見上げるつながり(111
どのくらい時間がたったのかも
わからない
けれど
船の上で寝ることにはなれたし
夜の星空はとても美しく
そしてなんだか懐かしくも感じた。
「ヒノコ様。
ヒノコ様はどの星がお好きですか?
私は決まっているのです。」
「トウムが好きな星はどれなのですか?」
「あれです!一等星の左下に輝く星。
あれを見ていると
なんだかワクワクしてたまらないのです。」
「星を見てワクワクするとはどういうこと?」
「ヒノコ様は星を見てワクワクしないのですか?
驚いた。そんな人がいるのですね!」
「ワクワク。かはわからないけれど
ホッとする星はありますよ。」
「みんなそれぞれに星がある。
昔おっとうが教えてくれた。
船に乗るのなら
必ず、風と話しなさい。
そして星が道をつくる。
風と仲良くしたら、その星の道の上に
乗せてくれる。
その道の上に乗れるように
風と話すんだ。
トウム。風も海も怖くはない。
嵐だって星に乗るための道だ。
だから避けようとするな。
向かっていくんだ。
これも星の道の上。
その上に乗っている。
じい様達はそうやって
皆を守り
皆を安心させ
皆を導くすべてに感謝を捧げた
避けよう。とするその心を
風は読む。
だから
安心して嵐でもその風に向かって乗るんだ。
って。
今でも全く怖くない。とは
言わないけれど
嵐の時はいつもおっとうを感じます。」
「お父様はどちらへ?」
「わかりませぬ。ある日から帰ってきていない。
私達海で暮らすものには仕方のない定め。
どこかの海の上にいる事を願ってます。
でもヒノコ様。
私達は星の道の上。
おっとうは、私があの星を見るのが好きなことを
知っております。
いつもトウムはあの星を見てると
顔が輝いているな。と
おっしゃってました。
なのでおっとうも
あの星を見つけるたびに
私の輝く顔を思い出すはず。
だから
私はあの星を見上げるのが
好きなのです。
ヒノコ様。
オオミヤマ様からお言葉を頂いております。」
「なんでしょうか?」
「ここを守り切ったら、必ずむかえにいく。
と。」
胸の内側から暖かくなり
瞼が熱くなった。
溢れる涙をこぼす事なく
心の熱さを感じながら
「ありがとう。」
と。とそれだけ伝えるのでいっぱいだった。
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