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ことのはいけはな;晴明 第15候「虹始見」

花を活けるように、言葉を三十一文字の器にのせて活ける。
はなとことばを立てて相互記譜。七十二候の「ことのはとはなの旅」。


会津東山温泉『向瀧』。

予約のとき伺うと、うちの桜はまだちょっと早いとのことだった。

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ついてみるとまだ二分から三分咲き。


夕暮れになってみると 驚いたことに、蕾は次々開き、その白さはまるで昼の光を蓄えてちりちりと燃えているよう。夜の青が混じっていつまでもぼんやり明るい。

部屋からはガラス一枚へだてて花の彼らの爆ぜていくのをみることができる。届きそうで届かない距離。その速さにも。

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翌日は雨。咲いた花、咲きかけの、重たげに雨を吸った花々は 丸くやや押し潰されがちに濡れそぼっていた。だが、開花は止まらない。むしろ思い切り吸い込んで待っている。

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*たそがれのあはいの華はうたうたい硝子戸一枚指先の痕

*懇ろに宵闇の前(さき)花招きくれないにほふねむり御室の

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*西行の往生おもひ花万朶しとしとと降る雨なえやかに

*往生の花びら染めし虹色の 蛇ひそむといふ夕闇の淵

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夜明け前、何度か目が覚めて、布団から桜を見ている。

青い青い時間。

鳥目覚めて山間をまず声で飛ぶ。

桜も聞いているだろう。

早くから目覚めている花たちは、瞑想して調律している。

そうして太陽が山の端から射し込んで、一斉に身を躍らせた。

桜は歌う。

そして舞い踊る。

なんて誇らしく、朗らかで、色っぽいのだろう。

なんて高らかで、溶け合って、全て差し出すのだろう。


 *向かい瀧桜は虹の色見せてお湯もさくらも夢のあとさき

 *さようなら櫻見上げて佇めば一陣の風この身突き抜け






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