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生存報告

どうも、ご無沙汰しております。といってもわたしがnoteに文書を投稿することは以前からすくなかったわけですが。よほどの長文でもないかぎりツイッターで間に合うので、どうしてもツイッターへの投稿が中心になります。2022年2月にはツイッターのアカウントを立ち上げて満8年を迎え、下のようなツイートをしました。

ところがこの投稿をした日を最後に更新が止まり、気がつけばツイッターも2か月以上の放置状態に。この間もツイートをしていなかっただけで、タイムラインを通してほかの方のツイートは一応読んでいました。ただとある事情により、時事ネタを追いかけたりコメントしたりする余裕がなかったんですね。

予兆

年明け早々にオミクロン株が猛威を振るいはじめたときは「大変なことになってきましたなあ」とおもいつつ、ほとんど他人事気分でした。すると1月末になってわたしの父に風邪みたいな症状が出現。よくある風邪かなあと構えてたんだけど、38度超えの熱が数日つづき本人もなかなかつらそうな様子で、これはインフルか、いやオミクロンの可能性もあるか。などと考えているうちに父の症状は軽快してとりあえず胸をなで下ろしたんですね。その矢先ですよ、わたしにもナゾの風邪症状が現れたのは。

あれはちょうど2月に入ったばかりの寒い日、部屋のストーブの灯油が切れて「今夜は冷え込むなあ」とかのんきにおもってたんですよ。それにしても寒いなと風呂に入ったところ、湯船につかってもなお寒気を感じる。そこでようやく気がつくわけです。「あ、これは悪寒だな、発熱だな」。風呂から上がってしばらく待ち、体温計をおそるおそるワキにはさんだところ38度超えの数値を叩き出す体温計。父が快方に向かい安心していたところだったのでショックでしたね。それでもしばらくは自宅で横になりつつ様子を見ることにしました。というのもこれが単なる風邪だった場合、ヘタに医者に行ったらそこでオミクロンに出くわすおそれがある。そう考えて様子を見ているうちに2日が経過するものの、体温は38度から39度の範囲を行ったり来たりで下がらず。体もわりと重たくて「これはただの風邪じゃないな」とうっすら覚悟をはじめるわけです。

体調的にそろそろダルくなってきていたのと、白黒はっきりしない状態がつづいて精神的にも消耗してきたので、発症翌々日の朝に医者に行くべく腹をくくりました。行ったのはかかりつけの医院ですが、そこを選んだ理由は以下の3点。

  1. いわゆる「診療・検査医療機関」として地元自治体のWebサイトに掲載されている

  2. コロナ以前から何度か受診しており、医療機関側がわたしの情報をある程度把握している

  3. 十分な広さの駐車場があり、車で行って車中で待っていれば待合室で待機せずにすむ

なおこのご時世風邪症状持ちの人間が飛び込みで病院に行くとシャレにならないので、さすがに事前に電話を入れました。風邪症状があることを伝えると、かなりいろいろ訊かれました。お断りされるかもと一瞬不安になったけど、最終的に診てもらえることになりました。そしてわたしが車で行くと伝えたところ、スタッフが駐車場まで行くので車の中で待機してもらって大丈夫ですとの返答。

お前は...誰だ

果たしてこの症状は単なる風邪なのか。インフルか、はたまたいまをときめくオミクロンか。医院から呼び出しの電話が来たのでひとり車に乗りこむわたし。平常時の50%増の安全運転でどうにか医院へとたどり着き駐車場で待っていると、医院の勝手口に人影が現れこちらへと近づいてきます。院長先生と看護師さんのように見えるけど防護服をがっつり身につけてのフルアーマー状態で、事態のヤバさを再認識。そして指示されるままに車の窓を開けると、なんとその場で問診がスタート。「おっドライブスルーか、ドライブスルーなんてマクドくらいでしか体験がないなあ」などと考える余裕は当然あるはずもなく。2,3の質問をされた後、鼻の穴に綿棒を入れての抗原検査となりました。「ここに反応が出たらコロナです」と検査キットを見せられ1分ほど待っていると、あらまあ反応がくっきりと現れたではありませんか。「うわっ……陽性が出るの早すぎ」。年収低すぎポーズを取りたくなる衝動と戦う時間すら十分に与えられぬまま、無情にもコロナ陽性の診断がくだされました。なおこの診断キットではオミクロンかどうかの判定まではできないとのこと。でもわたしの訴える症状から考えると、オミクロンの可能性が高いという話でした。ノドが痛い、咳が激しいなどの症状はオミクロンに比較的多い、みたいな説明があった気がするけど詳細は忘れました。

