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地域移住の【コレいい、コレあかん】番外編 種苗法改正ってなに?~入門編~

地方に行ったらまず消防団に入れよって言われることは多いと思うが、そもそもその消防団がヨソ者を受け付けない団体だったりする、、、

さてさて

今回の地域移住のコレいいコレあかんのテーマはこれっ!

【なんか騒がれてるけど“種苗法の改正”ってなに~??】

ってことでまたまた若干政治色のある内容ですが、農業に携わっている人間として触りだけでも皆さんにお伝えできればなーと思います。賛成派とか反対派ではなく、あくまで事実をお伝えさせて頂ければと思います。賛成か反対かの答えは皆さんそれぞれが出して頂ければと思います。『あの人がこう言ってるから反対だ―』とか言ってたらちょっとヤバいですよ。結論はどちらでもいいですが、事実をもって自身で考えて答えを出すようにして下さい。

まず種苗法云々ではなく前提からお話させて頂きます。主に3点、ここを蔑ろにする人が多いが基本的なことです。

① 法律を改正(制定)するまでの経緯にあたって

当然法律を改正(制定)するには、「現状不都合なことがある、もしくは起こりうる」ことが起因となります。その不都合を解消するために、関係省庁が現場の意見を集約し、民間からの代表者やさらに有識者などの専門家が意見を出し合い、草案が組み立てられていく訳です。今回の種苗法改正も当然その道筋を歩んでます。
大切なのは『現状ある不都合とは何なの?』ということ。ここを見落としてしまうと、法律改正の意義がただのイデオロギーのように感じることに繋がるのだと思います。

② 法律を改正(制定)した後の変化について

以前の記事にも書いたことだが、基本的に法律を改正(制定)すると個別的には得するヒトと損するヒトがでてきます。それでも①の不都合を正すために、マクロ的な視野を念頭に改正するわけです。また時代が移り変われば新たな問題点が出てくることもあります。そのようなことも見越してできる限りリスクを抑えた改正にするのは当然ですが、あまりに可能性の低いこと(いわゆる陰謀論に近い)に対しては対応しきれないこともあります。AIの開発を進めるにあたり、『将来ターミネーターの世界になるぞー』と反対するのは果たして得策なのでしょうか?そのような未来もありうるかもしれないが、可能性の低いことまで考えると何もできなくなってしまいます。最終的にどこまでのリスクヘッジが必要かは極めて慎重な判断となるが、①の不都合の緊急性等も鑑みて判断する必要があります。

③ 政権支持?不支持?

人には政治的主張があって当然です。現在の政権に対して支持している人、不支持の人、それはその人の主張であってどちらでも構いません。但し法律の改正や制定にあたり、政治的主張を慮って客観的な判断ができないのは得策ではないのは言うまでもありません。
場合によっては直接的に、今回の種苗法に関しては間接的に関わることになろうかと思います。自身の立ち位置や考え方を客観的に捉えて判断をする必要があります。

それでは順に考えていきます。

(A) なぜ種苗法を改正するのか?

上記の①の部分です。ここをまず抑えていきましょう。
主に2点あり、(ⅰ)種苗権者の権利保護、(ⅱ)品種の海外流出からの国内生産者保護です。それぞれ記事をご覧いただくのが早いかと思いますのでこちらのリンクにて。

(ⅰ)種苗権者の権利保護

マンガでいう著作権をもっているにも関わらず、ザルのように流出しているのを少しでも防ごうということです。

(ⅱ)品種の海外流出からの国内生産者保護


日本で開発された品種が、海外の優れた農地で効率的に生産されるとどうなるでしょうか。

まずこの理由の部分で『それは違う!!』という方はいるでしょうか?方法論である今回の種苗法改正に関する賛否はあるかもしれませんが、上記に関する問題点は現在進行形で起こっていること、すなわち事実であり改善をしていかなければなりません。その点については認識を頂きたいと思います。

それでは上記の問題を解決するための方法(今回の種苗法改正)はどのようなものか?それを見ていきましょう。

(B) どのように改正するのか?改正したらどう変わるのか?

