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ことのはいけばな

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花を活けるように、言葉を三十一文字の器にのせて活ける。地軸の傾いた地球に乗って、太陽の周りを一巡り。花を立て言葉を立てて、遊行します。
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2021年6月の記事一覧

ことのはいけはな 芒種 27候 『梅子黄(うめのみ黄ばむ)』

ことのはいけはな 芒種 27候 『梅子黄(うめのみ黄ばむ)』

たまに父親ということを忘れている。

そんな親なので、父の日

もうちょっと猛々しさと重厚感を求められたのだろうか。

* 雪豹の サルエルパンツ 父の日に 琥珀といふ名の 羊羹合わせて

*ともすれば ふわふわとせり 父なれば ギフトを眺め 父永遠謎(父とはなに)か?

梅雨

* ひとしきり 雨のごとくに 紫陽花の 私の中を濡らして過ぎる

*ぽたぽたと 雨垂れのする 紫陽花の 不意に色も

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ことのはいけはな 芒種 第26候『腐草為蛍』

ことのはいけはな 芒種 第26候『腐草為蛍』

「腐れたる草、蛍となる」

この言葉、ちょっと無理があるように思える。

朽ちたる草は、確かにあらゆる命を育むから、そうした連綿と繋がった命の先端で蛍は生まれ、光を放つ。植物の花がまさに光であるように。

大事なのはそこに「ファンタジー」が感じられること。そう見た方が楽しい。

蛍をもしかしたら植物の一種、或いは草の魂のように思っていたのかもしれない。

*ほ ほ ほたる 草のたましひ あくがれて

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ことのはいけはな 立夏 第20候『蚯蚓出』

ことのはいけはな 立夏 第20候『蚯蚓出』

目に青葉めめずめみえず紫の目にあやかなる文目も見えぬ

陸(おか)を引く大国主の如き名よ土を喰らいて国造りなす

氏神であやめ立てれば人形のふるき眼差し貫かれしか

紫の大き蝶の花舞を豪奢な死者の依代にして

ことのはいけはな 立夏 第19候『蛙始鳴』

ことのはいけはな 立夏 第19候『蛙始鳴』

いま何処かはずの声は原宿の野原は消えて爆ぜてしまった(白余)

黒黒と音符のように消えてったお玉杓子よ脚出る前に(白余)

手水鉢蛙の声は聴けずとも母ゐる庭の池の音する(立夏2021/白余)

ことのはいけはな;穀雨 第16候「葭始生」

ことのはいけはな;穀雨 第16候「葭始生」

花を活けるように、言葉を三十一文字の器にのせて活ける。
はなとことばを立てて相互記譜。七十二候の「ことのはとはなの旅」。

*夕まぐれあはいに燃える桜花放つひかりのにほひ立つほど

*陽の落ちて桜花ぽつぽつともしびて一日ごとに死んでゆくかも

*蒼白に堕ちゆく闇に浮びたり桜花残照指先の跡

*むらさきの空かすかにも花照らす一花一花夢に消え入る

*花あかり濡縁染むる肌白く椿象ひとつ硝子戸

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ことのはいけはな 小満 第22候『蚕起食桑』

ことのはいけはな 小満 第22候『蚕起食桑』

てふてふの生まれたばかりあやめ花咲くといふのは飛ぶといふこと(白余)

暗がりを飛び出してまた舞い戻り生まれ変わりしひとみひかるる(白余)

ひかりあび黄泉へと戻りにんげんはおどりつづけて花になるなり(白余)

ことのはいけはな 立夏 第21候『竹笋生』

ことのはいけはな 立夏 第21候『竹笋生』

http://sainotsuno.org/event/第六感劇場・太郎山編%E3%80%80躑躅忌(つつじき)/​

網膜に躑躅の花が咲きにけり霧切り裂いて顕われにけり(白余)

眼裏につつじの花は咲きつづけ白目を染めて涙をそめて(白余)

