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【小説】『芋粥』芥川龍之介

【小説】『芋粥』芥川龍之介

周囲から嘲弄され、子どもからも馬鹿にされる。過酷な状況の中にいる五位の微かな夢。

「芋粥を飽きるほど食べたい」

ある年の正月二日、酒の席で自分より地位の高い藤原利仁から言われる。

利仁の権威を誇示したい欲望により五位の夢は【他者の手で】いとも簡単に叶えられてしまう。五位は道中こそ芋粥を楽しみにしていた。しかし、いざ目の前に大量の芋粥が並び、食べるよう勧められた際には

と苦しむ。

周囲から

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【小説】『老人と海』ヘミングウェイ

【小説】『老人と海』ヘミングウェイ

『海の命』という話を覚えているだろうか。
父ちゃんの仇である瀬の主を殺すのかい?殺さないのかい?どっちなんだい?でお馴染みの作品である。

ちなみにあなたが、1996年度以降に小学6年生を迎えたならば、国語の学習で習っている可能性が高い。(光村図書、東京書籍の教科書に掲載されている)

あの物語には与吉じいさという老人が出てくる。彼の「千匹に一匹でいいんだ。千匹いるうち一匹を釣ればずっとこの海で生

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【小説】『変身』フランツ・カフカ

フランツ・カフカは、著書『変身』において不条理に襲われる個人を描いた。

物語の主人公グレゴール・ザムザは、ある朝巨大な毒虫に姿が変わってしまったことに気づく。経済的に厳しい家族をひとりで支えてきたグレゴール。皮肉にも、彼が働けなくなってしまったことで家族の自立を促す結果となる。
毒虫を排除した時(直接手を掛けていない所がリアル)、家族の世界に明るく暖かな兆しが感じ取られ、物語は終わりを迎える。

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【小説】『坊ちゃん』夏目漱石

【小説】『坊ちゃん』夏目漱石

久々にnoteに書きたい!と思うほど良い小説だった。教師の私にはより面白く感じられた。教師にはぜひ一読してもらいたい。夏目漱石自身が松山で教師をやっていた頃の体験を下敷きにして生み出された物語。

親譲りの無鉄砲で子供の時から損ばかりしている。

あまりにも有名なフレーズから始まるこの物語。主人公は生粋の江戸っ子、坊ちゃん。坊ちゃんは愛媛の中学校に勤める。そこにいるのは、個性豊かな教師陣。校長の狸

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【小説】純文学まとめ③

【小説】純文学まとめ③

なぜもっと早くに出会っていなかったのだろう。いや、出会っていたはずだ。大人になり、作者や時代背景についてわかることが増えたからこそ、面白く感じることができるのだろう。読めば読むほどハマっていく。3作品読み終えたので一記事更新。ネタバレにご注意を。

谷崎潤一郎『痴人の愛』面白かった…。物語は源氏物語のように譲治がナオミを育てる関係から始まる。ナオミの自我がはっきりと出て手に負えなくなり、ナオミを手

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【小説】純文学まとめ②

【小説】純文学まとめ②

最近読んだ純文学。青空文庫とソラリの運営者に感謝。

森鴎外『舞姫』現代の女性を敵に回すこと間違いなしの小説。
仕事と女性(愛情)を天秤にかけるという普遍のテーマ。そして豊太郎のどっちつかずさに終始腹が立つ(笑)「おい!そこは断れよ!」「おい!よくもそんなことが言えるな!」とツッコミながら読んだ。相沢くんは大変だっただろうなあ。
太宰治の『人間失格』でもそうだったけど、主人公の軸がなさすぎる!!

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【小説】純文学まとめ①

【小説】純文学まとめ①

「ソラリ」という青空文庫の電子書籍アプリを使い、読書をしている。

流石、「日常の中に日本文学を」と謳っているだけある。日常のちょっとした時間に読み進めることができている。

このキャッチコピーを私は気に入っている。

最近読んだ本は以下の通り。

太宰治『人間失格』何時でも誰にでも当てはまる物語。終始、人間的な弱さから起こる社会問題が描かれている。そのため、どの世代に対しても訴えかけるものがある

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【小説】『総理の夫』原田マハ

【小説】『総理の夫』原田マハ

取っつきにくい政治の話を軽やかに描く。
『本日はお日柄もよく』に続き、原田マハさんを読むのは2冊目だが、
どちらも読後感がよい。
ちなみに、『本日はお日柄もよく』に登場したスピーチライター久遠久美が『総理の夫』に名前だけ登場している。少しテンションが上がる。

この小説は、東大理学部卒、大財閥の息子で、鳥類研究をしている主人公「相馬日和」の日記形式で進んでいく。本文の中に何度も「この小説を読んでい

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【小説】『卒業ホームラン』重松清

【小説】『卒業ホームラン』重松清

父親としての自分と、監督としての自分。

この間に立たされてしまいます。どうする?!

今日は『はじめての文学 重松清』から、短編『卒業ホームラン』についてです!

主な登場人物は父である徹夫と、息子の智。重松さんはこの「父と子」の物語がいいんですよね。

徹夫は智の入学祝にグローブを買ってやり、家の近所でキャッチボールをするんです。やがてグローブの革が手になじんできたころ、智が友達を何人か家に連

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【小説】『ファミレス』重松清

【小説】『ファミレス』重松清

僕の好きな著者、重松清さんの『ファミレス』を読みました。

小説の大まかな内容としては、「オヤジの友情」「夫婦関係」「FA宣言」「食の魅力」「家族の形」「人生」などなど、様々なエッセンスが詰まった一冊になっております。
読む人によって、引っかかる場所が変わるんじゃないかな。

その中でも、僕の心に残る素敵な場面があったので、ここで紹介したいと思います。
タイトルにもあるように、金平糖のお話です

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【小説】『きみの友だち』

【小説】『きみの友だち』

「友だちってなんだろう」
そんな問いに対して、ヒントを与えてくれる小説です。

お話によって主人公が変わり、時間軸も変わります。
長編小説なのに、短編のお話が過去や未来をいったりきたりする感じ。
それなのに、最後しっかりとまとめられている。
気が付けば重松さんの世界に引き込まれていました。

この小説で引っかかった点がいくつか。

病気で友だちの由香が休み、会えない状況にて。
「寂しくないの

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