マガジン一覧

いりえで書く

間借り書房 いりえのイベント【「書くこと」に関するお喋り会】から生まれた共同マガジンです。スタイルやジャンルは人それぞれ。気負わず、無理せず、否定せず。入り江のように穏やかな場所にしていきたいです。皆さんで少しずつ作っていきましょう🌊

82 本

ビタースウィートバレンタイン

初めて本命チョコをあげたのは小学校4年生だった。 同じクラスで、席が隣どうしになった男の子。別に勉強ができるとか、スポーツが得意とか、明るいクラスの人気者とか、そういう、わかりやすい魅力があった子じゃない。ただ、話が合っておもしろかった。今も昔も、人を好きになるポイントはあんまり変わってない。 初めてチョコをあげよう、と決めたバレンタインデー当日。ちょうど日曜日だったので、友達に付き合ってもらってその子の家まで行った。だけど、どーーーーしても玄関の呼び出しベルを押す勇気が持

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おやすみバレンタイン

2月13日 私は学校をよく休む。中学校に上がった去年から休みがちになった。1日行くと疲れ果てるから、行くのは大体週に1,2回。行けるときに行っている。 今日は調子がいまいちだけれど行けなくはなさそうだから、お昼前に家を出た。歩いても歩いても学校が遠ざかり、ずっと着かないみたいに感じる。元気なら徒歩15分の道のりが今日は25分。 学校の敷地に入ると、どこかのクラスが校庭で体育をやっていて賑やかな声が聞こえる。こんな寒いのに。昇降口に入り足元のすのこをふむと傾いて、がたんと大きな

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パラパラパラ~で、くるくるくる〜♡

 当てもどもなく歩く散歩道。見知らぬ土地で素敵な飲食店に出会う。ときめかざるを得ない、このシチュエーション。私は今まさに見知らぬ土地を散歩しており、目の前にはクレープ屋がある。大分ひなびた雰囲気が漂っているけれども。  個人経営のクレープ屋とは珍しい。惹かれる…とても惹かれる。この状況で惹かれない人はいないだろう。私は吸い寄せられるようにメニューを読み始めてしまっていた。  クレープ屋にはときめきが詰まっている。小さな店舗に小さな窓口。そこからのぞき込む様に注文する。コンパ

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『いりえで書く』2月のお題「鬼の話」 掌編小説「鬼が笑う」

田園外国語大学の音楽系サークル「世界音楽研究会」で臼井吉高は「鬼」と呼ばれていた。 それは別に後輩に厳しい指導をするとか、己の理想に向かって自らの限界まで挑むとかしていたわけではなく、臼井が普段は自分からあまり喋る方ではないが口を開くと毒舌で、しかも、その言葉が意外と的を射ているので言われた相手が二の句が継げずにしどろもどろになってるところに、また追い打ちをかけるように絶妙なツッコミを入れる。その様子があたかも「鬼」のように相手を徹底的に追い詰めているように見えるので付けられ

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すきなnote

自分の備忘として残しています。学んだ、読みたい本が載っている、面白い、的な理由でまた読み返したい記事です🐝🐝🌸

【短歌】俵万智さんが一青窈さんに往復書簡で短歌のレッスンをする入門書『短歌の作り方、教えてください』がめちゃ理論的で、最高にわかりやすかった! +毎日短歌 10月18-27日分

 短歌の入門書を片っ端から集めている。今回は俵万智さんが一青窈さんに往復書簡で短歌のレッスンをする『短歌の作り方、教えてください』を読んでみた。  サラダ記念日で言わずと知れた俵万智さん。現代的な短歌の代表格だし、日常を切り取ったようなポップなテイストから勝手に感覚的な人なんだと思い込んでいたけど、そうではなかった。めちゃくちゃ理論的でびっくりした。  短歌とはどういう性質の表現で、五七五七七の定型を守る意味はなんであり、どういう状況なら字余りが成り立つのかを見事に言語化

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【大人の自由研究】女子7人、日記本を作る

この夏、note仲間の同世代女子7人で日記本を作りました! まずは概要として本のあとがきを紹介します。 ここからは、我々がどのように日記本制作プロジェクトを進めたのかについて記録していきます。 きっかけ7月にnemuirukaさんがシェアしてくれたこちらの記事。みんなで日記を本にしてみたら面白そう!という素敵な提案でした。 これまで私もnoteで細々と日記を書いていましたが、本にするという発想はありませんでした。 何気ない日記を形にすること、大人になった今「夏休みの自

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Iさんと某巨大ショッピングモールを散歩していたときの話(あるいは思いやりが善いとは言えないことについて)