上記の②の部分です。数点改正事項はあるのですが、大きいところでは「登録品種の自家養殖の禁止」「特定地域以外での栽培の制限」です(農水省の資料はこちら)

まず登録品種について説明しますが、作物の品種は大きく「一般品種」と「登録品種」に分かれてます。ざっくりですが「一般品種=普通の品種」「登録品種=ブランド品種」で思って頂ければと思います。また品種の数は「一般品種=9割」「登録品種=1割」です。今回の改正案は登録品種のみに規制が及びます。一般品種は改正後も全く変わりません(自家養殖OK)ので、そこは事実として先に述べておきます(参考:農水省の一般品種・登録品種一覧)
また体験農園や家庭菜園などいわゆる「職業農家」ではない方々も今回の改正は全く関係ありませんので予め承知ください。

プレゼンテーション1

話を戻しますが、作物や品種、営農スタイルによって変わりますが、農家は作物を育てその種子を採取し次年度以降の生産に充てることがあります。一般品種なら問題ありませんが、改正後は登録品種については種苗を然るべき機関から購入することになります。

それではこの改正でどのような可能性があるのか?

(ⅰ)農家の種苗購入代が上がる。
登録品種についてはそうなります。但し9割の一般品種は今まで通り関係ないですし、登録品種でもF1種と呼ばれる種子の残せない種を使用している農家は結局今までと変わりません。
登録品種で毎回自家増殖をしている農家さんに関してはかなりの負担になりますが、果たしてそのような農家さんはどれだけいるのでしょうか?私の周りにはほとんどいません(一部の稲作農家がどうなるか)。但しいずれにせよ、この改正で種苗購入代が下がる農家はいないでしょう。

(ⅱ)育種者の権利保護ができる。
上記リンクしている林ぶどう研究所様など、今まで育種者の権利保護があまりにお粗末だったのが、(ⅰ)に記述している通り使用する農家も負担する仕組みとなっている。育種者は膨大な時間と金銭的な先行投資をして育種をしていることに関して、少なからず保護ができる改正案となっている。

(ⅲ)海外への無断流出を防ぐ。
今までザルのように海外に流出していた登録品種を、購入者の囲い込みによって軽減することができる、また流出した場合でも経路の特定がしやすくなります。といってももちろん100%ではありません。結局は海外での品種登録など別の対策を立てなければならないが、今までの状況より改善はされることにはなります。

(ⅳ)種苗会社の権限強化と外資参入の可能性がある。
上記のように種苗会社から種苗を購入するので、その会社が値上げすれば農家の負担が増えることになります(但し値上がりすれば農家は敬遠するのでバランスは重要視するだろう)。また今回の種苗法改正で、モンサント社(現バイエル社)を含め外資企業が種苗販売の権利を取得して日本の農業界を牛耳る等の意見もあります。要は外資が日本の食に幅を利かすことが不安だということです。但しこの点は今回の種苗法改正より平成29年に成立された「農業競争力強化支援法」の影響を強く受けてます。今回の記事では深く言及しませんが、よければご参照ください。

以上のような影響が出ることが想定されます。但し可能性も多く含まれます。AIの例のように未来の事はわかりません。最終的に「その未来(デメリット)の可能性は高いの?」と「今ある喫緊の問題の解決」との兼ね合いを含めた判断になります。繰り返しになりますが、問題点がありその問題点を解決するために法律を改正(制定)します。その法律改正の原点については間違えないで頂きたいです。

今回は入門編と言うことで農業になじみがない人にもわかりやすくかなりざっくりと記述してます。賛成派反対派様々ご意見があるのは当然のことですが、これでより農業について興味を持って頂ければ幸いです。

最後までお読み頂きましてありがとうございました。

次回の地域移住のコレいいコレあかんは“新鮮安い!直売所のあれこれ”をお送りします。

ではまたー

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