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Club with Sの日レポ

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記事一覧

our home is queer community《Club with Sの日 第36回レポ》

our home is queer community《Club with Sの日 第36回レポ》

カレンダーの最後のページをめくる。
そろそろあの時期がやってくるのかと思う。
気が重くなるのは、冬季うつのせいじゃない。

年末年始。
家族と過ごす時間。
一人暮らしの雑務から解放され、家事の負担が軽減されて体力的には楽だと感じる一方、精神的には大きな荷を背負ったみたいだ。
心がカサつくのは、冬の乾燥のせいじゃない。

一番身近な人の前で、“自分”でいることができない。
一番長く一緒に過ごしてきた

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Stay Queer《Club with Sの日 第35回レポ》

Stay Queer《Club with Sの日 第35回レポ》

愛の神エロスとは、あらゆる芸術的な創造に秀でた詩人だ。
──プラトン『饗宴』

深夜。
布団に入る直前。
手首にそっと香水を吹きかける。
寝室で横になり、顔の近くに手を置くと、枕元にふわっと神秘的な香りが広がる。
そのフレグランスの名前は

“Eyes Closed”

“あらゆる差異や分裂を超越する愛”がモチーフ。
ゲイの写真家・Alasdair McLellanによる同性カップルを映した作品『

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My World's a Little Blurry《Club with Sの日 第34回レポ》

My World's a Little Blurry《Club with Sの日 第34回レポ》

Freedom is what you do with what's been done to you.
──Jean-Paul Sartre

秋も深まり。
肌寒くなってきた夜。
紅茶で体を温めながら。
静謐な空間で聴くYo La Tengoの音楽を。
その時間の味わいを、分かち合える人がいたらどんなに幸せだろう。

だけど現実は、周りに洋楽を聴く同世代の人なんてまずいなくて、サウンドの魅力を語

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imperfection is perfection《Club with Sの日 第33回レポ》

imperfection is perfection《Club with Sの日 第33回レポ》

“カミングアウト”と聞いて君は何を想像する?

迷い。
不安。
恐怖。
震え。
緊張。
解放。
自由。
安堵。
etc……

君はカミングアウト後のどんな世界を想像する?

笑顔で受け止めてくれる家族がいて。
そっと抱きしめてくれる友達がいて。
ずっと待っていてくれたQueerの仲間がそばにいて。
そんな世界が理想だよね。
でも実際は

全く未知だ。

100通りの結果を想像して、そのひとつひとつ

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Louder Than Words《Club with Sの日 第31回レポ》

Louder Than Words《Club with Sの日 第31回レポ》

Why do we play with fire?

2021年7月14日
ちょうど一年前のノンバイナリーデー。
英WalesのBangorの市長であるOwen J Hurcumさんの投稿にコメントした。
Owen J Hurcumさんは世界で初のノンバイナリーの市長だ。
ノンバイナリーの人たちにとってはロールモデルみたいな存在だね。 #NonBinaryPeoplesDay のタグとともに、O

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SHARE. CONNECT. ACT.《Club with Sの日 第30回レポ》

SHARE. CONNECT. ACT.《Club with Sの日 第30回レポ》

ストライキなんかやめて学校に戻りなさいと言う人もいます。でも、もうすぐ未来がなくなるのなら、なぜ勉強しなくてはならないのでしょうか?
──Greta Thunberg (環境活動家)

5月24日、GLAAD(アメリカのメディアにおけるLGBTQ+レプリゼンテーションをモニタリングする団体)が“Free speech is for everyone, including LGBTQ student

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Ignorance is your enemy. Knowledge is a weapon.《Club with Sの日 第29回レポ》

Ignorance is your enemy. Knowledge is a weapon.《Club with Sの日 第29回レポ》

SILENCE=MORT
“沈黙は死”

2022年6月20日
Queer当事者たちの泣き叫ぶ声が日本中に響いた夜。
「結婚の自由をすべての人に」関西訴訟に関するニュースを目にした時、ある一人の男性のことが真っ先に思い浮かんだ。
あまりにも残酷な大阪地裁の判決を知った時、「いつかの裁判で出会ったあの男性は今、何を感じているのだろう」と思った。

