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まなかい ローカル72候マラソン

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まなかい… 行きかいの風景を24節気72候を手すりに 放してしるべとします。                                        万葉集        …
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2020年6月の記事一覧

夏至;第28候・乃東枯(なつかれくさかるる)

夏至;第28候・乃東枯(なつかれくさかるる)

夏至の前の日、故郷へ。この時期に帰ってきたのは久しぶりだ。

ここのところ帰れば必ず立ち寄る棚田から見た夕景。18時でまだこんなに明るい。

北欧などでは夏至の朝、森に入って花を摘み飾ったり冠を作ったりして身につける。

夏至の日の朝露はエネルギーが高く、朝露と朝陽を浴びた花々はとりわけ美しく幸福を招くとされる。そんな意味合いも込めて母親へ贈る花を束ねた。

乃東=夏枯草=靫草はシソの仲間。そうい

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芒種 第27候・梅子黄(うめのみきばむ)

芒種 第27候・梅子黄(うめのみきばむ)

「ながめる」とは 永い雨、長雨(ながめ)から来ているという。

間断なく降り続く雨を眺めていると そこはかないぼんやりしたときが過ぎていく。焦点はどこか遠くなっていく。

夜半過ぎても雨が降り続いていたりすると もぞもぞ起き出して 手近な異界である書物を読みたくなる 五月雨に濡れそぼる五月闇。雨は日常を異界にしてくれるから、雨音を聴きながら書物という森を踏み迷うにはうってつけだ。

「梅子黄 うめ

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芒種 第26候・腐草為蛍(くされたるくさほたるとなる)

芒種 第26候・腐草為蛍(くされたるくさほたるとなる)

腐れたる草が蛍となる。

腐った草が蛍になるなんて、、、ちょっと不思議です。

草が腐って、蛍になるのではなく、腐った草も蛍の命の部分になっている。草の中に沢山の細胞が生きていました。それぞれに生命誌が刻まれています。蛍も沢山の細胞が形作っています。かたちは一度無くなりますが、魂はずっと転生していく。個体と固体の話ではなく、生き物は全て死に、そうして次の命の場所になるということ。日本の言葉では「死

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芒種;第25候・螳螂生(かまきりしょうず)

芒種;第25候・螳螂生(かまきりしょうず)

冷房が効かないので

窓を開けて車を走らせていると

どこからやってきたのか

蟷螂の子がフロントガラスを斜めに翔けていく

たった一匹

梅雨入り前の途方も無く広い空を眼下に

二つの鎌を立て

身を反らせて

三角まなこはみどりの粒で

あんなにも軽々とあらわれて

もう会えない

花を活ける仕事をしていると

稀に蟷螂の卵が付いている枝がある

捨てられないのでバルコニーなどに保管しておくと

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小満;第24候・麦秋至(むぎのときいたる)

小満;第24候・麦秋至(むぎのときいたる)

麦は自給率も低いし、稲に比べると馴染みが薄い。金色の麦畑を見たことも数えるほどしかない。でも見かけた時はやっぱり美しくて記憶に残っている。

パンは好きだし、ケーキも好き。コーヒーとケーキはやっぱり合う。パスタもクラフトビールも好きだ。ユーラシアの行事を繙いていると稲と麦という東西の主食の違いが目に見えるものの差を生んでいるのがわかるから興味深い。

中国から伝わった七夕(しちせき)の行事ではかつ

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小満;第23候・紅花栄(べにばなさかう)

小満;第23候・紅花栄(べにばなさかう)

 中東あるいはエジプト原産と言われるベニバナ、本紅で有名な紅花の咲くのはまだ先。

「半夏ひとつ咲」ともいうから咲きはじめは夏至の末候。

  まゆはきを俤(おもかげ)にして紅粉(べに)の花(芭蕉)

  行く末は誰が肌触れむ紅粉の花(芭蕉)

