東の約束(117

「オオツカミヤ様!おかえりなさいませ。」

「あぁ。
そなたがヒノコだな。」

オオツカミヤはヒノコの方を見ていった。

「ヒビミカホ。思ったよりも時間がない。
あの地はだいぶ攻め入れられている。」

あの地?
攻め入れられている?

「じい様は?婆様は?
ヒカホは無事なのでしょうか?」

私はオオツカミヤのそばに行って
腕を掴んで聞いていた。

私の手は震えていた。

「ヒノコ様。今は何も言えぬ。
わからぬのだ。
ただ知らせだけは届いている。

ヒカホは無事だ。
あの子は剱を守り、皆と熊野の地へ向かった。

サハクと一緒であれば心配はいらぬ。」

「サハクのこともご存知じなのですね。

ヒカホ。よかった。。」

「ヒノコ様。そなたのことを今度は
わたくしとヒビミカホでお守りいたす。

明日の日が明けるまでに
ここを出なければならぬ。

三人でだ。

ヒビミカホ。準備はできておるか。」

「できております。」

「ヒノコ様。皆が狙っておるのは
そなたの血のみ。
もうこの地に攻め入ってくるのも時間の問題。」

「なぜそんなに私の血が
欲しいものがいらっしゃるのでしょうか。

沢山の命と引き換えに
私が守られることなんて
。。。」

身体が震えて涙が出てきそう。

「ヒノコ様。。」

ヒビミカホが優しい手で
私の肩をなで
手を握ってくれた。

「ヒノコ様。何も自身を咎める必要は
ありませぬ。
定めなだけで
誰か。というのが
ヒノコ様だった。

それだけでございます。」

そういうとオオツカミヤ様は立ち上がり
こう言った。

「ヒビミカホ。あまり時間がない。
そなたも支度をすませて
いつでも出れるようにいたせ。」

「分かりました。」

そう言うと、オオツカミヤ様は出て行かれた。

「オオツカミヤ様は何も悪くないの。
言い方はきつく聞こえて
しまわれるかもしれませぬが
優しいお方でございます。」

私の瞳からは涙が流れていた。

そっとヒビミカホは
私を抱き寄せた。

「ヒノコ様。
大丈夫でございます。
私達の間には龍族の血が繋がっております。

例えお会いできなくても
もし仮に命がこの地から
離れていたとしても
私達はずっとずっと前から
繋がっております。

ヒノコ様。ご存知でしょうか?

私達龍族達は
遠く遠く離れた地で
離れ離れになったことを。

その時
東の地で会おう。

そう約束して私達民族はそれぞれ東を目指して
進み続けた。と。

私も婆様から教わりました。

私達の約束は
終わりませぬ。

いつかまた必ず会えます。」

セナみたいなことをおっしゃるな。
と涙しながら感じた。

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