colyuu

あたまに浮かんでくる物語。

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あたまに浮かんでくる物語。

マガジン

  • 龍神様とのお約束

    頭の中に流れてくる物語を文章にしてます。

最近の記事

信じる力(123

気がつくと またあの裸に近い人たちが 愛しい眼差しで生きている世界にいた。 あの女の人が 私のところへ歩んできた。 「おかえりなさい。」 そういうと ふわっと私の中にとけこんだ。 なんとも暖かく 内側から愛しさが溢れてくる。 手を挙げるそれが 口を開こうとするそれが 息を吐くそれが 愛しさで溢れてしまう。 「あなたはあなたを思い出したのね。」 そう内側から あの女の人の声が響く。 それだけで 十分だったのかもしれない。 すると横に男の人がいた。 「おかえり

    • あの場所で(122

      オオミヤマ様と私は馬に揺られながら 山道を走った。 オオツカミヤ様と数名の方々も 途中まで一緒にいた。 「もう少しだ。」 そうオオミヤマ様がおっしゃった。 まだ暗いけれど 鳥の声が山に響いて美しい。 なんだか先の方が 茜色に染まってきたかと思うと 山が一斉にシーンと静まり返った。 とても不思議に感じていると 開けた場所にでた。 「ついたぞ。」 そうオオミヤマ様がおっしゃると 綺麗に太陽の光が上がってきた。 「美しいだろう。」 太陽がこんな風に上がるのを見た

      • ここから(121

        オオミヤマ様は 私の手を強く握り オオツカミヤ様のところまで向かわれた。 私はその手の中に握る 勾玉とオオミヤマ様の手を 暖かく感じた。 「ヒノコ。昔 オオスガがいっておった。 ヒノコとヒカホは とても似ているが 全然違う。 ヒカホは自分のことをよくわかっておる。 しかし ヒノコは自分の力の強さをわかっておらぬ。 でもそれは 私でもそうだ。 あの子の奥には 誰もが入ることができない 静かな湖がずっと存在しており そこが計り知れない力を持っている。 あの子がその

        • 運ばれる先へ(120

          「セナ。彼の方はアッディーヤだった。。 私はサッディーヤ。 だとしたら私はだれ。 私は私がわからなくなる。」 「君は君を思い出しただけだ。 君は君で何も変わらない。 ただ思い出しただけだ。 そこがもう一つの君達の創り上げる世界だし その世界を創り上げるためにここにきている。 それが君を生きることだ。 ヒノコ。君なら大丈夫。」 そういうと、ふわっと セナが消えたかと思うと 扉が勢いよく開いた。 「ヒノコ!こちらへこい!」 オオツカミヤ様が扉を勢いよく開いて そう

        信じる力(123

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        • 龍神様とのお約束
          104本

        記事

          瞳の奥の場(119

          その男性は私の瞳の奥を 見つめてくるようだった。 とても不思議。 どちらがどちらの目かわからなくなってくる。 「会いたかったよ。サッディーヤ。」 そう頭の中に響いてきた。 「サッディーヤ?それは私の名前?」 「名前じゃないよ。 サッディーヤはサッディーヤなんだ。 名前は変わるだろ。 サッディーヤは変わらない。」 「あなたは誰?」 「ぼくかい?僕は君の中にいる僕さ。」 「私の中にいる?」 「ここは君の中の世界だからね。」 「私の中の世界?どう言うこと?」

          瞳の奥の場(119

          約束の先の世界(118

          ヒビミカホは少しの間 私を気遣ってくださり 準備に戻られた。 私はこのまま ここから どこにいったい向かうのかしら。 「東の地だよ。」 後ろを振り返るとセナがいた。 「セナ。私を守らなくてはいけないのは あなたと共にいるからなの?」 私は真っ直ぐとセナを見つめた。 セナは見つめ返したまま 瞬きもせずにこう言った。 「そなたの母親だ。」 「お母さま?」 私はびっくりした。 「そなたの母親も直系の龍族だが そなた達を守り、血筋を守る為にも囚われた。 いや、一

          約束の先の世界(118

          東の約束(117

          「オオツカミヤ様!おかえりなさいませ。」 「あぁ。 そなたがヒノコだな。」 オオツカミヤはヒノコの方を見ていった。 「ヒビミカホ。思ったよりも時間がない。 あの地はだいぶ攻め入れられている。」 あの地? 攻め入れられている? 「じい様は?婆様は? ヒカホは無事なのでしょうか?」 私はオオツカミヤのそばに行って 腕を掴んで聞いていた。 私の手は震えていた。 「ヒノコ様。今は何も言えぬ。 わからぬのだ。 ただ知らせだけは届いている。 ヒカホは無事だ。 あの子は剱

          東の約束(117

          選ばれる血(116

          外はもう静かで 表で火の音だけがしていた。 出てみると トウムがいた。 「ヒノコ様。よく眠られましたか?」 「えぇ。ありがとう。もう夜なのね。 ここで火の番をしてくださっていたの?」 「星を見上げていると、あっという間に 時間が過ぎます。 少しはお疲れが取れましたか?」 「ありがとう。ゆっくり横になれました。」 「ヒノコ様。お目覚めになられましたか?」 ヒビミカホ様がいらっしゃった。 「トウム。ありがとう。もう火の番は よくってよ。私に変わってあなたも おやす

