紹介してもらおうとしていた女の子がいつの間にか妊娠していた、というお話
「今は恋愛したくない」
は、
「お前には興味がない」
という牽制である。
1.ワクワクが止まらないカースくん
友人の結婚式に参加した時、周囲の男性陣が揃って「可愛い」と連呼されていた女の子がいました。
エメラルドグリーンのワンピースを着たお嬢様。
私が抱いた第一印象です。
その女性は、私の友人である新郎の従兄弟でした。
結婚式から1年後、突然友人が提案してきました。
「俺の従兄弟いるじゃん? 結婚式の時にいた」
「うん、あの可愛い子ね」
「そうそう。この間飲んだ時、彼氏がいる友人を羨ましいって言ってたんだよ。ワンチャン紹介してみようか?」
「お前は神か?」
友人の従兄弟をエメラルドちゃんとしましょう。
このエメラルドちゃんは驚くべきことに、今まで彼氏がいたことがないらしい。
高校からは女子校育ちかつ、中学までイジメられていたトラウマで、男の人が怖かったのだとか。
興奮が止まりません。
朝ドラの主人公レベルの清純な女性が中身も綺麗だなんて。
そして友人と従兄弟であるエメラルドちゃんは、幼い頃から仲が良くて何でも話せる間柄なのだとか。
「ラブコメの主人公じゃん」って言ったら、「妹と同じで家族に恋愛感情は抱かない」と。
やっぱりラブコメの主人公じゃんと思いましたが、神を崇めるが如く懇願しました。
「俺を主人公にしてください!」
2.毎日神のお言葉を待ち望むカースくん
頻繁に飲みに行くとのことで、次の機会に必ずアプローチしてみせると断言した神様。
朝ドラ女優と付き合えたら、大逆転人生です。
「どうだった?」
「ああ……あれね。なんかまだ付き合うのはいいかなって」
話が違う。
「とりあえずお前同席のお食事でも…………」
「それも提案したけど渋い」
話が違う。
彼は終始歯切れの悪い様子を見せていました。
付き合いの長い私は知っています。
彼のこの態度は、都合の悪い何かを隠していると。
私はエメラルドちゃんを知っている。
ということは、エメラルドちゃんも私のことを知っているはずです。
つまりはそういうことなのでしょう。
私は友人に問いただすことはできませんでした。
いや、問いただしたとしても、彼は嘘をついてでも私の心を守ったはずです。
これは別の記事でも触れる予定ですが、どうにも私は一度のチャンスすら与えられない傾向にあります。
言ってはなんですが、私はインテリ系と呼ばれるくらいには身綺麗ですし、自分でも嫌になるくらいに過保護な性格をしています。
私という人間を知っていただく機会くらいは設けてくれてもいいじゃないか。
そんなことを思いながら、その夜は枕を濡らしていました。
3.世の中は金だと悟るカースくん
それから1年が経つ前くらいでしょうか。
友人との会話中、ふと思い出してエメラルドちゃんがどうしているのかを聞きました。
「ああ彼女ね。結婚した」
「ファっ!?!?!?!?!?!?!?!?!?」
どうやらコロナが流行り始めて、お金に少々困っていたとのこと。
そんな時、とある男性がアプローチしてきてOKしたのだとか。
あれよあれよの間に妊娠が発覚し、入籍したようです。
その男性。
いわゆる青年実業家と呼ばれるイケメンで、相当なお金持ちなのだとか。
「誓って言うけど、俺が紹介しようとした時は、まだその男はアプローチしていなかった」
なんのフォローにもなりません。
だって時期的に考えて、俺を拒絶したすぐ後にアプローチされ、早めの了承をしているのだから。
せめて比較されたうえで拒絶されていたほうが納得できます。
イケメンでもなく、金持ちでもない私が勝てるわけないのだから。
友人の紹介って、紹介される前に拒絶されることもあるんだなと学びました。
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