こと

Twitterで書くには長すぎる文章を公開しています。

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マガジン

  • 皮膚科に行ったらなんだかんだで胃がんが発見された父の話

    父が皮膚科に行ったところ、いろいろあって胃がんが発見されたので、その顛末を書きつづってみました。ちなみに各話の副題はわたしの好きなゲーム音楽の曲名から借用しています。

  • アンカーの思い出

    関西テレビのニュース番組「スーパーニュースアンカー」の思い出を、思いつくままに語ります(完結済)。なお公開から時間が経っているため、記述にところどころ古さが見られます。当時の状況を描写したものとご理解ください。

最近の記事

医療コミュニケーションとコクーン戦略

わたしがツイッターに書いた数年前の投稿がどういうわけか最近になって拡散された。幸いにも過去の放言を晒されたとかではなく、とくに不都合はない。とはいえいったいどんなきっかけで地味なアカウントの投稿が数年越しに発掘されたのかは気になるので、検索するなどしていた。残念ながら手がかりは得られなかったものの予想外の収穫があった。なんと、この件とはべつのツイートがブログに引用されていた。 このブログの筆者は薬剤師の方で、わたしとは以前からツイッター上で相互フォローの関係にある。まったく

    • 生存報告

      どうも、ご無沙汰しております。といってもわたしがnoteに文書を投稿することは以前からすくなかったわけですが。よほどの長文でもないかぎりツイッターで間に合うので、どうしてもツイッターへの投稿が中心になります。2022年2月にはツイッターのアカウントを立ち上げて満8年を迎え、下のようなツイートをしました。 ところがこの投稿をした日を最後に更新が止まり、気がつけばツイッターも2か月以上の放置状態に。この間もツイートをしていなかっただけで、タイムラインを通してほかの方のツイートは

      • 争点のない総選挙2021~コロナ禍の中で

        FEEL INVISIBLE MATTER(目に見えぬものを感じよ)第49回衆議院議員総選挙は新型コロナウイルスのパンデミックが発生して以降、はじめての総選挙となった。わたしは「今回の選挙ではコロナへの対応が最大の争点になるのだろう」と予想していた。NHKの世論調査を見ても、2割の人が「新型コロナ対策」を最も重視する政策課題にあげている。 この世論調査によれば最も重視する政策課題として「経済・財政政策」と回答した人が33%でいちばん多い。ただやはりコロナ禍による不景気が回答

        • 意味がわかるとこわい怪作~『昭和の三傑』

          今年に入ってから趣味の読書が理系チックな方面に傾きすぎているので、たまには趣向を変えようと自宅の未読本を物色したところ発掘された本書。某月刊誌に連載されている対談で本書の著者を知り、またその著者の出している本がテーマ的におもしろそうということで入手はすませていた。ところが、ほかにも読みたい本が次々出てくる中で存在を完全に失念。日本史がらみの本はしばらく手に取っていなかったので「そっち方面の読書を再開するきっかけになれば」とかるい気持ちで読んでみた。 「コペルニクス的転回」か

        医療コミュニケーションとコクーン戦略

        マガジン

        • 皮膚科に行ったらなんだかんだで胃がんが発見された父の話
          14本
        • アンカーの思い出
          21本

        記事

          10年越しの再会~『狂気の科学者たち』

          『ウソの歴史博物館』(アレックス・バーザ著、小林浩子訳)という本がある。古今東西のウソやインチキの数々を集めて手短に紹介した雑学本で、わたしは書店で見かけて衝動買いしたのをおぼえている。この本は本文も大変おもしろいけれど、ペテンの陳列を全部すませたあとで述べられる「著者あとがき――だまされない方法」がまたすばらしい。ネット上におけるフェイクニュースの氾濫を予見していたかのような内容で、いま読み返しても古さを感じさせない。 とにかく個人的には場外ホームラン級の当たりだったので

          10年越しの再会~『狂気の科学者たち』

          英国流のユーモアがさえわたる~『世にも奇妙な人体実験の歴史』

          ※この文書は2018年9月にツイッターとブクログに投稿したレビューを転載したものです。 日本人がイグ・ノーベル賞の常連になって久しい。2018年の「医学教育賞」にえらばれたのは堀内朗医師。堀内氏は大腸の内視鏡検査を座った姿勢でできないものかと考えて自分の体でくり返し試したのだそうで、これが受賞理由になった。自分で自分の尻に内視鏡を入れる光景を想像するとかなりシュールだけど、これも自分の体を張った立派な人体実験だろう。実際医学の発展をひもといていくと、人体実験はさけて通れない

          英国流のユーモアがさえわたる~『世にも奇妙な人体実験の歴史』

          トリックアートのような「医療エッセイ」~『病理医ヤンデルのおおまじめなひとりごと』

          今年に入ってから図書館通いがちょっとした習慣になりつつある。借りた本を返すついでに本棚を物色すると興味深い本が見つかってまた借りる、というサイクルが機能しているらしい。やっぱり図書館の本はハズレを引いても腹が立たないぶん、読むのも借りるのも気楽にできる。今回もまた医学系の本がならべられた一角へと足を向ける。最初はついでに立ち寄る程度の場所だったはずが、すっかりルーティンに組みこまれてしまっている。そんな中、発見したのが今回の本。 とにかくゆるい「医療エッセイ」わたしが前回、

