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記事一覧
リア家の人々、お前もか……
文庫になって復刊された『対談集 六人の橋本治』(単行本時タイトルは『TALK 橋本治対談集』)には、最後に文庫版増補として宮沢章夫氏との対談「『リア家』の一時代」が入っている。だから6+1で実際には“七人の橋本治”なのだけど、そうはならなかったらしい。タイトルは変えたのに。なんで今これが復刊されたのか若干疑問に思いながらも刊行記念で読了。出版社の壁を無視して復刊するのなら私は『ひらがな日本美術史』
もっとみる災害救援部隊的作家〈橋本治読書日記〉
再読している『親子の世紀末人生相談』で、橋本治が自分のことを「災害救援部隊的作家になっちまいました」(p.217)と書いていて、ほんとにその通りだと思って笑ってしまった。
人生が切羽詰まって破綻をきたしかけたときに橋本治に出会ったという人は橋本治読者には多いだろう(私の場合は『シンデレラボーイ シンデレラガール』)。まァそこまではいかなくても、ずっと言いたかったけど言えなかったことを言ってくれてい
あなたはミーハーですね〈橋本治読書日記〉
やっぱり橋本治をちゃんと読んでいる人が書いた論文をもっと読みたいな、と千木良悠子さんの「橋本治『草薙の剣』論(後)」を読んで思った(「文學界」2024年2月号掲載)。
今回の地震の被害が明らかになるにつれて胸が押しつぶされそうになる。玄関のお正月飾りをそのままに倒壊している家屋を見ると、一瞬にして崩れてしまったものは家屋だけでなく、生活とその基盤そのものであったことが目に見えるようだ。
『草薙の剣
そっちのボーダーレス〈橋本治読書日記〉
相変わらず紅白のチーム分けは性別で決めてるのに今年のテーマは「ボーダレス」って冗談なの皮肉なのって思ってました。しかも日本はいつまでWBCやってんの、とも思うからそっちも観ないで結局テレビに向き合わないお正月。
あけましておめでとうございます。
でも話題になってたからYOASOBIは後追いで観たら、もう明らかにこれが目玉でありハイライトだったんですね。いつもは単独でステージに立つようなアイドル
死人に口なしと言うけれど〈橋本治読書日記〉
生前の本人をよく知る人が書いた橋本治評伝の連載が始まった。
あの文章で、橋本治の何を伝えようとしているのか、私にはわからない。
すごく個人的な内面に踏み込んでいる割に、書き方が雑ではないかと思った。書くのであれば順を追って丁寧に、本人が公に書いた文章の根拠も添えて書かれるべきことが、無造作に無神経に意味も脈絡もなく書かれている。率直に言って危険な文章だと感じた。
故人の性的指向のアウティングにとど
千木良悠子「橋本治『草薙の剣』論(上)」を読む
現在発売中の「文學界」2024年1月号に、千木良悠子さんによる「『草薙の剣』論」が掲載されている。
『草薙の剣』の主役は時代である、と言い切ったうえで、謎解きをしていく。この論文を書くために重要な箇所を抜書きした要約と年表を作ったと書かれていた。
私は『人工島戦記』を研究することだけは決めているけれど、その先がどうにも進まなくて、焦っていた。今日、髪を切りに行って、シャンプーしてもらいながら、自
橋本治『人工島戦記』新旧対照表
『人工島戦記』の雑誌連載と単行本の突き合わせ読みが、予定より大幅に前倒しで今日終わりました。
参考までに、章ごとの対照表を置いときます。雑誌連載のボリューム感のイメージが何となくわかるので。左が単行本、右が雑誌の章番号です。
第いち部
1章 1章(雑誌初回“前編”ここから)
2章 2章
3章 雑誌なし
4章 3章
5章 4章
6章 5章
7章 雑誌なし
8章 6章
9章
古事記を読んで、旅に出よう〈橋本治読書日記〉
出雲大社に初めて行った。事前準備として、橋本治の『古事記』も初めて読んだ。
出雲大社とは関係なく、旅行前には『武器よさらば』も読了。肝心の書簡は私信なので、書簡の内容よりはあとがきのほうが興味深かった。私は手紙を送るのが苦手で、何年も前から年賀状は書いていないし、紙の手紙はおろかメールやLINEすらほとんどしない。送るのにすごく時間がかかってしまうから嫌いということもあるけれど、送ることで相手に与
研究って?─オープンキャンパス編
長らく橋本治研究者を自称してきたわけですが。
「橋本治を理解するには橋本治だけを読んでいてはダメなのではないか」という考えが確信に変わり、そろそろ本格的に橋本治で論文を書く方向に舵を切ることにしました。
発想が飛躍する癖と持ち前の行動力を発揮して一念発起した私がまずやったこと、それは指導教員(と大学院)のリサーチです。「ここだ」と決めた大学のオープンキャンパスも予約しました。で、オープンキャンパ
小さなプロジェクトの終わり〈橋本治読書日記〉
橋本治四季四部作を季節ごとに読むプロジェクト、最後の『夏日』を読み終わった。
この中に、映画「ウエストサイド物語」に一目惚れをしたという文章があったので、映画も観た。新旧、スピルバーグ版の「ウエストサイドストーリー」も合わせて。
6月はよく映画を観た月だった。
最近は北村紗衣さんの本を集中的に読むようにしていて6月は2冊読了したのだが、北村さんの本を読んでいると、映画が観たくなる。北村さんの本
The Dog Days Are Over〈橋本治読書日記〉
“あの苦しかった日々は終わったんだ!”──「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーvol.3」でFlorence + The Machine の The Dog Days are over が流れるシーンは、これまで観てきた映画の数多あるシーンの中で一番好きだ。曲の歌詞を調べるうち、そのシーンもそこでかかる曲も大好きになった。思い出して泣いてる。Florence Welch本人が件のシーンを観て号泣し
もっとみるAIにひらめきは可能か?─ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー考〈橋本治読書日記〉
心から愛してやまない映画「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」の新作“vol.3”を観た。これが私のゴールデンウィーク唯一にして最大のイベントだった。
思えば、橋本治の考え方に通ずるところの多い作品ではある。なんでも自分に引き付けて考えてしまうのは私の悪い癖だが、それが「なんでも橋本治に引き付けて考えてしまう」というふうに発展してきたのが今の私だ。
偶然集まってガーディアンズを形成しているメンバ
大谷翔平、Björk 2days、橋本治以外の本〈橋本治読書日記〉
『春宵』読了後の記事から一ヶ月が経った。
去年も一昨年も大谷翔平選手が所属するエンジェルスの試合は毎回録画して追っていたので、今年のWBCももちろんみていた。
結果はご存知の通りの“大谷フィーバー”が続いているけれど、橋本治読者の私としては「自分だって」と思いたくても思えない挫折感のようなものを味わっていた。名実共に世界一になった大谷選手をカッコイイかっこいいと目で追うだけでは意味がない。