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マッチングアプリ放浪記【ノンフィクション小説】

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コミュ障でモテない地味男子がマッチングアプリデビュー?! 「ヤリモク男子」となった僕は、奥手な自分を変えるため、 コミュ力を磨き、女性を口説き、新しい自分を謳歌する。 寂しが…
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#恋愛小説

最終話 クズ男、恋に落ちる。|マッチングアプリ放浪記

最終話 クズ男、恋に落ちる。|マッチングアプリ放浪記

「詠世くんは、これまでどんな人と付き合ってきたの?」

遥は僕の目を見つめて尋ねた。僕も思い切って彼女の目を見つめかした。すると、ふっと彼女は目を逸らし、長谷寺の見晴らし台から鎌倉の港町を眺めた。

前景に遥。後景に海。忘れることはない景色。

「気になるの?」と僕ははぐらかした。

「・・・別に〜」彼女はそっぽを向いている。

「中学と高校で4年間付き合った彼女がいたよ。男まさりで、負けず嫌いの

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#12 アプリを消した。片想いは続く。|マッチングアプリ放浪記

#12 アプリを消した。片想いは続く。|マッチングアプリ放浪記

遥の意向で、その日は鎌倉駅に現地集合となった。朝の11時に待ち合わせだ。

僕はソワソワとしながら横須賀線の電車に揺られていた。車内は空いていて、座席の両脇には誰も座っていない。11月下旬の冷たい風が、ドアが開くたびに流れ込んでくる。

遥を好きになってしまったことは、もう気付いてた。そして今までとは違って、誠実なスタンスで彼女と接することも決めていた。

そのとき、ふっと思い出した。

まだマッ

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#10 ヤリモク男子、撃沈する。|マッチングアプリ放浪記

#10 ヤリモク男子、撃沈する。|マッチングアプリ放浪記

強引に握った遥の手は温かかった。

「じゃあ次行こっか」

優しく話しかけた。僕は遊び人としての自分を貫いて、ホテルに誘うと決めていた。

すると遥は作り笑いを浮かばせて、「はぁ、がっかりだよ」と言い放った。まるで下北沢の冴えない劇団員のような口調だった。

彼女は僕の芯まで冷え切った手を振り解こうとしたが、僕はまたすぐに握り返した。

「俺、遥ともっと一緒にいたいな。正直、遥と話すのが純粋に楽し

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#9 本当の自分でいれたんだ。彼女と居るときだけは。|マッチングアプリ放浪記

#9 本当の自分でいれたんだ。彼女と居るときだけは。|マッチングアプリ放浪記

遥との会話は静かで、それでいてとても奇妙だった。僕は気がつけば素の自分で彼女と話していて、自然とありのままの「山田詠世」として、接することができていた。

普段女の子と話す時は、いつも自分を偽っていた。余裕な姿を演出してみたり、ちょっと遊び人っぽく振る舞ってみたり、人によって自分を変えていた。

けれど、彼女といる時だけは、なぜかありのままの自分でいれるような気がした。これが感情が「好き」に当ては

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#8 不思議な彼女に恋をした。でもたぶん、片想い。|マッチングアプリ放浪記

#8 不思議な彼女に恋をした。でもたぶん、片想い。|マッチングアプリ放浪記

「好きな音楽とかは?」と僕は居酒屋の席で尋ねた。

「うーん。犬」と彼女は言う。

「遥、犬は音楽のジャンルじゃないよ」と困りながらも諭してみる。

「好きな音楽を聞かれると[犬]って答えたくなっちゃうの。そういうことってあるでしょ?」と彼女は言った。

そんな彼女が気になって仕方ない。不本意だけど、好きなのかもしれない。そんな話だ。よかったら読んでいってほしい。

遥とは、10月の上旬に電話をし

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#6 ハーフ系美女を口説いて撃沈した話|マッチングアプリ放浪記

ハーフ系美女を口説いたことなんて、人生において一度もなかった。そもそも女性と話すだけでも緊張していたのに、その上さらに口説くだなんて…。僕にはハードルが高すぎる。

今回は、そんな僕が初めてハーフ美女を口説いた結果、撃沈した話をしよう。大火傷だ。あれは悲惨だった。

今後、もし誰かを口説こうと思っている読者の方がいたら、僕の撃沈エピソードがあなたの一助となることを願っている。

その日、僕はアプリ

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序章 コミュ障だって遊びたい。|マッチングアプリ放浪記【R18】

序章 コミュ障だって遊びたい。|マッチングアプリ放浪記【R18】

僕は今、さっき初めて会った女の子と渋谷のラブホテルにいる。

コミュ障で、地味で、モテない男子大学生の、この僕がだ。

可愛い女の子と話そうとすると緊張で汗が止まらなくなる、この僕がだ!

しかし、これは夢ではない。確かに僕は、初対面の女の子とラブホのベッドにいる。

その日は2021年の9月上旬のことだったと思う。

イカゲームが世界的に流行った暖かい秋。星野源とガッキーが結婚を発表したちょっと

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