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ゆるエッセイ

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ゆるくて、軽く読めるエッセイをまとめています。
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記事一覧

畳に寝ころびながら天井を眺める

畳に寝ころびながら天井を眺める

 畳の上に寝ころぶのが好きだ。
 畳の上に仰向けに両手を左右に大きく広げて寝ころび、背中で畳の少し温度の低いひんやりとした優しさを感じながらぼんやりとするのだ。杉の木でできた天井の木目はまるで命のゆらぎのように柔らかな曲線を描き、ぼくはその模様をなぞるようにしながら眺める。

 畳の上に寝そべると、なんだか嫌なことがすべて忘れられるような気がする。リラックスして、まるで世界が自分だけのものになった

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ずっと同じ景色を見ていた

ずっと同じ景色を見ていた

 先日、インフルエンザにかかった。
 きちんと予防接種をしたにも関わらず、それでも感染し発病し、ぼくのウイルスがもとで家族全員が最終的にインフルエンザで寝込むことになった。
 もちろんぼく以外の家族もみんな予防接種をしていたのに、だ。

 程度の問題なのかもしれないけれど、こうでもあれば結局予防接種なんて単なる気休めでしかないのかもしれないな、などと考えてしまうわけだ。

 ワクチンをしない主義の

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彼女の真っ赤な顔、それはまるで未来そのもののように

彼女の真っ赤な顔、それはまるで未来そのもののように

 「一緒に走ってくれへん?」

 冬になると多くの学校の体育は持久走になる。これは今も昔もそれほど変わっていないようである。

 例に違わず娘の学校でもそれは同じのようで、去年の暮れに1000メートル走を走ったそうだ。そして、次は25分間走り続けるということでどうも走るための体力をつけたいということのようなのだ。

 ぼくに似て、娘も持久走が苦手なのだ。

 正月に走ろうと言っていたのだけれど、正

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2023年を雪国で閉じる 〜 noteの皆さん今年もありがとうございました(^^)

2023年を雪国で閉じる 〜 noteの皆さん今年もありがとうございました(^^)

 国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。

 2023年に最後に読み終えた小説が、川端康成氏の「雪国」だった。

 これまでずっと読みたいとか、いつかは読んでおかなければ、と思いながら読み残している本はたくさんあるが、この「雪国」もそのうちの一冊だった。

 2023年は、比較的本が読めない年だった。体調を崩す時期も多かったのもその原因の一つだろうし、職場が変わり環境の変化に心と体を慣れさせな

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EvernoteからUpNoteへ ~ さよなら、緑色の象

EvernoteからUpNoteへ ~ さよなら、緑色の象

 先日、ここのところ一部界隈で話題になっている? Evernoteというメモアプリを別のアプリに乗り換えた。

 Evernoteは、緑色の象の横顔のアイコンが印象的で、割と気に入っていて長年使っていたのだが、度重なる仕様変更と、超強気なサブスクリプション料金設定を利用せざるを得ない状況になったので、もう乗り換え待ったなしとなってしまったのだ。

 乗り換え先のアプリは何がよいか?

 こういうの

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殺風景な寒い部屋で小さく息をもらす

殺風景な寒い部屋で小さく息をもらす

 師走にはいり2023年、令和5年もあと残り僅かになった。

 最近しばしば胸に去来するのは、(実際まだそんなことを考えるのははやいかもしれないが)あと何回桜が見られるのかなとか、スイカに塩をかけて「ああ美味しいなぁ」という感覚をあとどれくらい得られるのか、などという侘しい感慨である。

 花見なんてものはそう毎年やるものではなし、そう思うとちゃんと桜をみる機会なんてこれまでも数えるほどしかなかっ

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若いエナジー

若いエナジー

 この秋は、訳あって妻と娘と一緒に大学の文化祭めぐりをすることになった。
 めぐり、といっても結局合計3箇所しか行けなかったのだが、どの大学の学生も、みな溢れんばかりのエネルギーを放出しており、それはぼくが遠の昔に失ってしまった大切なもののように感じられた。

