【小説】『老人と海』ヘミングウェイ
『海の命』という話を覚えているだろうか。
父ちゃんの仇である瀬の主を殺すのかい?殺さないのかい?どっちなんだい?でお馴染みの作品である。
ちなみにあなたが、1996年度以降に小学6年生を迎えたならば、国語の学習で習っている可能性が高い。(光村図書、東京書籍の教科書に掲載されている)
あの物語には与吉じいさという老人が出てくる。彼の「千匹に一匹でいいんだ。千匹いるうち一匹を釣ればずっとこの海で生きていけるよ。」という言葉からは、海と共に生きていこうとする考えが読み取れる。
こちらは『老人と海』に出てくるサンチャゴの海の捉えだ。与吉じいさやサンチャゴからは、海を愛していることが伝わってくる。それ故に達観している。海に自分の都合を押しつけない。
ああ、海に生きる老人ってどうしてこうも魅力的に映るんだろうか。
老人と聞くと、経験豊富で知恵のある人物が浮かび上がる。同じ意味の言葉、高齢者ではそういった人物像は浮かんでこない気がする。
『老人と海』は、サンチャゴという老人にとにかく痺れる一冊だった。老人サンチャゴの魅力はどこにあるのだろうか。
三日三晩カジキと戦い続けちゃうタフネスさ?
生でトビウオ食べちゃうワイルドさ?
鮫を艪漕ぎでぶん殴っちゃう強さ?
もちろんそれもある。実際屈強な老人ってカッコいい。
だが、それ以上に心の強さ(弱さ)に惹きつけられる。一人称を極めた作品だから当然と言えば当然なのだが。
このように、自分に言い聞かせている場面が沢山ある。誰もいない海に長時間いるからそうするしかなかったのかもしれないが、老人サンチャゴが自分を鼓舞して戦い続ける姿に惹きつけられ夢中で読み進めてしまった。
「ライオンの夢を見ていた」で終わる最後のシーンも、まだまだサンチャゴの挑戦は続くって感じがしていいよね。50歳でこの小説を書いたヘミングウェイ。この一文を書きたくて『老人と海』を書いたのだと思わずにいられない。自らを鼓舞するための一冊。
ああ、こんな老人になりたいな。
20代最後の歳を迎えようとしている私の感想でした。
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