診察がひと通り終了し、最後に薬を出してもらってから帰宅。大体の人は軽症で4,5日もすればよくなりますという話でした。出された薬は解熱剤(カロナール・一般名アセトアミノフェン)、それから痰を切りやすくするものとか、ノドの炎症を抑えるものとか。要するに対症療法的な薬で、コロナに直接効果のある薬はなし。コロナの抗ウイルス薬(ラゲブリオ・一般名モルヌピラビル)が出されるケースもあるようだけど、この薬を出せる医療機関はある程度限られている模様。あと処方できる医療機関でも重症化リスクの高い人に限って処方、みたいな運用はあるかも。いずれにせよコロナ陽性と診断された人全員に抗ウイルス薬が提供されるわけではないし、また抗ウイルス薬が出ないからといって過度に不安になる必要もないんだろうとはおもうところ。

なお治療費は3割負担で3000円程度でした。コロナの場合でも初診料とかは患者持ちになる模様。どうやら陽性が確定するよりも前の時点で発生する費用は公費負担の対象外となるようです(参考リンク)。一方、薬代は公費から出るしくみのようで請求がありませんでした。まあ今回わたしのもらった薬なんて3割負担でたぶん1000円もしないだろうけど。でもこれが、たとえば開発されたばかりの抗ウイルス薬だと3割負担だとしても心臓にわるいお値段だろうし、コロナの患者が薬代を負担しなくてよいのは案外重要な気がします。医者に行く前はかなりの診療費を請求されるかもとやきもきしたんだけど、結果的にはインフルで診察を受けるような場合と大差のない金額で、その点は助かりました。

Antipyretic

医院から帰宅したあとは、ひたすら自宅療養の日々。わたしの場合、熱はそこそこ高かった一方で食欲はそれほど落ちることもなく、食事はふだんと変わりなく摂れました。新型コロナがデビューしたばかりのころは嗅覚や味覚に障害の出た症例の話をよく耳にしたけど、わたしの場合は幸いにしてそういう症状は見られず。後遺症的に出てきたということもありません、現在までのところは。ただノドの痛みがなかなか激しくて、ものを飲みこむたびにしみるのはありました。熱い汁物や塩分の強いもの、辛いものとかはさけた方が無難。まあコロナにかぎらず風邪のときにわざわざ激辛料理を口にする人なんてそんなにいないだろうけど。そんな感じで食事をきちんと摂りつつ、薬を指示通りに飲んで横になっていたらよくなりました。

個人的にいちばん効果を実感したのは解熱剤。いや、わたしは解熱剤をバカにしてたんですよ。むかしから頭痛持ちのわたしは市販の解熱鎮痛剤に裏切られる場面を数々経験していて、解熱鎮痛剤を全体的に信用していませんでした。どうせこんなの飲んだところで一時しのぎだし、そのわりに大して効きもしないし。などと疑いながらカロナールを飲んだところ、38度を下回る気配のなかった体温が37度台前半まで下がって一気に楽になりました。それでも薬が切れると体温が再び上がってくるので、大体12時間おきに追加投入。すると3回目を飲み終えたあたりで熱が36度台後半まで低下。その後体温が再び上昇する気配はなく、発熱は終わったと判断し解熱剤の服用は終了。発熱と悪寒が出てから5日くらいで熱はおさまったので、医院で受けた説明のとおりの経過をたどりました。

Electric Talk

発症から1週間が経過し症状がかなり落ち着いたころ、携帯電話に知らない番号からの着信が。出てみると保健所の保健師さんでした。医院での診察時にコロナの陽性と診断された人には保健所から疫学調査の電話が来ると説明を受けていたので、これは予想どおり。ただ電話の来るタイミングは予想よりも遅かったです。平時だと保健所からの電話はすぐに来るらしいですが、当時はちょうど日本全土でオミクロンが急拡大しているさなか。保健所の業務量もえげつないことになっているのは明らかだったし、電話がしばらく来ないのも想定内ではありました。とはいえコロナの諸症状があらかたおさまったタイミングでの着電に「保健所の労働環境はどれだけブラックなのか、コロナ感染者の心配をしている場合か」などといらぬ心配をするわたし。本来なら心配されるのはこちらなんだけど、この倒錯した状況を笑っていいのかどうなのか。保健師さんも電話が遅れたことを最初に詫びつつ、疫学調査のための聞き取りがはじまりました。

