行く道を共に(100
とにかく走り続けた霊巫女だった。
あたりは薄暗くなり周りの風景も
見えにくくなっていた。
追いかけてくるもの達は
木々の道に苦戦してか
中々霊巫女については来れなかった。
けれど霊巫女は必死に走り続けた。
すると、その先の方から
白い煙のようなものが立ち込めていた。
驚いていたら、それは
なんとマナヒからだった。
霊巫女はびっくりして向かうと
火の粉がそこから飛んでいて
何人もの女の人達が倒れていた。
そんな景色は今まで見たことがなかった。
霊巫女は婆様の心配をして
行こうとしたけれど
そこにも、何人もの男の人達の姿も見えて
霊巫女はマナヒまで降りることが
できなかった。
降りる事も戻る事もできずにいると
追いかけてきたもの達が近づいてきた。
けれど
もうあとは
小さな崖を降りてマナヒに行くしかない。
男達は追いかけてくる。
霊巫女は崖まで来たけれど
もう逃げ道はなかった。
ここを飛び降りれば
あとはマナヒへの道しかない。
このままここにいるわけにもいかない。
どうしようか悩んでいたら
“左に思いっきり走って飛び降りろ”
そう心から声が聞こえた。
霊巫女は一生懸命左の方へと走り
崖になっているところまで来ると
後ろを振り返る事もなく
飛び降りた。
足元には石がたくさん落ちていて
霊巫女は落ちてそのまま
転がり身体全身を打ちつけた。
「霊巫女が逃げたぞー!!」
その時、崖の上から男達が叫び
同じく崖を飛び降りようとした。
霊巫女は這うように足を引きずり
走ったが、崖を飛び降りた
男達に追いつかれてしまった。
そのうちの一番背の高い
身体のしっかりした男が
棒のようなものを振りかざして
霊巫女を叩きつけようとした。
その時体の大きい男性が霊巫女の前に
立ちはだかり霊巫女を守った。
「ここは私が守る。そのまま東に逃げるのだ。」
霊巫女は一生懸命逃げた。
その男性はあっという間に
追いかけてきた男性達の気を失わせて
霊巫女に駆け寄った。
「あ、あなた様は。。。」
「今はしゃべるではない。
とにかくこのまま走り続けられよ。」
そう言うと
二人で走り続けた。
長く走り続けた後
岩場の洞穴のような場所があり
誰も追いかけてもこない。
煙も見えなくなったところで
二人は立ち止まり隠れた。
「いっまいな、何があったのですか?
あ、あなた様はいったい。。」
「わたくしはオオミヤマだ。
ヒカホやサハクと共に住んでいる。
今は全ては、話せぬが
みなそなたの命を狙っている。」
「私の命を?どう言う事なのでしょうか。」
「異国のものがきおったのだ。
もう少し遅いかと思っていたが
準備のところを狙ってきおった。
霊巫女様の儀の前に、この地を
火の海にしようと考えている。」
「ど、どう言う事でしょうか?」
「霊巫女。よく聞くのだ。
今は詳しくは話せぬが、私が必ず
そなたを守る。オオスガとはそう約束
しておる。」
「爺様は?オオアマ様やイヨは?」
「オオスガは戦っておる。
オオアマとイヨは龍の玉を守りに逃げておる。
イヨにはオオアマがついておる。
そなたは、私と共に逃げるのだ。
ここからの道が少し険しくなる。
後もう少し頑張れば
船が用意してある。
そこまで走り続けるのだ。
そう言うと、オオミヤマは霊巫女の手を引き
走り出した。
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