斑猫を追う青空に朱の躑躅欠けたもの皆空にあり(白余)

大躑躅 おお大躑躅 虚空より 空を充して今此処に満つ(白余)

ことのはいけはな;穀雨 第18候「牡丹華」

ことのはいけはな;穀雨 第18候「牡丹華」

花を活けるように、言葉を三十一文字の器にのせて活ける。
はなとことばを立てて相互記譜。七十二候の「ことのはとはなの旅」。

信州上田。嵐の前の前山寺(ぜんさんじ)と無言館。今にも雨が落ちてきそうな空の下でちょっと怖いくらいの藤や躑躅に見惚れた後、にわかに山は風吹き渡り、帰りの参道で背中から礫のような雨を浴びました。その風に乗って気がついたら東京へ戻っていました。

無言館では『村山槐多詩集』(窪島

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ことのはいけはな;穀雨 第17候「霜止出苗」

ことのはいけはな;穀雨 第17候「霜止出苗」

花を活けるように、言葉を三十一文字の器にのせて活ける。
はなとことばを立てて相互記譜。七十二候の「ことのはとはなの旅」。

若草の湯とは明るき伊豆石の春のみどりの湯屋染めてをり

陰影の豊かなること心根に大きな波の寄せては返す

幾重もの影また陰を潜り抜け明るきほどに胸締め付けらるる

その影は日の御子なりし我が影も椹の影も障子格子も

背後戸の翁のいろはさやけくて明くてみえず仄暗きにて

心根に

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ことのはいけはな 芒種 第25候『蟷螂生』

ことのはいけはな 芒種 第25候『蟷螂生』

たくさんの命が生まれる季節

紅花が咲き、蛍が生まれ、梅の実が色づき、、、

リッチな生命の季節。

死から生へ、

生まれた先から死へ向かう

一瞬の輝き ブライト

光の季節がジューンブライドと呼ばれるのだろう。

*新月や見えないだれかへ揺蕩いの想い留める花の束(つか)かも

*花束のBabyのようにくるまれて手渡す君も祝われていて

ことのはいけはな 小満 第24候『麦秋至』

ことのはいけはな 小満 第24候『麦秋至』

お花屋さんへ

年上のお友達の誕生日にブーケをあげたいから

目に飛び込んできたのは簪のような蕊が花火のように色っぽい和芍薬

金沢から届いたという

次に見つけたのは山紫陽花

ひかるむらさき

濃いふた色の蛍光を 紛らかしてあわいを繋げていくように

京鹿子のつぶつぶ蕾はベビーピンク、撫子のはなびらは羽毛、乙女百合のうつむき加減に花粉をかくまう

それにナルコユリの花びらのように真っ白い斑、

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ことのはいけはな 小満 第23候『紅花栄』

ことのはいけはな 小満 第23候『紅花栄』



「詩える白の手毬あぢさゐ
銀葉の雨情の羽の抱くやう
弟切草は螺旋に巻かれた金杯を
明朝木陰で溢れさす」

純白の大頭のあぢさゐ

をいけた日は、紅花栄うという日であった。

白と赤は、源平より前から

男と女

精液と経血

そういうならわし

夕焼けに染まった紅花畑を今でも覚えている

こんな大潮の夜 夜陰に乗じて白い雲が川霧となって

丘を包みこむ

(うた)

宵闇に

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ことのはいけはな;晴明 第15候「虹始見」

ことのはいけはな;晴明 第15候「虹始見」

花を活けるように、言葉を三十一文字の器にのせて活ける。
はなとことばを立てて相互記譜。七十二候の「ことのはとはなの旅」。

会津東山温泉『向瀧』。

予約のとき伺うと、うちの桜はまだちょっと早いとのことだった。

ついてみるとまだ二分から三分咲き。

夕暮れになってみると 驚いたことに、蕾は次々開き、その白さはまるで昼の光を蓄えてちりちりと燃えているよう。夜の青が混じっていつまでもぼんやり明るい。

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