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感傷マゾ論考集

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「いま・ここ」の欲望を満たすためのサブカルチャー消費の危うさ —推し・エモの行方

「いま・ここ」の欲望を満たすためのサブカルチャー消費の危うさ —推し・エモの行方

映画『花束みたいな恋をした』では、菅田将暉演じる主人公(の片方)の麦は就職してから好きだったはずのサブカルチャーが息抜きと思えなくなり、恋人に「もうパズドラしかやる気しない」と言い放つ様子が描かれた。同作を取り上げた三宅香帆『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』は、労働と読書の歴史を遡ることで、本が読めない理由は単に長時間労働によって余暇時間がとれないというだけでなく、人間を「ノイズを除去」した

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「感傷マゾ」は「異常」ではない —リスク社会における自己とそのゆくえ

「感傷マゾ」は「異常」ではない —リスク社会における自己とそのゆくえ

私たちは日々、様々な選択をしている。今日は何を着ていくか、昼は何を食べるかといった日常のことから、どの大学に行き、どのような仕事に就くのかという人生における大きな意思決定に至るまで、絶えず何かを選んでいる。しばしばその選択は悩ましく、私たちは「あの時こうしていたら今の自分はどうなっていたのか」「これからどう生きていくべきか」といった思いを抱くのである。

人々にとって「選択」がこれほどまでに重要に

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なぜ若者の間でノスタルジーが流行るのか? 「制服ディズニー」や「青春ヘラ」の正体を探る

なぜ若者の間でノスタルジーが流行るのか? 「制服ディズニー」や「青春ヘラ」の正体を探る

レトロという言葉はいつのまにか昭和のみならず平成にまでつくようになった。Y2Kファッションや「写ルンです」「オールドコンデジ」ブーム、シティポップや90年代JPOPリバイバルなど、様々な文化が再発見され流行している。

「青春」もまた、近年のキーワードである。新海誠「君の名は。」をはじめとするアニメ作品からもはや夏の定番となったポカリスエットのCMまで、メディアにおいて「青春」は重要なテーマである

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夏が来たので感傷マゾの話をしよう

夏が来たので感傷マゾの話をしよう

夏がやって来た。情緒の欠片もない殺伐とした日差しを浴びてなお、人はなぜこの季節に素朴な憧れを抱いてしまうのだろうか。その要因であり結果でもあるものの一つが、ポカリスエットのCMである。今年はNewJeans的な、Y2Kと平成の融合したスタイルを取り入れたシリーズ「潜在能力は君の中。」が展開されている。

コロナ禍を経てインターネットはますます現実を侵食し、学校も仕事も飲み会さえもメディア体験になっ

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