          選ばれる血(116

          わからないまま進む(115

          私はその建物の中で横になった。 心の揺らぎ。 私は揺らいでばかりいるわ。 疲れすぎているのか 久しぶりに土地の上で横になり瞼を閉じると 同じくそのまま眠りについてしまった。 まだ暗い道を一人で歩いている。 ここはどこだろう。 光も見えない 足元さえも見えない どこさへ分からない。 「ここだよ。」 そう聞こえると 視界が広がり あの地の海にいた。 私の大好きな浜だ。 私の大好きな香りに音に ピンクの貝殻。 戻ってきたのかしら!! 「残念。戻ってはないさ。」

          わからないまま進む(115

          日の音(114

          私はヒビミカホ様の後をついて歩いた。 ヒビミカホ様は何もお話しされない。 ただただその後ろをついて歩いた。 ヒビミカホ様の後ろをついて歩いていると なんだか音がしてくる。 その音がどんな音なのか うまく伝えられない。 でも何か音がしてくる。 「日の音よ」 ヒビミカホ様がおっしゃった。 私がびっくりしてると 頭の中に響いてきた。 「ヒカホ様。ご安心下さい。 私もまだその力が少しだけれど 残っております。 この地ではあまり使わないようには しております。 私

          日の音(114

          心の風(113

          久しぶりの木々の香り。 土地の暖かい大気。 地を踏み締めるって 気持ちいい。 足の裏の傷はまだ少し痛むけれど こうやって大地を踏んでいるのは 久しぶりな気がした。 「トウム。 海の上は最近どう?」 カヤがトウムに聞いた。 「東へ上がる風が強くなっている。」 「そちらもなのね。 いよいよ始まるのかしら。」 「何がだ?」 カヤは驚いてトウムを見た。 「知らないの?トウム。 東の地の半分は異国が入っていることを。」 「君だって異国だろ。 僕だってそうだよ。」

          心の風(113

          日が昇る(112

          「ヒノコ様!ヒノコ様! 見えてまいりました!」 うっすらと遠くに岸辺が見えてきた。 まだあたりは薄暗く ただ香りだけが朝の香りを風が 運んでくる。 「ちょうど朝日が昇る頃に あの岸へ着くことになりそうです。」 そうトウムが話すと 岸の先に見える山の向こう側の 空から色が 暖かい色に少しだけ変わってきている気がした。 「これからどこに向かうのですか?」 「新しく住む土地です。」 「新しいと言っても、あのもの達も 以前はヒノコ様と同じ地に住んでいたもの達。 安心して

          日が昇る(112

          見上げるつながり(111

          どのくらい時間がたったのかも 日にちがたったのかもわからない けれど 船の上で寝ることにはなれたし 夜の星空はとても美しく そしてなんだか懐かしくも感じた。 「ヒノコ様。 ヒノコ様はどの星がお好きですか? 私は決まっているのです。」 「トウムが好きな星はどれなのですか?」 「あれです!一等星の左下に輝く星。 あれを見ていると なんだかワクワクしてたまらないのです。」 「星を見てワクワクするとはどういうこと?」 「ヒノコ様は星を見てワクワクしないのですか? 驚いた

          見上げるつながり(111

          一つ星(110)

          どのくらい時間が過ぎたかわからない。 揺れの中で意識は朦朧としていた。 「ヒノコ様。こちらへ。」 トウムが手を差し出した。 とても小さな手だった。 私より小さいのではないかしら。 でもその手を握ると、柔らかくて暖かかった。 「やっと波も落ち着いてまいりました。 よく頑張られた。 あの波の中、耐えられる方は中々おりませぬ。」 ふと 婆様が話してくれたことを思い出した。 私達は海を渡りながら、東へ東へと 一つ星を目指して航海した。と 私達のご先祖様は 海を渡りな

          一つ星(110)

          耳の奥に響く声(109

          ヒノコ しっかりしろ。 そちら側に行くではない。 頭の中で声が響いた。 ふと目を開けると 船は揺れ、雲行きは怪しく、波は 荒々しく波立っていた。 立つではない。ヒノコ。 また、頭の中に声が響く。 じい様の声だ。 「ヒノコ様。その場で立ってはなりせぬ。 しっかりとしがみついて…………… 立ちあがろうとしたヒノコに気づいた トウムは叫んだが 風の音が激しくて トウムの声が途中から聞こえない。 けれど ヒノコの心のうちは なぜかとてもしずまっていた。 ヒノコ

          耳の奥に響く声(109

          北へ(108

          瞼が重く感じながら ゆっくりと瞳を開けてみた。 青空が広がる 眩しくて しっかり目を開けない。 潮風の香り 頬にあたる少しひんやりとした 空気。 でもどこか気持ち良い。 「お目覚めになられましたか。」 トウムが言った。 「ここはどこなのでしょうか」 「北に向かっております。」 「北とは?」 「今、私達のお役割としては 霊巫女様をお守りする事だけでございます。 北に向かい、あちらで密かに暮らしている者たちと合流致します。」 波は穏やかで 船の揺れもあまり気にな

          北へ(108