恋愛小説です。
過去の傷からクラスメイトに心を閉ざした嫌われ者が、新しい恋によって前を向こうとする痛々しい青春模様を書いている…つもりです。
春…起承転結でいう「起」のパート…
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#青春
【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第60話-夏が来る〜二人の協定
親友と好きな人が同じだった。そんな時、どうするのが正解なのだろう。
恋を取るのか、それとも友情を取るのか。そもそも自分でそれを選ぶのは傲慢なのかも知れない。
「協定を結ぼうぜ」
裕は貴志をまっすぐ見つめて、そう言った。貴志は固唾を飲んで、協定の詳細が語られるのを待った。
友情と初恋を天秤にかけているなら殴るぞ。裕の言葉が重い。
でも確かに裕の言うとおりだ。大切な想いを天秤にかけること
【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第20話-春、修学旅行1日目〜旅立ち
始発列車に集まる大勢の中学生。その群れに朝の早いサラリーマンたちは露骨に嫌な顔をした。いつもは静かな車内が今日は騒がしい。関西のベッドタウンからの修学旅行となると、特に定番のコースというものがなく、1日目は横浜の予定となった。今は学校に集合した生徒たちが揃って新幹線の駅へと向かっているのだった。
京都駅。関西でなければ旅の目的地となるこの駅が、修学旅行の出発駅だった。ここから新横浜駅までの2時
【連続小説】初恋の痛みが消えないまま俺はまた恋をする第7話-春、始業式〜紗霧
始業式を終えて中学最後の一年が始まった。学年をまたいでも、代わり映えのない灰色の毎日だ。咲くのを待つのみの桜の木ですら灰色に見えてしまう。
雑に伸ばした前髪が目にかかるのを鬱陶しく感じながら坂木紗霧(さかき さぎり)は学校を後にした。メガネの奥には憂鬱に伏せられた目。青白い顔には生気がなく、何かに怯えているようにも見えた。いや、明らかに怯えていた。
静かに誰にも気づかれないまま彼女は歩く。た