質問項目としては、行動履歴の確認、同居家族や職場の確認、ワクチン接種の有無と接種済の場合は接種日などなど。疫学調査というからには行動履歴の確認(要するに感染源と濃厚接触者の特定)が最重要項目なんだろうけど、わたしの場合は父からうつされた可能性が明らかに高くて、なおかつそれ以外の心当たりはとくにないのでそのように伝えました。父はコロナの検査を受けたわけではなく、感染者だったという証拠はどこにもありません。ただ実際に風邪症状が出たのは父が先だったし、父は先に軽快してその後ぶり返したりする気配もなかったので、たぶん父からうつされたんでしょう。みたいな説明を電話越しにした記憶があります。

あとは健康状態を確認され、大体の症状はおさまっていると伝えました。わたしは初日に38度超えの熱が出てから、体温を測定するたびに体温と測定時間を逐一記録しておいたので、質問に答えるときにこの記録が大変重宝しました。「解熱剤を飲むまで体温は38度台だった」という話をしたところ、保健師さんは「高いですね……」みたいな反応で、わたしとしてはやや意外でした。というのも発熱だけならインフルで40度を経験済だし、あれにくらべたら全然耐えられるなという感覚だったので。どのみち肺炎になって病院に担ぎ込まれるとかでもないかぎりは基本軽症扱いだろうし、そもそもわたしは基礎疾患持ちでもないからあんまり心配してもらえなさそう。などと考えていたのでこちらの身を多少なりとも案じてもらえたのはありがたいことです。ああでも「支援物資は必要ですか?」と訊かれたときはちょっと苦笑してしまいましたね。もちろん遠慮しておきました。しかし心配してもらっておいてこんなふうに言うのもどうかとはおもうけど「症状のピークが終わったあとで言われてもなあ」とか「わたしは軽症で済んだから笑い話にできるけど、まともに受け答えできないほどに重症化したり孤独死してたりしたらシャレにならんよなあ」などと考えずにはいられませんでした。とはいえ電話の向こうにいる保健師さんに非があるわけではない。それでもこの人たちは感染者や濃厚接触者から連絡が遅いと電話口で毎日のようにまくし立てられるんだろうなあ。修羅場と化した保健所の様子がありありと想像できたので、わたしは非難がましい言い方は一切しませんでした。大体このクソ忙しい時期に保健所の業務負荷激増に貢献しているのはこちらなので。そんなこんなのやりとりが20分ほどあって、疫学調査は終了。

この電話のあった3日後、再び保健所から電話がかかってきました。健康状態について訊かれ、ほとんど回復したと伝えると、それでは自宅療養は解除となりますという返答。療養解除の条件は、かんたんに言えば症状の出た日から数えて10日の時点で発熱などの症状が大体消えていれば解除、とかそんな話だった記憶。なお発症日から10日間は自宅療養(もちろん重症化の兆候が見られた場合でも自宅で療養をつづけなければならないという意味ではなく、状況に応じて病院に連絡を入れるのはまったく問題ない)という話は医院でも一応聞きました。それでも、保健所から療養解除の連絡は来るのかしらとやや不安でした。というのもわたしの地元だけでも感染者は連日4桁のレベルで出ていたし、地元の保健所は毎日とんでもない数の感染者に電話をかける必要があるわけですよ。こうなると「療養解除の条件は示しておくので、あとは各自でご判断ください」というセルフサービス方式になったとしても文句は言えないよなあ、という気はします。そんな状況の中、わたしのところには療養解除の電話も来たので、これは大変ありがたかったです。まあでも今後、療養解除の連絡はメールで自動配信のような形になるかもしれないし、さらにいえば疫学調査もパソコンやスマホでアンケートに回答するような方式が主流になるかも。保健所の事務処理能力を考えればそれもやむなしでしょうね。

一難去って...

