時田千晴/料理人

料理人として、自身の生活から考える「食べる」ということ。 見るもの、触れるものの1つ1…

時田千晴/料理人

料理人として、自身の生活から考える「食べる」ということ。 見るもの、触れるものの1つ1つが人を作り、今日食べるものを決めると思うから。 和食店での料理長経験から、素材の生かし方などお伝え出来ればと思います。

最近の記事

狩猟体験記③ 解体作業〜生き物、食べ物の境い目

朝。 食事をとりに集まると、告げられた。 「罠にかかっていると連絡があったので、この後行きましょう」 いよいよその時が来た。 数日前に仕掛けておいた罠の1つに、獲物がかかっているという。一気に走る緊張感。車に乗り込み現地へ向かうも、みんな黙ったまま。ドキドキして言葉など交わせない。猟師さんもあえて会話をふってこなかったのだと思う。各々がここへ来た想いをめぐらせながら、静かに覚悟を決める時間だった。 結果としてこの日は2頭の動物と、私たちは向き合うことになる。人間に殺され

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    • 狩猟体験記② 山を歩き、罠を仕掛ける

      1日目 自己紹介のあと、主催者である現役の猟師さんから、東京から移住してまでハンターとなった経緯、地元の獣害の状況などお話しを伺う。 田畑を荒らしたり、人の生活に危害のある害獣は、鹿や猪の他にもわんさかいる。増えすぎた獣害を駆除するのは、彼の重要な役割りでもあるのだ。 例えばペットとして持ち込まれ、繁殖してしまったアライグマ。可愛い見た目とは逆に獰猛な肉食獣で、里山では生態ピラミッドの頂点にいる存在である。罠にかかったアライグマと猪は、人を殺す気で向かってくるから、猟師

      • 狩猟体験記① きっかけ〜肉は何処から来るのか

        この数年ずっと違和感があった。 料理を仕事としていながら、「肉」の正体を私は知らない。知識としてではなく、何かを見落としているような。そんな気がしていた。 きっかけは狩猟をされるお客様から頂いた鹿肉。秋になると毎年のように店でも鹿肉を仕入れていたから、扱いには慣れている。頂く肉もその延長線上だと思っていた。 そこには骨付きのももが、でん!と1本。皮は剥がれていたけれど、所々に毛が付着していたから、まずはそれをきれいに取り除く。骨から肉を外したら、筋肉を部位ごとに包んでいた

        • ほったらかしが美味しくする、塩豚とキャベツの煮込み

          煮込み料理があるテーブルって、なんだか幸せ。 柔らかく煮込まれた具材と、その旨味の溶けたスープを頂くと、胃袋が癒されます笑 作り置きもできるから、疲れてへとへとで帰ってきても、温めればすぐごちそう。 前回に引き続き、塩豚を使った料理です。 豚バラブロック肉って、使わない日に限って特売だったりするんですよね。けど買って塩をしておけば、後日ゆっくり調理できるもの。 塩豚にすると肉の旨みが増すだけでなく、煮込んでも柔らかくなるのが早くて楽です。 あとはキャベツがあれば、スープに

        狩猟体験記③ 解体作業〜生き物、食べ物の境い目

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          白菜が主役。くたくた白菜と豚バラのおから

          昔から好きなおかずの1つがおから。 近所の和食屋さんのは具沢山で、少し甘めのやつ。行くたびに注文してしまいます。丁寧に作られたおからを出してくれるお店って、なかなか無いものです。 いろんな具材を入れるのも好きだけれど、意外と手間のかかる料理で お店ではしっとり感を出す為、ミキサーにかけたり溶き卵を混ぜ込んだりするやり方を教わりました。 今回、使う具材はしぼり、旬の白菜と豚肉のみ。 手軽なこの2つを組み合わせて作ったら、とんでもなく美味しいおからが出来ました。 白菜は、これ

