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#ポエム

詩 / 安寧

経験から私が学んだのだとすると
私は私に経験が混ざり込んだ生き物になったとも言える

アップデートされた私には
鎖がついていて
以前にした失敗の近くには
近寄れないようになっている

同じ失敗を繰り返すのは
愚かだ

しかしそこに二度と近寄らない人生は
幸せなのだろうか

可能性はゼロですかと質問されれば
言い切るのが苦手な私は
ゼロではないと思う と応える

未来のことは
そこに行くまでわからな

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詩 / 多細胞生物

髪は勝手に伸びて
爪も勝手に伸びて
おなかは勝手に痛くなって

手足は勝手に元気で
脳細胞は
余計な思い出ばかり
勝手に送りつけてくる

わたくしの
細胞それぞれは
別の生き物なので
いうことをきいてくれないのです

多細胞生物を代表して
記しておきます
わたくしたちは
命の集合体なので

全部合議制で
やると決まればやりますが
やらないことになったら
やりませんので

細胞数十兆からなる国ですの

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詩 / 暗示

私はことばにすると私だけど
ほんとうの私ではない

わたしそのものと
ことばでいう わたし には
かいりがある

私ということばのかわりに
あなたをつかうと
乖離が大きくなるから
そうならないように
私を使う

発された言葉は揺るがない
揺れ動く私と違って

ことばと現実に乖離があれば
揺れる私が隙間をうめる

わたしはげんきといえば
げんきということばがゆるぎないので
わたしのほうがげんきという

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【詩】ひとつのことば

【詩】ひとつのことば

私はいつもただひとつのことばが欲しい

それはあなたの口から出たものでなければならない

あなたの手で書いたものでなければならない

それはそこら中に溢れていることばで

あなたに使われるのを待っていて

私はそのことばで生きて

そのことばで死んだようになって

あなたから出たひとつのことばは

やすやすと私を動かして

過去を紡ぎ

未来を集め

今を創る

あなたの小さなことばひとつで

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詩 / 連-絡

闇の中で
寝息を聞いた

あなたにあわせて息をする
夜が一次元に落ちていく

息が聴けて幸せ
息を吐けて幸せ

部屋は離陸する
柔らかな空気を吹いて

朝までの旅
焼き付けた思い出が車窓を滑る

記憶は螺旋になって
糸車がぜんぶ巻き取っていく

詩 / あな

詩 / あな

人の波の中にあって
ふと 心細い自分に気づく

長く住んでも
親近感が湧かない

生まれた家を壊してしまい
心が帰る場所を失う

毛玉だらけのセーターを
いつまでも着ている

記憶の景色を 求めている

優しい人たちとの
優しい関係に 戻れるならばと

願って初めて
それらのすべてが 何だったのか
考えるようになるのかもしれない

素直になった先には
寂しさが待っている

だから素直になれないのか

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鏡

わたしとあなたは
同室で同質の同士

ツーカーだけど
うっかりツーと言ったら
察してカーと言われちゃう

そのつもりのツーじゃない
と怒れば
せっかくカーしたのに
ともっと怒る

同じだけど
同じと信じすぎて
すれ違う

不完全な鏡合わせの私たち

糸

長い糸が
からまった

ほどいてもとに
もどしたい

時間があれば
そうしたい

とてもいまは
むりなので

鋏で糸を
切るばかり

いつしか糸は
なくなって

残った恨みの
かたちは藻屑

わたしは浮いている

わたしは浮いている

歳を重ねて増えたのは
まわりからの疎外感

だんだん浮いてくるの
存在が 言動が
重力では抑えきれなくなって
浮いてるのわたし

若かったわたしが若くなくなって
若い人たちから異なっていって
それで浮くの

ある日ついに
足が地につかなくなった
空を飛んだ中年

地面に降りたいけど
どうすれば良いかわからない

慌てて唾吐いて喋っても
不正解を連発し

標高をばりばり稼いで
空をぷかぷか浮かんでく

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『夜、ねむる前の詩の狂い狩り』

『夜、ねむる前の詩の狂い狩り』

noteをはじめてから、まだ、2ヶ月足らずの私にとっての楽しみのひとつがある。夜、ねむる前に新着の『詩』をあさるように、酔うように、狂ったように、狩るように、かんじることだ。そして、その狂った魂に、「すき」することがここ数日の日課となっている。

そもそも、詩を書こうとする魂が私はすきなのだ。
「私の書いた詩をあなたは本当に理解しているのか」と、問われれば、私の口からは怪しい答えしか出てこない。で

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