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「本当に必要なスキル」をどこで手に入れるか?/小さきアプリ屋の悩み

【小さきアプリ屋の悩み ―小説版― 第4回】
https://www.alphapolis.co.jp/novel/70430098/901188828/episode/1118743

若手、中堅が、報告も相談もできないし、そもそも、金のことが度外視なんですよ、何のために働いてるのか、会社はどうやって成り立ってるのか、考えもしない、言わなきゃならないことを客に言えない、個人の気持ちや感情だけで仕事してる

社員が6名しかいない小さな会社から、社員が2000名くらいいる大きな会社まで、私はこの15年位で数社を転々とした。

大きな会社に在籍していたとき、これは技術者のことだが、若手にとって大きな会社は不幸だなと思った。

大きな会社だと、役割分担が明確で、客との折衝、矢面に立つのはほとんどが管理職になる。プログラマーはずっとプログラマーで、次のステップアップの機会がなかなか得られない。

これは会社の新人教育にも問題があったのだが、IT企業は技術者が命なので、新入社員を毎年50名くらい採用するのに、ほとんどの戦力を中途採用に頼っていた。

新人は蔑ろになっていて育たず、一年以内に10名くらいしか残らない。会社はそれでいいと思っているフシがあって、中途採用者で現場はしっかりと回っていた。

このことに気がついたとき、辞めようとする新人は不幸だ。既に新人ではない歳になっていて、相応の経験と技術を身につけられていないからだ。こうやって大手から脱出できず若い時期を腐らせることも多い。これは本当に可哀想だ。


経験上、比較的多かった、ということでしかないのだが、大手でそうやって鍛えられなかった若手、中堅というのは、どうしても転職先の小さな会社で役に立たない。

小さな会社は、役割分担をしていられる状況ではない。

私は初めてのIT企業が僅か社員6名だったのだが、その次の社員20名の会社でもそうだったが、客との折衝から開発から見積もりから管理職とかどうでもよくて全て自分でやらなければならなかった。役割分担するような人数が居ないからだ。

勿論、そもそものその人の性格もあるのだが、「自分の仕事ではない」と言い張ってプログラムしかやらない人が多い。大手ならそれで通るかもしれないが、小さな会社ではそういうことを言えるような状況ではない。それが分からないわけではないようだが、経験不足からの失敗が怖いようなのだ。もう、新人という歳ではなくなってしまっているからだろう。

そして、客と面と向かって話すことに若い頃から慣れていないと、相手に「NO」を言えなくなるようで、明らかに請けたら赤字になるものを勝手に「YES」と言ってしまったり、こちらから察して「NOと言ってこい!」と檄を飛ばしても、口からは「YES」が出てしまっている。


私は実は、これが理解できない。「NO」と言えない心理が。やっぱり、大手などの温室で育った人に多い傾向なのだが、何故、相手が客だというだけで、「NO」が言えないのだろうか。完全に社内弁慶タイプだ。

私は新人の頃から「NO」と言える。「NO」と言うために私が同僚からわざわざ呼ばれるくらいだった。不本意だが「NO」要員だった。

私が何故「NO」と言えるのかは明白で、それは「会社命令」だからだ。

そのときの私は会社の代弁者で、私の心は死んでいる。客がそれで仮に怒ったとしても、怒らせたのは私ではない。怒らせたのは私の会社だ。

もう、居た堪れなくなったら、そう言ってしまえばいい。私もたまに口にする。「すみませえええん、会社の方針なんです、自分もサラリーマンなんですよおおおお」と。これで相手は同情してくれる。

基本、仕事というのは、サラリーマンであれば、それは全て会社方針であり、個人の感情で行うものではない。個人の感情を挟むと、途端にわけが分からなくなる。だから、会社方針として、同じ方向を目指すわけだから、それを背景に発言する自分の言葉というのは、自分の言葉ではない。


これらは開発者に必要ないスキルだと思われることも多いのだが、会社方針を無視して、金のことを無視して、ただ個人の感情で作りたいものを作っていたら、それはもうプロの開発者ではない。趣味でやってる「アマグラマー」だ。

プロの開発者は、どの機能にどれだけの金が掛かり、顧客のコスト状況から、代替案などを提案できなければならない。

安く、そして良いものを作るためには、技術的にどう工夫しなければならないのか、そういったことも開発スキルに強く繋がってくる。

それは実際に顧客と対面で戦って、どういう落とし所を提示すれば納得するのかなど、その塩梅は数々を経験して初めて得られる感覚でもあるので、閉じこもって温室で勉強することから飛び出すことを技術者なら考え始めたほうがいい。


だから、新人の頃から何でもかんでもやらないといけないのは、一件、不幸に思われるかもしれないが、それは将来を見れば本当に大きな経験で、敢えて小さなIT会社を選ぶのは、私は非常にオススメする(同じところに長く在籍しろとは思わない、私の平均在籍期間は一年~二年なので)。

食費入力のみ家計簿アプリ「食費簿」、自慰管理アプリ「アイナーノ」、どちらも御陰様で好調です。より良いアプリ開発に役立てます。