          白菜が主役。くたくた白菜と豚バラのおから

          美味しいイクラは、たまごかけごはんの味がする。

          イクラの季節も、もうそろそろ終わり。 スーパーに並ぶ値段もだいぶ手頃になりました。 冷凍保存もできるので、まとめて作っておけば翌年も楽しめます。 市販の物とは比べ物にならないほど美味しいので、ぜひ手作りしてみて下さい。 話はそれますが、たまごかけご飯は薄口醤油で食べるのが好きな私。 濃口醤油だと香りが強く、たまごの風味が消えてしまうから。 こんな訳で、イクラを漬ける時も醤油は濃口と薄口を合わせて使います。 (一般的には濃口醤油のみが多いようですね) そしてちょっと薄味に仕

          美味しいイクラは、たまごかけごはんの味がする。

          農家の娘的、ご飯の楽しみ

          うちの実家は岩手の米農家。 山間で大きな川も無く、池に溜めた湧き水を引いて米を作っています。 水源は神様のように大切にしてきました。 さて、今年の新米はもう食べましたか? 甘い香りに、ぴかぴかのツヤ。 日本人で良かった〜と思う瞬間! よくお米は、あまり研ぎすぎない方が良いと言われます。以前より精米の技術が上がっている為「研ぐ」というより「洗う」くらいでいいみたい。その技術の進歩には父も驚いていました。 そう言えば幼い頃、精米したてのお米は熱を持っていて、冷ます為に広げて

          農家の娘的、ご飯の楽しみ

          冷奴は塩、な私がハマった塩ピータン豆腐。

          塩ピータン豆腐との出会いは近所の中華屋さん。 「ピータン豆腐」と、何気ないメニュー名で書かれた、いつものあの一皿を、とりあえずのつまみにと頼んだのだけど 甘酸っぱい、あの酢醤油のタレじゃない。 ピータンとお豆腐を、塩、胡麻油、刻んだネギで和えたものでした。 これがまた、シンプルで美味! 調べると北京風のものだそうで、干し海老やザーサイを加えても美味しいみたい。 自宅で再現し、すっかりハマり。 更に、ネギ油で作るバリエーションまで誕生したのです。 胡麻油も美味しいけれど

          冷奴は塩、な私がハマった塩ピータン豆腐。

          この夏、大活躍した調味料。香りと甘味のねぎ油

          使い勝手が良く、冷蔵庫にいつもあるネギ。 白ネギは寒い時期が旬だけど、素麺や冷奴の薬味にと、なんだかんだで、いつもストックしてあったな。 けど夏場のものは少し固くて、いつもは刻んで食べちゃう青いところも、スジっぽいんだよね。 そんな白ネギの"青いところ"消費の為に作ったネギ油でしたが、どんな料理にも使えて、この夏に大活躍した調味料にランクイン! スプーンひとさじの香ばしさと旨味で、料理がガラリと変わりますよ。 作り方、という程のものはなく…ネギを刻み、低温の油でじっく

          この夏、大活躍した調味料。香りと甘味のねぎ油

          柔らかいうどんが、日常にやって来た。伊勢うどんの魅力。

          思い返せば数年前。初めて伊勢うどんを食べた時の衝撃と感動。うどんの新たな魅力を知ったのです…。 香川の友人にガイドしてもらい、美味しい讃岐うどんをひたすら食べ歩くツアーをしたこともあったっけ。おつゆをはじくほどハリがあって、噛むと小麦粉の旨味が広がって。 何軒目かでトッピングしてみたくなり、天ぷらうどんにしてみたけれど、シンプルなのが1番だったね、という意見でみんな一致。そのくらい、麺自体の旨さが印象的でした。 それとは対象的な伊勢うどん。 昔、お伊勢参りの長旅で体力を消

          柔らかいうどんが、日常にやって来た。伊勢うどんの魅力。

          ミントのしゅわしゅわが飲みたい。

          夏へと移り変わる手間の、この季節。 少し湿度も上がってきて、スッキリしたもので喉を潤したくなります。 梅ジュースなんかも、あぁ飲みたいな、と思い出だすのが今時期なものだから、前年のものを引っ張り出してきて、飲み始める。 そんな飲み物たちが、スペシャルになってしまう。最近のちょい足しアイテムはミント! 数日前から、仕事帰りにゆるりと始めた一駅ウォーキング。 若かりし頃、ライブハウスで聞いたあの音楽たちを鳴らし、テンション上げて挑むものの、自粛生活でなまった体にはなかなかのヤ

