選ばれる血(116

外はもう静かで
表で火の音だけがしていた。

出てみると
トウムがいた。

「ヒノコ様。よく眠られましたか?」

「えぇ。ありがとう。もう夜なのね。
ここで火の番をしてくださっていたの?」

「星を見上げていると、あっという間に
時間が過ぎます。
少しはお疲れが取れましたか?」

「ありがとう。ゆっくり横になれました。」

「ヒノコ様。お目覚めになられましたか?」

ヒビミカホ様がいらっしゃった。

「トウム。ありがとう。もう火の番は
よくってよ。私に変わってあなたも
おやすみなさい。」

「ありがとうございます。では
戻らせていただきます。」

そういうと、トウムは言ってしまった。

「さ、ヒノコ様。お戻りになられて
中でお話しいたしましょう。
今食べ物を運ばせておりますので。」

「ありがとうございます。」

私たちは
また戻り
向かい合って座った。

「お疲れは少しは取れましたか?」

「えぇ。。なんだか夢を見ていたけれど
はっきりとは覚えておりません。」

「色々な事が重なる時間をお過ごしになられて
さぞ混乱もありますでしょう。
ただ、夢は時にして混乱の中でこそ
自身の心の行く手を示してくださる事も
ありますゆえ。。」

そうおっしゃると
少し寂しげに顔を下に向けられた。

「そうだといいのですけれど」

「失礼致します。」

「ありがとう。そちらに置いておいて。」

「ねぇ様。伝言でございます。
オオツカミヤ様がもう少しで
お帰りになられるとのこと。
お伝え申し上げます。」

「ありがとう。」

カヤもまたヒビミカホに伝えると
その場を去っていった。

「もうすぐ
オオツカミヤ様がお帰りになられます。
その前に私から
ヒノコ様にお伝えしなければならない事が
あります。」

そうおっしゃると
私の方を真っ直ぐ向き直されて
黒い長い髪と真っ黒な大きな瞳が
私を捉えた。

「ヒノコ様。
お疲れのところとは思いますが
大切なことをお伝えしなくてはなりませぬ。

ヒノコ様は
私達の血のことをご存知でしょうか?」

「血のこととは?」

「私達の血の中には
龍族の血が混じっております。

もちろんもう薄くなっておるものもいる。
カヤとは母親が違うので
カヤの方は龍族の血は直接入っておりません。

ヒノコ様がいらっしゃった場所から
私達はこの地に移動してまいりました。

北からくるものと
共に生きる為にこの地に辿り着きました。」

「北から?」

「オオミヤマ様はご存知でしょうか。」

「もちろんです。」

「オオミヤマ様は北から降ってきたもの。
今からいらっしゃる
オオツカミヤ様とは同じ血系でございます。

お二人とも龍族の血も濃く
そして何より龍族直系の女性の血筋を
守る為に生きていらっしゃいます。」

「どういうことなのでしょうか?
オオミヤマ様は火をお守りされております。」

「火とはカミそのもの。
その火を生み出したのは
龍族でございます。」

「どういうことでしょうか?」

「オオツカミヤ様から
ヒノコ様のお姉様。ヒカホ様のことをお聞きしております。」

「ヒカホのことを?!」

「えぇ。ヒカホ様は、あの地にとどまり
あの地の火を守るお役割。
そしてヒノコ様は、龍族直系の血を
なんとしてでも守り通されること。

その為に、あの地にいることは危険なので
この地で一時お守りし、そしてまた向かわれる。
とお聞きいたしました。」

「なぜ、今あの地を攻める者たちが
いるのでしょうか?
私は分かりませぬ。」

「皆、あなたの血をねらっております。」

「わたくしの?!なぜに?!」

「龍族直系の血である為です。」

「ヒビミカホ様もではないのでしょうか?
そしたらヒカホだって。。
なぜ私なの?私には分かりませぬ。」

「私にもヒカホ様にも
血は流れていても
選ばれてはおりませぬ。

ヒノコ様が選ばれている。
ということです。」

「誰に?私は誰にも選ばれてなんていませぬ。」

「いえ。選ばれております。」

すると、突然扉が開き
低い声がした。

「ヒビミカホいるか?」


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