関連記事↓  そうですね。  感覚的に言うと「あなたのためを思って……」というのって、恩着せがましさがありますよね。  それがどのようなものであれ、行為の根底には利己心があらざるをえない。  だから「あなたのためを思って……」というのは、どこか転倒しているし、それ自体「悪しき企図」という感じがします。 「他者を内面化している」という意味で、それは他者尊重とは真逆のあり方で、実は世界解釈そのものの錯誤ではないか、という直観があります。  ふと思い出したので、感動的なエピソ

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「好きなことを仕事に」を、プチ体験する方法

「好きなことを仕事にできるのは、一部の才能がある人だけ」 「好きなことを仕事にすると、嫌いになってしまう」 私は長年そんなふうに信じて生きてきました。たぶん子どものころからだと思います。 周りの大人も同年代も同じように考えている人が多く、それが世界の常識なのだと固く信じていました。 ところが去年キャリアスクールへ入会したのをきっかけに、考え方が少し変わりました。 スクールには多様な働き方をしている人たちがたくさんいて、好きなことを仕事にしている人もいました。 そして

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🌸おすすめ集🌸

自分で書いたものの中で「結構いいぞ」と思っているものを集めました。このへんは、わたしの一番深い部分で書いてる気がする!!

性行為と同意について思うことを3400文字も書きました。

直接的な表現で大変恐縮なのですが、きょう付き合っている人が家に来て、性行為をした。1か月半前くらいに付き合ってからすでに何度かしているのだけれど、かれは同意に対するスタンスが本当に素晴らしい。 えー、この記事は性的ともとれるエピソードを含んでおり大変恐縮なのですけど、この素晴らしさをぜひ世界に伝えたいと思ったし、最近ずっと考えている「同意」の本質を見た気がしたのでここで言語化させてください。 伝えたいのは「同意に対するスタンス」とは「性行為に対するスタンスそのもの」であり

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【趣味友】noteで見つけた読書会に行きまくったら気の合う人とたくさん出会えた話

「趣味友」という概念が、ずっと理解できなかった。 趣味が一緒で仲良くなった、という話は何度も聞いたことがあったけれど、認識する限り私のこれまでの人生で「趣味友」がいたことはなかった。なんとなく羨ましく思う一方で「ほんとかよ」という気持ちもあった。これまでの私にとって「趣味の話」というのは「差し障りなく流す話題」であった。天気の話くらいあっさりと、休日の過ごし方くらい適度に。だから「趣味友」なんて、表面的な話しかしなくて「ヨッ友」くらい薄い仲なんだろうなと思っていた。 今年

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自他境界に悩み、色塗りを憎む

好きだと言われて付き合ってほしいと言われてずいぶん目がきれいだったからちょっと経っていいよって言った、ら、じぶんの輪郭がわからなくなってきた、そうだわたしにとって誰かと付き合うってこういうことなんだ、と、わりと久しぶりになれしたしんだ苦しみに苦しめられている。 すごく好きとかそういうことではなくじぶんと他人の境目があいまいになってしまう、じぶんの感情がじぶんと他人のどっちに置いてあるのか分からなくなってしまう、ここにある感情が自分のものなのか誰かのものなのか誰のものでもない

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最近のブレイクスルーまとめ【メモ】

ここ一週間の間に記したメモを見たら、今の自分の数歩先をいっていて「これは忘れたくないなぁ」と思った。備忘を兼ねてここに書き残したいと思います。 ✴︎ ・知らず知らずのうちに「明るくあらねば」と思ってしまっていたらしい。 ・私にとって「明るく」=ポジティブな感情表現やリアクションを積極的にとること。「なぜそう振る舞うのか?」と聞かれて「ポジティブな感情表現をすると相手が喜ぶから」と言うと「なるほどね、相手が喜ぶと思っているんだね」と言われた。カーンと軽いもので頭を思いっき

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【〇〇論】シリーズ

(主に批判的に)世の中を切り取っています。最初は「〇〇論」と付けていましたが、いつの間にかやめました。

結婚式は「性別のフレーム」が頑丈すぎて苦しい

姉の結婚式に出席してきた。ふつうにたのしかった。関係性の誕生を儀式化することのメリットやら社交の場としての役割やらも再確認したし、親しい人間の発表会でも見たときのような満足感もある。(ので、出席してよかったと思っている。) ただ今回の式に関わる中で、長らく持ち続けている「結婚式文化に対する嫌悪感」の根っこの部分が見えてきた気がするので、言語化してみようと思います。 まず、もっとも嫌な点として「結婚式は性別のフレームが頑丈すぎる」ということが挙げられる。そしてそれが「社会的

