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創作

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師之井景介手作りの虚構です。遺伝子組み換え文字列は使用していません。使用していたとして、その証拠がどこにあるって言うんです?
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記事一覧

隔離期間中にLINEスタンプを作った話

隔離期間中にLINEスタンプを作った話

こんにちは。2023年もよろしくお願いします。

さて、12月も折り返したとある月曜日、上司がコロナに感染していたことが明らかとなり、自宅待機となりました。

私は濃厚接触者には該当しなかったものの、その前の週に、一緒に会議に出席していました。
ちょっと不安に思っていたところ、月曜夜、ちょっと熱っぽいなと思い体温を測ってみると37.5℃。
微熱でした。

実際はただの風邪だろうなとは思いつつ、油断

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ラジオ番組を自作する

ラジオ番組を自作する

【心霊YouTuber】

字幕入れる作業が滅茶苦茶面倒でした。でも楽しかった。

中学生から深夜ラジオを聞き始め、高校時代、大学時代、それから就職してからもしばらくお世話になってきました。

中高生の頃はオールナイトニッポンのヘビーリスナー、その後、TBSラジオのジャンクに切り替わっていきました。

だけど今住んでる地域はTBSラジオが入らないし、いずれにせよ仕事があるから深夜ラジオは聴けない。

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ゲシュホウ 【#2000字のホラー】

ゲシュホウ 【#2000字のホラー】

「文字は、蟲なの……」

 隣の席で、広田がブツブツと呟いている。
 彼女の様子は、朝からどこか変だった。
 しかし数ヶ月後には受験が控えている。構っている暇はない。
 黒板に、教師が数式を書き連ねてゆく。

「ねえ、松川……」

 広田がうわごとのように話しかけてくるが、俺は無視した。

「げしゅほうは、人から人へ転移する。あんたも危ないの。あたし、松川のことが好きで、ずっと見ちゃってたから。で

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【小説】Lavalier, such a dear my dog

【小説】Lavalier, such a dear my dog

アメリカから帰ってきて一ヶ月も経たないうちに中古の一軒家を現金一括で買って、まだ住んでいた売主さんに大急ぎで退去してもらって夫婦で転がり込んで、家具のない家に二人で住み始めるという普通の人間ならほとんどやらないだろうことをやっていました。この怒涛の日々を記事にした方がよっぽど面白いだろうけれどそれは他所でやることにして、ずっと昔に書いた小説をここに載せようと思います。
何故って? 特に理由はありま

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note創作大賞【#創作大賞2022】に落選した感想

note創作大賞【#創作大賞2022】に落選した感想

お久しぶりです。師之井景介です。
今回、せっかくnote創作大賞というお祭りみたいな企画に作品を応募し、そして落選したのだから、何か記事を書いておかないともったいない気がしたので書くことにしました。

この賞、応募するのは動画でも漫画でもテキストでも良く、長さも制限なしという意味不明な賞でした。おいnote、お前は何がしたいんだと。
メディアミックス前提なのは自明だとしても、その何でもアリな募集要

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【掌編小説】文字の城

【掌編小説】文字の城

この世界を構成するあらゆる物質の最小単位が「言葉」であることがついに証明されたことは、お集まりの皆さんもご存じのことだろう。

現れては消え、消えては現れる量子をどうにかこうにか捕まえて叩き割ってみたら、「痛い」という言葉になって観測者の脳に入り込んでしまったという話は、嘘だと思うかもしれないが本当のことなのだよ。

天井からぶら下がったあの豪奢なシャンデリアが見えないとは言わせない。このホールを

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【小説】ドギャギャ・ガール

【小説】ドギャギャ・ガール

 笑い声のすごい女の子がいる。それがこの物語の全てだ。

「ドギャギャギャギャギャ」と彼女は笑う。
 教室南側の窓から差し込むやわらかい陽光が、彼女の髪に反射し繊細な光の波となる。吹き込んだ風がカーテンを舞い上がらせ、光の波を遮る。彼女は、肩まで伸びた髪が広がるのをさりげなく手で押さえ、はにかんだような顔を見せていた。
 笑い方は不思議だけど、いい笑顔なんだよな、と横目で彼女を眺めながら思う。
 

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【創作悪夢】ホテル あばらや館【短編小説】

【創作悪夢】ホテル あばらや館【短編小説】

 明日は朝から、新規の客先と重要な商談がある。この契約が成立すれば、今年度の売り上げは大きく伸びる。社長もこの商談には大きな期待をかけているらしい。

「ひどい土砂降りですなァ、しかし」

 運転手がつぶやくように言った。雨音は既に轟音となっている。
 土砂降りの中、タクシーは宿泊先のエントランスへと横付けする。明日の朝一番で客先へ向かえるよう手配しておいたホテルだ。
 私は財布から取り出した千円

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【掌編小説】冬の時代

【掌編小説】冬の時代

窓の外では、雪が降っています。
その様子を、おじいさんはじっと眺めています。
降り積もる雪は、おじいさんの住む家の庭を、白く染めていきます。
もう人のいなくなったこの町は、雪の降る日はひときわ静かです。

部屋の隅の暖炉では、火が赤々と燃えています。
火の中で、薪がパチンと大きな音を立てました。

ソファに座るおじいさんの隣に、白い犬が近寄ってきて座りました。首輪に付けられた鈴が、チリンと澄んだ音

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