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龍神様とのお約束

104
頭の中に流れてくる物語を文章にしてます。
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記事一覧

形見(106

オオミヤマは
マナヒへと向かった

その途中
内側から震えるように
絞り出すような
涙が溢れてきた

ヒノコの御霊を
守りたいと
強く強く思った

離れる苦しさと共に
そばで守れない苦しさが
オオミヤマを襲った

オオミヤマは
本当は
そばにいながら
ヒノコを守りたかったのだ

だが
オオミヤマは向かわなくていけない
オオミヤマの願いとは違う形で
ヒノコを守らなければならなかった

マナヒへ着くと

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覚えている感覚(105

「いいか霊巫女。ここからは

この者たちについていくのだ。

わたしは一度、マナヒへ戻る。」

「婆様は?爺様は?イヨ達は無事なのでしょうか!!」

霊巫女はオオミヤマの腕を

力強く掴んでうったえるように伝えた。

オオミヤマは霊巫女のその手をつかみ

はなし、霊巫女を抱き寄せた。

「霊巫女。必ず必ずそなたを

わたしは守る。

今度こそ、そなたの命は

私がお守りする。

みな、そなたの命を

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大穴(104

オオアマとイヨは龍山へと登った。

そこには大きな大きな穴のようなものがあった。

「ここか。。」

オオアマが言った。

「オオアマ様。ここからは私は入れませぬ。
イヨ様をお守りするので
オオアマ様いかれよ。
ここまでくれば
誰も追いかけては来れないはず。」

イヨはオオアマの方をみた。

オオアマは少し沈黙した後
口を開いた。

「イヨはわたしが守る。
イヨと共におこなう。」

白髪の男はオオ

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握る手(102

オオアマはマナヒに走り向かった。

イヨはその頃すでに

社に向かっていた。

オオアマがマナヒに裏手から

ついた頃には

マナヒから煙が出ていた。

「なんだこのへんな匂いは」

このままでは
マナヒにはいけない。

イヨはどこにいる。。

ふとオオアマはイヨがマナヒに

いない事を感じた。

イヨはここにいない。

わたしは龍の玉を守る。

オオアマは龍山へと向かった。

「イヨ様!イヨ様!

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意識の道(101

「オオスガ様ー!オオスガ様!」

「どうしたのだ。わたしはここにいる。」

「大変でございます

マナヒが!

マナヒが攻められました」

「そんな!オオアマは?」

「オオアマ様はもうマナヒに向かわれております。」

「まさか

まさかこんなにはやく来るとは…」

どうか。どうか

オオミヤマがここまで来るのに

間に合って欲しい。

そう願った。

「ここにいるもの達を集めよ!

そなたは、オ

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行く道を共に(100

とにかく走り続けた霊巫女だった。

あたりは薄暗くなり周りの風景も

見えにくくなっていた。

追いかけてくるもの達は

木々の道に苦戦してか

中々霊巫女については来れなかった。

けれど霊巫女は必死に走り続けた。

すると、その先の方から

白い煙のようなものが立ち込めていた。

驚いていたら、それは

なんとマナヒからだった。

霊巫女はびっくりして向かうと

火の粉がそこから飛んでいて

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進む道(99

霊巫女は帰りながらセナの言葉を

思い出していた。

これから進む道を自ら決める。

それはどう言うことかしら。

山道の中を歩きながら

葉のゆらめきの間から差し込む光が

道を照らすようで

とても美しかった。

その美しさの上をそのまま

歩きたい。と霊巫女は思った。

その時

ゴロゴロォと低い音が遠くからしてきた。

それと同時に、先ほどまで

光に道が照らされていたと思っていたのに

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“ここ”に刻む(98

「霊巫女。そなたは姿が変われば

自分が変わると思っている。

それは本当の姿ではない。

本当の姿というのは

目に見えるものではない。

見えないけれどあるものなのだ。

私達龍神はその道を司る。

もし、今の姿ではない身で

ヒカホに会ったとしても

そなた達に刻まれたものは

その道が繋げてくれる。

それが私達の役割の一つでもある。

そうして繋がれた時に

姿形が違えども

お互いはっ

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忘れはしない(97

霊巫女はその時の風景をセナに伝えた。

セナは海を見ながら微笑みながら話を聞いていた。

「霊巫女。海はなぜ冷たいのかなぁ。」

突然セナがそう言った。

「海だから冷たいのではないかしら。」

セナは霊巫女を見て笑った。

「それは、なぜ。という答えにはなってない。
いや。海は冷たい。という前提のもとであるならば、それが答えなのかもしれないな。」

また、海を見ながらセナは笑っていた。

「冷た

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いつかの風景(96

「婆様。わたしはこれから何をしたら良いのでしょうか。ヒカホの為にも、これからの私達の為にも、私は最善を尽くしたく思います。」

マナヒへと向かいながら霊巫女は言った。
婆様は立ち止まって霊巫女に向かって言った。

「霊巫女様。儀式は次の新月でございます。」

「そんなに早く。。。」

「もう時間がございませぬ。霊巫女様には
残りただ一つ、しなくてはいけない事がございます。

私達女にしかできぬ祈り

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歩む道を信じぬく(95

船が去るのを見守り

涙を流す霊巫女の肩に

婆様は優しく触れた。

「婆様。。。」

「霊巫女様。ヒカホの心も霊巫女様の心も

繋がっております。

マナヒマナハレマナヒカヤ
マナハレヒカヤマナハレヒ

そなたはわたし
わたしはそなた
そなたの歩む道を
必ず私が守る

この言葉には
言い伝えがございます。

先人達は共に生き
共に思いを交わし
共に過ごしておられた

共にあることの強さを
共にあ

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いつか(94

オオスガはオオアマとイヨ、ヒカホ、サハク

そして婆様を呼び、霊巫女の儀を

次の新月にすると告げた。

もうすでに、月はかけ始めている。

新月まで、もう数日しかない。

「そんなにはやく。。。」

婆様が言われた。

「時がない。サハクとヒカホには

いそいでミトに戻ってもらい

私達は早急に準備にとりかかる。」

「しかし、霊巫女の準備は…

あの子はまだ何も知りませぬ。」

「霊巫女には、

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心から流れる涙(93

「ヒカホ。」

「はい。」

「そなたには、つらい事かもしれぬが

このままミトへと戻って欲しい。」

「え…。霊巫女様にまだお会いしておりませぬ。」

「あぁ。すまぬ。

しかし、事が思った以上に早く進んでいる。

そなたはサハクと劔と共にカムイへ

向かって欲しい。」

ヒカホは言葉を出せなかった。

霊巫女に会いたい気持ち。

一番近しい人に、やっと会えると

思っていた。誰よりも会いたいと

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間を進む(92

「オオアマ。

答えは急いで見つけるものではない。

その時がきたら

自然とあらわれてくる。

そなたはそなたの道を

歩めば、間違うことはない。」

「オオスガ様。

わたしにはまだ答えが何かは分かりませぬ。

ただどんな事があっても

どんな形だろうとも

イヨ様はお守りいたします。」

オオスガは優しく微笑んだ。

「さぁ。

儀式についてだ。

海の民達からの知らせは、意味がある。

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