あなたを目で追うだけで、追いかけられなかった

つい つい あなたを目で追っています。
ずっと見つめながらも、目が合うのがこわくて、伏せてしまいます。

あなたはもう、気がついているのでしょうか。


何度かご一緒した出張で。
思いもかけない、あなたの優しさを見ました。

酔っぱらった上司への、優しいなだめ方。
「やまさん、今日はもう帰ろうよ、な」とかけた声。

建物や道具への、細やかな心配り。
花や木を見る、温かなまなざし。

意外な一面、といっては失礼でしょうか。
クール、といわれるあなたの、心の内を感じたのです。

思いを伝えようか、やめようか、ずいぶん迷いました。

思いが募っても、自分で気づかないふりをしていました。

近い職場で。
同じフロアで。

気まずくなってしまう。

こわい。

でも。

伝えないと、このままこの思いが知られないままに消えてしまうのが、つらくて。
情けなくて。

ひと言だけ、伝えたいのです。


好きです。

それだけ、です。


うたたねに恋しき人を見てしより
てふちょうものを頼みそめてき


本当に、出したラブレターに近いものです。

すごく好きだった人。

バツイチで、話が合って、ひょうひょうとした人。

思いがけなく、ストンと、好きになっていました。

でも、手紙を出した後、私は逃げたんです。
だから、返事も聞かず。聞けず。

情けない、臆病な、私です。

添えた和歌は、小野小町。
本当にこの歌を書きました。

夢であなたを見てから、夢というはかないものまで、たのみにするようになったのです。

という意味です。

なんだか、おくての女子高生が書いたような、恋文で、恥ずかしい限りです。

せつなさ、悲しさ、思い出しました。
こんな時がありました。


こちらは『片思いのラブレター』という企画に参加させていただきました。
空心菜おひたちさま、ありがとうございます。


※イラストはMicuさんからお借りしました。ありがとうございます。


この記事が参加している募集

#スキしてみて

528,758件

#忘れられない恋物語

9,237件

サポートいただけたら、よりおもしろい記事を書いていきますね💖 私からサポートしたいところにも届けていきます☘️ものすごくエネルギーになります✨よろしくお願いします。