奥手だった初めてのバレンタインと年賀状の小さな後悔

｢はい、バレンタインだから」
手渡したのは、前夜に一生懸命に焼いたクッキー。

ヘタだったけどチョコとプレーンと、2色

初めてのバレンタインのプレゼント、だった。

「えっ、くれるの！？」
思いの外、喜んで受け取ってくれた。
｢サンキュー！｣

待ち合わせに、20分も遅れてきたのに。
ふ～ん、こんなに喜ぶんだ。

意外だった。

初めてのデートをした、高校2年の冬。
奥手だった。

1か月に1回か2回。
学校帰りか、たまに休日。

松田聖子の『赤いスイートピー』みたい。

「半年すぎても　あなたって、手も握らない｣
そんな感じ。知り合ってからは1年半だけど。

手は握った・・・かな。

クッキーは渡したけれど、その頃ホワイトデーなんてなくて。

進展もなくて。

同級生だったのに、いつの間にか、デートをしなくなった。

だって、私からの電話ばかりで。
よくお母さんが出て。

電話はあまり来なくて。

ドキドキするのに、疲れちゃって。

私の片思いかな、なんて思って。

卒業して2年後。

彼から年賀状が来た。

かわいい絵が添えられていて。
｢今は、どうやって過ごしているのかな?｣って。

｢なんで今ごろ・・・」

戸惑った。

返事を出そう、と思いながら、出さなかった。
ただ、手が動かなかっただけで。

嫌いでもなく、いやでもなく、むしろうれしかったのに。

つきあい始めた人はいたけれど、そのせいでもなかった。

ただ、なんて書いていいのか、わからなかった。

あのときに、返事を出せばよかった。
再会したいわけではなく。
むしろ、思いを残さないように。

でも好意を伝えるために。

今でも胸がチクリと痛む。

ごめんなさい・・・。

今年のバレンタインで、数少ない恋をいくつも告白してしまいました・・・
少ないのに。

※イラストはhosiartさんからお借りしました。ありがとうございます。