晴れて療養解除となったわけですが、では解除の時点で完全復調だったかと言われるとわたしの感覚としては微妙でした。熱が下がったあともノドの痛みやせき込む感じなど、ノド周りの症状はしぶとく残っていたんですね。どうやら医学的には発症から10日経過した時点で陽性者がウイルスを排出するケースはほぼなくなるようで、療養解除の期間もそれなりの根拠に基づいて定められているみたいなんだけど。

でも正直なところ「ノドの痛みとか咳はまだ残ってるけど、本当に療養解除で大丈夫?」みたいな疑問はありました。結局、ノドの痛みは解除から1週間ほど(発症日からだと3週間弱)、咳は解除から2週間ほど(発症日からだと1か月弱)で気にならなくなりました。現在までのところ、わたしの体に後遺症的な症状は、自覚できる範囲では確認されておりません。とはいえ、コロナについては後遺症もそこそこ報告されているようです。

わたしの症例では味覚嗅覚の障害や倦怠感などの後遺症に悩まされることもなく、その点は大変幸運でした。ちなみに、わたしはワクチン接種を昨年9月に2回完了済でした。その上で今回感染したことをふまえると「ワクチンに本当に効果はあるのか?」とワクチンに疑念を持つ人が一定数現れるのはしかたない気もします。事実こうした世情を反映してか近ごろは反ワクチン団体が勢力を拡大している様子で、その種の団体に公安の捜索が入ったとニュースになりましたね。

たしかにコロナウイルスのワクチンは、オミクロン株に対しては感染予防効果が明確に下がると報告されています。一方で重症化を予防する効果についてはオミクロン株に対しても比較的保たれていることも報告されています。

なので、わたしが今回軽症だった要因としてワクチンの影響はやはり小さくなかったんじゃないかなあ、と考えるところ。まあ因果関係が本当にあるのかとか、そもそもわたしの年齢で重症化する事例はそこまで多くないはずだし、とか反論できる材料はいくらでもあるけど。ただひとつ確実に言えるのは、父がワクチン未接種の状態でコロナにかかっていたら、たとえ相手がオミクロンでも無事ではすまないだろうということ。本当に父はコロナに感染していたのか。真相は薮の中ですが、仮に今回軽症で済んだと考えるならワクチンの効果は十分にあったように感じますね。なお、父と同じくワクチンを接種していた母には発熱などの症状すら出ませんでした。感染自体しなかったのか、それとも無症候感染かまでは不明。そしてつけ加えると、ワクチンには重症化予防だけでなく後遺症を起こりにくくする作用もあるのではという話もあります(2本目の記事を参照)。わたしが後遺症に悩まされずにいるのはワクチンが奏功した結果かもしれませんね、知らんけど。

Only a Plank Between One and Perdition

今回のコロナをふり返ってみると、発症時のつらさの最大瞬間風速だけで言えば、ふつうの風邪よりは2段階くらい上、インフルよりは2段階くらい下、という感じでした。「大体は軽症」みたいに言われることの多いオミクロンですが、今回わたしの体験したものがまさに「軽症」なわけです。たしかにインフルと比べるなら発熱とかはマシだけど、ただの風邪レベルの症状でもありません。過剰に心配する必要もないけど、かといって「軽症」を甘く見るとわりと痛い目を見るかも。そしてタチがわるいのは、コロナはインフルとちがって症状が意外にダラダラとつづくこと。インフルの場合、症状のピーク時はかなりつらいもののピークを乗りこえれば尾を引かない印象があります。一方、コロナは発熱が終わったあともノド周りの症状がしぶとく残った感がありました。また後遺症がすくなからず報告されているところを見ると、症状のピークをやりすごしたあとも症状がつづく(可能性がそれなりにある)点にコロナの厄介さがあるのかなと思量。

さて、本邦でコロナに感染した人の数はすでに700万人を突破し、勢いの落ち着く気配が見えない状況です。

コロナの感染者なんていまどきめずらしいものではまったくないし、わたしの体験に希少価値はないでしょう。ただ感染者は数で見ると多く感じる一方、比率で見ると日本の人口の6%程度(2022年4月時点)で意外に多くはない感じがします。たしかにわたしの父みたいに、コロナ陽性を強く疑われる事例が統計上は捕捉されていないことを考えるとわからなくなってきます。でも新規感染者が連日5桁のレベルで報告される中で感覚が麻痺してくるけど、本邦では感染していない人の方がまだまだ圧倒的に多いわけです。「これだけ流行してるんだから」と投げやりになるのではなく、コロナを回避できるうちは個々人ができる範囲で適宜対策をしていくのがいいんじゃないでしょうか。いずれにしてもかからないのに越したことはありませんから、みなさまもゆめゆめご注意くださいませ。わたしも二度三度とかからないように今後も注意していく所存です。というか、わたしは外で食事をほとんどしないし、オミクロンからも逃げ切る気満々でいたんだけど……どうしてこうなった。