一年以上前、Marriage For All Jap

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Deeds Not Words《Club with Sの日 第28回レポ》

Deeds Not Words《Club with Sの日 第28回レポ》

6月1日。
Pride Monthのはじまり。
タイムラインが虹色に染まる頃、
自宅に注文した商品が届く。
封を開けると、中から出てきたのはカラフルな缶バッジ。
こだわりのPRIDEグッズたちだ。
70年代ロンドンパンク風ファッションが大好きな自分は、服にバッチをガチャガチャ付けるスタイルに憧れていた。
(Vivienne Westwoodファンの方、仲良くなりましょう笑)
でも、ただ趣味を着飾る

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Trust Your Power《Club with Sの日 第27回レポ》

Trust Your Power《Club with Sの日 第27回レポ》

ある日、SNSで一件の通知がきた。
「協力します」という内容のメッセージ。
それは、大きな可能性のはじまりだった。

約半年前、自分は悩んでいた。
「勉強するために欲しい本が高くて買えない。今の若者はどうやって本を買っているのだろうか。できることなら誰かに送っていただきたい。でもタダでもらうことは難しいからなにかと交換ならいいだろうか」と。(当時の投稿にそう書いてある)
それで、出した結論が自分で

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見えにくい≠存在しない《Club with Sの日 第26回レポ》

見えにくい≠存在しない《Club with Sの日 第26回レポ》

「君の中でマジョリティでいればいい」

ある日、SNSで「自分はジェンダー・アイデンティティだけでなく、経済力や居住地域においても弱い立場であり、そんなマイノリティとして生きていくのは大変だ」という内容の投稿をした。
投稿には、マジョリティの特権を可視化することをテーマにした、人権教育に関する記事のリンクを添えた。
様々なアイデンティティにおいてマジョリティ側の人たちに、自らの特権に気付いた上で、

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A Step You Can’t Take Back《Club with Sの日 第25回レポ》

A Step You Can’t Take Back《Club with Sの日 第25回レポ》

──for anyone who’s ever been alone in the world

“I thought I was alone.”

最近ハマっているドラマシリーズ『Sense8』
映画『The Matrix』シリーズのクリエイターであり、トランスジェンダーであることをオープンにしているWachowski姉妹が監督しているから何の心配もない!!
ということで観始めたのだけど、すごい

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一瞬のための莫大な時間《Club with Sの日 第24回レポ》

一瞬のための莫大な時間《Club with Sの日 第24回レポ》

「今度、制服が変わるらしいよ」
「え、いつからですか?」
「いや、それはまだ確定していないんだけど、新しいデザインになるって事務所で聞いた。
 そのうち採寸用の見本が送られてくるんじゃない?」

約半年前、職場のスタッフ同士で繰り広げられていた会話だ。

多くのスタッフが考えていたことはたぶんこんな感じだろう。
「どんなデザインかな?」
「動きやすいタイプがいいな」
あるいは
「洗濯しやすい素材だ

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Let's all be Artists!!《Club with Sの日 第23回レポ》

Let's all be Artists!!《Club with Sの日 第23回レポ》

僕にとっては、クリエイティブな活動が唯一の抗うつ剤だよ。孤独という病に効く解毒剤は、何かを作ることだけさ。
──John Cameron Mitchell
(インタビュー記事より)

とあるシンガーソングライターの曲を聴いた。
たまたまSNSのタイムラインに流れてきたから。
再生してみると
お、結構明るいな。
ポップなメロディだ。
つまり、自分があまり好まない曲調。
でも、不思議と違和感はない。

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A Little Closer《Club with Sの日 第22回レポ》

A Little Closer《Club with Sの日 第22回レポ》

*精神的な問題について具体的に表現した箇所があります。
 お読みになる際はご注意ください。
 トラウマの心配がない方でも、体調が良い時に読むことをオススメします。

「君は何を飲んでいる?」

寒い冬のある日。
20歳の自分は車の助手席から外の景色を眺めている。
建物を見ても、空を見上げても、何かを感じるわけじゃない。
ただ、車から飛び降りて、ここではないどこかへ行きたいと願っている。
隣の運転席

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