 模擬店や、軽音、ダンスなどを見て、ふざけ合う学生たちの姿に出会い、

 「ああ、そうやった、そうやった」

 などと、自分の学生時代と重

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たそがれ時にたゆたう

たそがれ時にたゆたう

 夏の香りがまだ残る季節。
 見上げると、かすかに黄色く色づいた細い雲がたなびくように広がって、空を複雑で繊細な色合いに染め上げている。

 今夜は、カツオのたたきと美味しい日本酒でも買って、ゆっくりひとり酒を楽しむもう。そんな思いで、家を出て買い出しに向かう途中だった。
 池の周りでは、何人かの人とすれ違う。散歩をする人、ジョギングをする人など様々だ。

 テラスのようになったカフェの席では、2

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引き出しの中にあるもの

引き出しの中にあるもの

 仕事場に来るヤクルトの販売員さんが、こないだ新しい人に変わった。

 新人で、まだ慣れていないので、最初はマネージャーさんと一緒に担当のところを回ることになっている。

 マネージャーに促されながら、今日からよろしくお願いします、と挨拶をし、A4の自己紹介シートを手渡してくれた。

 まず、ぼくは名前を覚えようとした。なるほど、〇〇さん。そして出来得る限り頭に叩き込んだ。

 やっぱり、名前で呼

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嵐の夜に、思い出の味

嵐の夜に、思い出の味

 こないだのこと、台風が近畿地方を直撃するというその夜、久しぶりに父母の住む実家へと向かった。

 実家は職場に近くて、歩いて30分ほどの距離にあり、いつもの通勤に使う電車は止まる可能性が高いということもあり、その夜は実家に泊まることにしたのだった。

 母に泊まりに行くことを電話で伝えると、二つ返事でOKをもらえた。
 父も母も高齢で仕事もしていないため、たいていは急にいっても問題がないのである

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雨やどり

雨やどり

夏の夕立の時期、傘を持って出かけるか持たずに出かけるかは一種の賭けのようで、それを決めるほんの一瞬わずかに心が鋭敏になる。

そして、「ままよ!」とばかりにあえて傘を置いて出かけるのだ。

このところ毎日のように雲が筋肉隆々みたいな入道雲に発達し、やがて墨を溶かしたように黒々と広がりだし、そして雷がどこかでひっそりとなり始める。

そういえば、昔は雷とか真っ黒な雲が渦巻く空とか、そんな雰囲気が好き

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見えるもの、見えないもの

見えるもの、見えないもの

 その日は前々から午後休を取る予定だった。
 特に何をするとも決めてなかったんだけど、もうこの日しか休まれへんな、ということだったのだ。
 というのも、先月の土曜日に休日出勤したので、その代休消化をなければいけなくて、その消化できる期限が迫っていたからだ。

 さて、今日は帰ったら何をしようかな、などと朝のうちから妄想をはびこらせながら、うっかりすると仕事もそこそこに意識は別のところへとさまよって

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あさげの時間

あさげの時間

 記憶のひだを丁寧に解いていくとき、そこには密やかに、だけれど鮮やかに、そしてとても大切にしまい込まれている記憶がある。
 ぼくにとってのそれは、食事にまつわるストーリーに他ならない。

 生活にはいつも食べ物や食事があった。ストーリーとまでは言えないかもしれないけれど、それはもしかしたらほんの小さな記憶の断片なのかもしれないけれど、どういうわけかそういったささやかな思い出の一つひとつが、ときに自

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廃人のごとくドラマを見る。そしてやがて酩酊へ・・・

廃人のごとくドラマを見る。そしてやがて酩酊へ・・・

 酒を飲みながらドラマをみる。
 これほど有意義なことはあるだろうか、、、

 最近酒に酔いながら思うことはこのようなことである。

 今日は運動もせず、小説も思ったように書くくことができず、本も読まず、何ひとつやりたかったことができなかったな、と自己嫌悪に陥りつつも、酒に身を任せながら好きなドラマをみることが唯一の心休まるひとときなのではないかと思うのだ。

 心理学者のアドラー言った。すべての

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