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【友情論】普段気をつけていることを言語化してみた

フレンドシップのために普段やっていること(基本的なスタンス)を集めて言語化してみた。「出来ていない」より「出来ている」にフォーカスするというか、新たに取り入れるばかりでなく、すでに気を付けていることを見つめ直すのって「あり方」として良いよなと思う。(そっちのが効果的な気もする。)その一環として、書き出してみたものです。 ・依存しない 複数のゆるくて長い友情関係が少しずつ太くなっていく、みたいな状態が理想。私の場合は一人に入れ込みやすいというか、けっこう依存体質なので、とく

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そもそも化粧をしなければ「すっぴん」という概念は生まれない

小学生の頃は、母親の化粧道具を魔法のアイテムのように思っていた。高学年に上がった頃から、百均で買ったチークやアイラインを使って、こっそり化粧をして学校へ行くこともあった。先生にバレないかドキドキしながらも、自分だけが大人になった気分になれる「魔法」だった。 化粧をする特別感や背徳感が薄れていき、義務の色が強くなった大学生の頃から、化粧というものが憂鬱の種に変わっていった。たまにそのポジティブな効果を実感するにしても、ちょうど皿洗いや通勤のように、その行為自体に何の意味も見い

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反ブランド主義|値段にしか価値がない物への嫌悪感

反ブランド主義。もうこれは「主義」と言っていいと思う。立派な「ism」である。 わたしは、ハイブランドに代表されるような「値段にしか価値がないもの」が好きじゃない。高級なバッグとかジュエリーとか時計とか外車とか。 好きじゃないというか、しっかり嫌悪感がある。ちょっと怖いのかもしれない。「あったかもしれない自分」、仮定法的な文脈における自分は、ブランド物にどっぷりハマっているような気もする。一生懸命働いて手に入れたお金で、ちょっと柄が違うだけの高級バッグを買い揃えているよう

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【短歌15個③】中指に細いリングをそっとつけ自分の品性託すみたいに

✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎ 中指に細いリングをそっとつけ 自分の品性託すみたいに 含まれた意味で自分がふちどられ きみの目線を浴びる夜道 おぼろげな視界にいっぱいきみの顔 よくそんなにも穏やかな笑み 説得はできそうにない「あたたかそう」と 思ったときにはもう好きだった 食べ残し「もらっちゃうね」と食べるとこ ずっと見てたいなんか良いよね ぼくの「好き」、あなたの「好き」でかき消され ちょっとインフレ起こさないでよ 勝負事けっこう本気になるタイプ 「ルイスキャロル」と「

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【短歌15個②】ちょっと好きくらいのものを「超好き」と言ってみること そんなアピール

最近つくった短歌の第二投です。 こうして並べてみると、一個目のうたがけっこう共感できて好きなので冒頭に持ってきました。 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎ ちょっと好き くらいのものを「超好き」と 言ってみること そんなアピール この出口 通ると脳裏によみがえる あずき潰した みたいな笑顔 ぼくのこと 薬にだって なれたのに 禁止し毒に したのはお前 閉まるドア 遠ざかってく airports ごめんねそこで 元気にやってね 着席の マークに鋭い 眼光を 機内寒いよ ちょっとや

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【短歌15個①】発車する 力を入れる左足 逆らえ慣性新学期

溜まってきたので、放出します! ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎ 発車する 力を入れる 左足 逆らえ慣性 新学期 本棚の 背表紙くるくる 入れ替えて 横につながる わたしの時間 人が言う ぼくの人生 「夢です」と 悪夢の部分も もらってくれるか? よくそんな 自慢できるね 人前で 垢は毎日 出るというのに その「好き」は 予測変換 使ってる? 妙に薄くて ありきたりだね 空気読み 笑うのやめよう ささやかな 意思の表明 「言わず・笑わず」 伸びる道 光る街灯 焦る信号 死

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わたしにとって短歌|恋のうた

続いては、文字数を制限するとなぜか恋のうたになってしまうシリーズです。 一生懸命に「今」を切り取っていたら、あのとき見た景色がまだずっと「今」だったってことに気付いた。 ・:*+. .:+ ・:*+. .:+ 君行きの 道案内を 開始する どうかこのまま まっすぐ着きたい きみ語る 三人称の 僕ならば 海でも歩ける ような気がする 眠そうで あたたかそうな 腕の中 もぐりたかったな 夜の海岸 残像を しっかり体で つかまえて 君のベッドで 朝まで眠る でも君が

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