と奥の細道巡礼で芭蕉が詠んだのは、今の日付に換算すると7月中旬となるようだ。

 まゆはきは「眉掃き」「眉刷毛」で、おしろいを叩いた後 眉についたそれを払

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小満;第22候・蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)

小満;第22候・蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)

生まれ育った地域はかつて養蚕がとても盛んな土地柄で、小学生の頃は隣もお向かいも裏の家も田畑と養蚕を営んでいた。

隠し部屋のようになっていて使うときだけ降ろす階段が、土間続きに設えられていて、それを不思議な感覚で登った記憶がある。登ると蚕室は囲炉裏や寝室のある一階の上ほぼ全てという広さで、そんな板張りのガランとした「お蚕さん」の蚕室に何度か入れてもらったことがあるけど、何百匹といる蚕が草を食む音に

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立夏;第21候・竹笋生(たけのこしょうず)

立夏;第21候・竹笋生(たけのこしょうず)

筍の旬は10日ほどだという。ここから「旬」という概念も生まれているそうだ。

1日で1メートル伸びるなんて、

国語の「たけ」は猛々しいとか、高い、逞しいなどとも通じている。

竹の子のあのギュッと詰まった円すい形

竹の皮に包まれ 土を突き抜け

圧縮され凝縮されたエネルギーをいただく

一日1メートル伸びる その節の間の余白

水の通り道 

空への意志

かぐや姫さえも孕んで

目覚めたばか

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立夏;第20候・蚯蚓出(みみずいづる)

立夏;第20候・蚯蚓出(みみずいづる)

分解者の代表 蚯蚓。特にこの時期、彼らの役割を改めて思い出す。

場所は世田谷ものづくり学校。

ぽくぽくと土を耕してくれて、年々土は豊かになっていく。

人の手は最小限にしている都市では珍しい場所。足元に広がっている見えない営みが命を支えている。

蚯蚓もまた死んだら次の命の場所になる。

立夏;第19候・蛙始鳴(かわずはじめてなく)

立夏;第19候・蛙始鳴(かわずはじめてなく)

(写真は鹿島神宮の御手洗池横の菖蒲園。匂い菖蒲が植えられている。そこでザリガニ釣りに興ずる家族がいた。)

立夏。思い立って銚子まで車を走らせ、twitterを見て敬愛する能楽師の住まいだったところをなぜか見に行く。そこから鹿島神宮を廻って帰宅するというショートトリップ。コロナで高速道路も街もスカスカ。海を見たかった、、、のかも知れない。

着いたのは海鹿島と呼ばれる 南に犬吠埼灯台を臨む場所。か

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穀雨 第18候・牡丹華(ぼたんはなさく)

穀雨 第18候・牡丹華(ぼたんはなさく)

牡丹や文目が咲くともう夏だ。

「あなた、牡丹は赤じゃなきゃ だめよ」と長年バルコニーのお庭をお手入れさせていただいているお客様に言われたことがあった。別の場所にあった牡丹を随分前に移植して自宅のバルコニーに欲しいと言われたことがあって、以来その2株だけだったので、珍しいと思って黄色い牡丹をお持ちした時だった。

言われてみれば「牡丹」という名前には「丹」が入っていて赤なのだ。クラシックなものは襖

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穀雨 第17候・霜止出苗(しもやんでなえいづる)

穀雨 第17候・霜止出苗(しもやんでなえいづる)

4月25日。個人邸の造園引渡しがあった。

門柱と表札、インターフォンを取り付けて、足元の灌木地被類などを納めた。

霜やんで苗出づる。

緑は穀雨の雨を受けて広がり大いに繁茂するタイミング。

お施主さんご夫婦と庭師二人とで眺める。お家ができて引越しを挟んでずっと現場の進捗をご家族皆さんが見てくれていた。コロナによる自粛のタイミングだったから。友人である施主が一番よく見ていてくれたと思う。都度対

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