          トリックアートのような「医療エッセイ」~『病理医ヤンデルのおおまじめなひとりごと』

          続・コロナ下の本選びを考える~『おとなのワクチン』

          先月、わたしが図書館で見つけた本は予想以上に興味深い内容だった。 わたしは感染症にそこまで関心があるわけではない。けれども、一般向けの感染症解説本、とりわけコロナ禍以前に出版された本にはどんなものがあるだろうか。それはコロナ禍のいまでも読むに耐える内容なのだろうか。先のエントリを書いてから、そんなことが気になりはじめたわたしは、図書館や書店へ足を運ぶ機会のあるときはそういう本の眠っていそうな棚も探索するようになった。そんな中、書店で発見したのが本書。 かるく立ち読みしたか

          続・コロナ下の本選びを考える~『おとなのワクチン』

          【ご報告】むかし書いた記事にコメントをいただいたのでお返事をしていたのですが、お返事に費やした文字数が議論の発端になった記事の文字数を大幅に超過いたしました。体力気力の限界です(なお引退はしません)

          【ご報告】むかし書いた記事にコメントをいただいたのでお返事をしていたのですが、お返事に費やした文字数が議論の発端になった記事の文字数を大幅に超過いたしました。体力気力の限界です(なお引退はしません)

          コロナ下の本選びを考える~『猛威をふるう「ウイルス・感染症」にどう立ち向かうのか』

          緊急事態宣言のさなかに図書館へ足を運び、目当ての本とは全然ちがう棚で発見した本書。 「このご時世、興味のある人が多そうなテーマだよなあ、まあ有名な先生が監修してるみたいだし」と軽い気持ちで借りてみた。 新型コロナウイルスの話は一切書かれていない結論から述べると、本書は一般向けに感染症を解説した本としてかなりクオリティが高い。といっても出版は2018年で人類が新型コロナウイルスに遭遇するよりも前。新型コロナウイルスの話は一切書かれていないし、コロナの話だけをピンポイントで知

          コロナ下の本選びを考える~『猛威をふるう「ウイルス・感染症」にどう立ち向かうのか』

          (14)あとがき~Antidote

          「事実は小説より奇なり」という使い古された決まり文句がある。予想もしなかった現実に直面したわたしの頭にいつも浮かんでいたのは、このフレーズだった。この物語は、まず偶然がなければはじまらなかった。実際、胃がんは早期だと自覚されることはまずない。早期の胃がんは健康診断などで内視鏡検査を受けたときに発見されるケースが大半と考えられる。このうち、胃がんの早期発見を目的として定期的に胃カメラを飲んでいる人は少なくないだろう。他方で父のように、健康診断でバリウム検査を受けたらたまたま再検

          (14)あとがき~Antidote

          (13)酒は百薬の長にして百毒の長~Live over Again

          退院から約2週間後、父はA病院で術後3度目となる内視鏡検査を受けた。検査は今回も小一時間ほどで終わった。経過は順調で、今後も食事を入院前の内容にすこしずつもどしていって問題ないとの診断。念のため父がN医師に確認する。 「手術してもらった場所は、もうこれで大丈夫ですか?」。 N医師によると、今回手術した場所にがんが再発してくる可能性はまずないらしい。ただ、そうだとしても今回の手術で胃のほかの場所に新しくがんができる可能性がゼロになるわけではない。今後も経過観察をかねて年に1回程

          (13)酒は百薬の長にして百毒の長~Live over Again

          (12)節制は続く~Logistical Support

          退院の朝がやってきた。病院で朝食を終えた父から電話がかかってきたので、わたしたちは車でA病院へと向かった。病室に入ると父はすでに荷造りを終え、くつろいでいた。しばらくすると担当の看護師が来て、父の手首からバンドを外してくれた。入院中ずっとお世話になったので、看護師にお礼を述べる。N医師にも挨拶したいところだが、あいにく忙しいようだった。父が身支度を終えたところで、わたしたちは病室を出た。父のいなくなった大部屋は、完全な空き部屋になった。 会計窓口で、今回の入院費を支払った。

          (12)節制は続く~Logistical Support

          (11)確定診断~Coffee with bullet

          術後2度目の内視鏡検査を終えると、父は明らかに退屈な様子を見せはじめた。好物のコーヒーは口にできるようになった一方で、時間つぶしの方法には飽きが来ていた。父は数独(ナンプレ)というパズルが好きで、中途半端に時間の空いたときに解いていることが多い。家にも数独の本が1冊あり、その本にはまだ手をつけていない問題も残っていたので、病院に持っていくことも考えた。ただ残っている問題は本の最後の方に固まっていて、どれもこれも最高の難度。一日中頭をひねってもマスをひとつ埋められるかどうか、と

          (11)確定診断~Coffee with bullet

          (10)入院生活~Martial Law

          手術は無事に終わった。ただN医師の話では、もうしばらくは出血に注意する必要があるそうで、胃が痛くなったり、血を吐いたり、便に血が混じっていたときはすぐ知らせるように指示を受けた。またトイレはポータブルを使うよう指示があり、ベッド脇に便器が設置された。開腹はしていないので、父が歩いてトイレまで行くのに体力的な問題はまったくなかった。ただ胃からの出血の危険を考えるとやはり安静が第一で、ベッドから立ち上がって歩くのも極力控えるように、そのような判断がされたのだろう。父は前日の夕食以

          (10)入院生活~Martial Law

          (9)手術~AM9:00

          手術日は朝から慌ただしかった。諸事情により前日に入院できなかったため当日の朝一で入院、午後から手術という予定が組まれた。入院生活に必要な荷物を車に積み、この日も一家でA病院へと向かう。病院の受付で手続きを済ませると、ほどなく担当の看護師が迎えに現れ病室まで案内された。病室はよくある大部屋で、ひとつのベッドを除いてすべて埋まっていた。父のベッドは窓際。南向きの部屋でカーテンが引かれているものの、それでも十分すぎるほどに明るい。荷物をロッカーに入れ父が着替えを終えると、担当の看護

          (9)手術~AM9:00