          ミントのしゅわしゅわが飲みたい。

          苺の、コンポートという選択。

          ジャム、と言えば苺。 子供の頃、マーガリンを塗った食パンに、苺ジャム(紙カップに入ったやつ)をたっぷりのせて食べるの、美味しかったなぁ。 祖母が食べるのは、マーガリンも層になるほど塗られていて、「カロリーやば!」と横で思いながらも、ひと口かじらせてもらったり。それがまた、めちゃ美味しいのだけど。 大人になってから、ちょっと高い、瓶に入ったジャムを買うようになり、やがて低糖タイプを選ぶようになり…。 そして今、より果肉感を求めて作るようになったのが、コンポート。 ジャムの

          苺の、コンポートという選択。

          お塩の他には、調味料3つ。簡単こくうまキムチ。

          キムチが好きです。 あったかいご飯との相性はもちろん、お料理にも使えるし、日本人は、納豆との相性の良さまで発見してしまいました! もう、漬け物として扱うには、しのびない存在。 日がたって酸味が出てきたものも美味しい。 変化を楽しめるのが、発酵食品の楽しいところです。 さて、さかのぼること数ヶ月、冬はスンドゥブチゲにハマり、よく作りました。 その時に買ったのがヤンニンジャン(薬念醤)。唐辛子や香辛料が入った、韓国の万能味噌です。 Amazonでポチッと1キロ買ったものの、冷蔵

          お塩の他には、調味料3つ。簡単こくうまキムチ。

          春の喜びを食す〜もっと、ふきのとう!

          山菜シーズン真っ盛り!産地として多い東北でも本格的な春を迎え、店先に並ぶ種類も増えましたね。 葉物はぐんぐん伸びてきます。 筍もかなりサイズアップしてきて、もはや我が家の鍋には入らない…そろそろお別れかなと、保存用にびん詰めにした矢先… 姫竹が出始めたのを見つけて嬉しい限り。 山菜、楽しんでますか? 山菜って個性が強くて、処理方法もいろいろ。 ぶっちゃけ少し面倒。でもその手間のかかるところ、可愛いんだなぁ。 さて今回は、ふきのとうの楽しみ方を私なりに。 まずは天ぷらが

          春の喜びを食す〜もっと、ふきのとう!

          春の喜びを食す〜和え物の奥深さ

          父と電話していたら、うぐいすの声が混じって聞こえた。 田舎は桜がやっと見頃で、寒さも緩んだ朝に 日課である庭の花を見まわりながら電話してきたのでしょう。 水仙や野花もきれいに咲いているだろうな。 いつもの春の風景に、いつもの父の姿が 鶯の鳴き声と一緒に浮かんでくる。 嘘みたいなコロナばかりの世間から、妙に現実に引き戻されたような気がして、電話越しなのにと不思議な感じでした。 さて前回に引き続き、山菜のことなど。 母が家の周りで採れた山菜を送ってくれて、大好きなこごみ

          春の喜びを食す〜和え物の奥深さ

          春の喜びを食す

          旬の山菜で、美味しい天ぷらを楽しみました。 故郷から届いた、春の香り。 採りたてでみずみずしく、葉がふわふわ。鼻を近づけると、春の匂いがするよ。 スーパーでも美味しそうなのが売ってるけどね。 よもぎはあの土手かな。 蕗の薹は裏山の、日当たりがいいあそこ。 たらの芽を探し歩く、枯れ枝を踏む音。 こごみを摘んだ時の土の匂い。 そんな記憶たちと一緒に味わえる。 関東では梅が実を付け始めたけれど、故郷ではやっと桜が咲いたそう。 東北の冬は長い。 季節がやっと変わった、そ

          春の喜びを食す